[牝系図鑑]柔らかさ、持続性能の高さとパワーで活躍。ヴェラアズールやアヴェンチュラを輩出したムーンインディゴ牝系。

芝特化の由来は柔らかさ、持続力とパワーが魅力のファミリー

代表馬
・トールポピー(07年阪神JF、08年優駿牝馬)
・ヴェラアズール(22年JC)

ムーンインディゴ

米国で生産されたムーンインディゴ。競走馬としての実績はなかったが母Madeliaが77年仏オークスなどG1を3勝。叔父たちにもG1級、重賞級の馬たちが多数いるという血統背景の良さを買われて、ノーザンファームが繁殖牝馬として導入。
しかし産駒はたった2頭、牝馬はアドマイヤサンデー1頭しか残すことができなかった。
唯一残されたアドマイヤサンデーは競走馬としても98年阪神牝馬特別を2着するなど重賞級の活躍を見せたが、本領を発揮したのは繁殖牝馬になってからだった。

共通して多くみられる特徴は二点。

一点目は柔らかい身のこなしをする馬が多いこと。
母系は欧州の芝中距離血統が多く入っているため身のこなしの柔らかさに繋がっているのだろう。その柔らかさは芝適性という形で産駒に受け継がれている。
基本的には芝でも走れる柔らかさを持っている馬が多い。
アドマイヤサンデーの直仔の中ではトールポピー、アヴェンチュラの柔らかい走りは特筆すべきだろう。

二点目は持続性能が高くパワーが高いこと。
これはEl Gran Senorの影響が強そうだ。スパッと切れるタイプこそ出ないものの捲ったり、先行して粘りこんだり、どんな形でも長く良い脚を使えることがこのファミリーのストロングポイントと言えるだろう。

アドマイヤサンデーの粘り腰

牝系図

①アドマイヤサンデー

アドマイヤサンデー

ムーンインディゴは前述の通りアドマイヤサンデーしか牝馬の産駒を残すことができなかった。
アドマイヤサンデーは競走馬としても重賞級の馬だったが、本領発揮したのは繁殖牝馬になってから。母の無念を晴らすかのように活躍馬を輩出し続けた。
2番仔アドマイヤメガミ(父エルコンドルパサー)が05年チューリップ賞で2着したのを皮切りに、フサイチホウオー(父ジャングルポケット)が07年皐月賞3着に加えて重賞3勝。

その全妹トールポピーは07年阪神JFと08年優駿牝馬勝ちで、さらに2頭の全妹アヴェンチュラは11年秋華賞を勝利した。

フサイチホウオー、トールポピー、アヴェンチュラなど

ジャングルポケットとの相性は抜群だったが、決してジャングルポケットじゃなければ活躍馬を輩出できなかったわけではない。
前述のアドマイヤメガミ、ナサニエル(父キングカメハメハ)などジャングルポケット以外の系統の異なる種牡馬との間にも重賞級の産駒を輩出した。
アドマイヤメガミやナサニエルの存在が牝系の優秀さの証明となるだろう。

①-1 ヴェラブランカ
ヴェラブランカ

トールポピーやアヴェンチュラなど大活躍した牝馬がいて、ファミリーの発展は2頭に託されたかと思ったが、意外にも活躍馬は別の枝から出た。
それがヴェラブランカだ。ヴェラブランカは現役時芝9F、ダート8.5Fで2勝。十分な成績なのだが、やはり兄妹の活躍と比べらば劣ってしまうのも事実だろう。
またヴェラブランカはクロフネ産駒であり、相性が良いと思われていたジャングルポケット産駒でもない。
トールポピーやアヴェンチュラと比べればクロフネが良く出ていて、この一族にしてはガチっとしたタイプだった。
トールポピーの枝からはシャーレイポピーというOP級が出たが、アヴェンチュラの産駒からは1勝どまりの馬しか出ていない現状を考えれば、産駒にヴェラアズールを出したヴェラブランカは繁殖として一枚上手なのだろう。

ヴェラアズール

ヴェラアズールはエイシンフラッシュ産駒。
クロフネのパワーはしっかり受け継いでいるし、22年の年始まではダートで2勝クラスを走っていた馬だった。ところが加齢とともに母系が出るようになってきたのか、身体こそ牡馬の古馬だったが、柔らかい歩きができるようになっていて、舞台を芝に変えた。
こういうパターンは牡馬だと珍しい。母由来なのは間違いないだろう。
そこからは3勝クラスで3着が2回あったが、3連勝で22年JCまで突き抜けた。
ヴェラアズールがトールポピーでもアヴェンチュラでもなく、ヴェラブランカから出たということもまた、ムーンインディゴないしはアドマイヤサンデーの牝系を通じるDNAの優秀さを証明している。

アヴェンチュラ産駒の活躍にも期待したい

ヴェラアズールが出たことでひとまず牝系としての地位を再確認することができたファミリーだが、活躍馬であるトールポピー、アヴェンチュラの産駒からは重賞級が中々でない。
トールポピーは早逝してしまったため、競走馬になれたオリエンタルポピー1頭だけ。オリエンタルポピーは競走馬としては全く実力を発揮できなかったが、繁殖としてシャーレイポピーを出したことでどうにかトールポピーのプライドは守れたか。

気になるのはアヴェンチュラ。こちらは秋華賞勝ちで順調に産駒を輩出しているが、中々活躍馬を出すことができない。能力が足りないというより、体質面に難しさを出してしまっている。そろそろ繁殖牝馬として高齢の域に入るので、ここら辺で自身の繁殖としての価値を高める一頭の登場が望まれる。

一方ヴェラアズールのように競走馬としてはトールポピー、アヴェンチュラに劣った牝馬たちも繁殖として活躍中。 エルミラドール(父ジャングルポケット)は芝7Fで3勝クラス勝ちまでしたエルカスティージョを輩出した。競走馬としては目立たなかった繁殖の産駒たちはむしろお買い得で狙い目となるかもしれない。

写真:Horse Memorys、かず、かぼす

あなたにおすすめの記事