[牝系図鑑]ダイナアクトレスからスクリーンヒーローへ。快速名優ぞろいなマジックゴディス牝系。

サイアーラインや近親交配を中心に語られることが多い血統論だが、牝系を通じて繋がるDNAはサラブレッドの遺伝を語る上で非常に重要な要素だ。
この連載では日本で繁栄している牝系を活躍馬とともに紹介しその魅力を伝えていく。
今回取り上げるのはスクリーンヒーローを輩出したマジックゴディスの牝系だ。

形質は多岐に渡り様々なカテゴリーで活躍馬を輩出

代表馬
・スクリーンヒーロー(08年JC、同年アルゼンチン共和国杯、09年天皇賞秋2着)
・マルカラスカル(06年中山大障害、08年中山GJ、07年中山大障害3着)

マジックゴディス

ドイツで生産されたマジックゴディス。その出自に関する記録はほとんど確認することができないが、競走馬としては勝利を挙げることができなかった凡庸な馬だった。基本的に牝系図鑑では3代以上日本で続いている牝系を取り上げているわけだが、50年以上前の馬を牝祖として取り上げることは珍しい。

マジックゴディスは繁殖牝馬としては当時はグレード制導入前でOP扱いだが、重賞級レース、ダービー卿チャレンジトロフィーと牝馬東京タイムズ杯を勝利したモデルスポートを輩出した。モデルスポートもかなり前の馬だから最近競馬を見始めた方にとっては聞きなれない馬かもしれない。

マジックゴディス牝系の特徴としてひとまとめにするにはあまりに枝葉を伸ばしすぎているので、今回はモデルスポートを中心に解説していこう。

一躍名牝系に押し上げたダイナアクトレス

牝系図

①モデルスポート

モデルスポート

このファミリーの重要な枝として取り上げるのはやはりモデルスポートだ。
この分岐から代表馬として挙げたスクリーンヒーローやマルカラスカルが出ている。
モデルスポート自身は父が米芝G1勝ち馬のモデルフールだったが、芝ダート問わず走れたパワータイプの馬で、それでいてスピード性能も高かった。当時はまだG1ではなかったが、スプリンターズS3着という実績があり最優秀4歳牝馬に輝いた。本馬の馬主は有限会社ターフ・スポート、つまり今のターファイトクラブに縁がある一頭ということになる。

モデルスポートの後継は3頭の牝馬によってその枝を広げていくことになるが、その中でもスクリーンヒーローを輩出したダイナアクトレスのラインが突出しているので、今回はダイナアクトレスを中心に解説する。

①-1ダイナアクトレス
ダイナアクトレス

ダイナアクトレスは史上初の牝馬三冠馬に輝いたメジロラモーヌの同期に当たる馬で、どうしても注目されにくいが、2度5歳以上最優秀牝馬に輝いた名牝だ。父はノーザンテーストでモデルスポート譲りの軽いスピードを武器にした一頭だった。能力だけならメジロラモーヌにも負けてないと私は考えているが、この馬の出世を阻んだ原因はその気性の荒さにあった。

きつい近親交配こそないものの、とにかく気性が荒かったのだ。
若駒から古馬の序盤にかけては中距離を中心に使われ、ジャパンカップ3着、オークス3着などの実績を残したが、その才能が開花したのは現役最終年となった88年。この年はこれまでの中距離路線から目先を変えて距離短縮。それが功を奏したのか、安田記念2着、京王杯スプリングCとスプリンターズS勝ちという堂々たる成績を収めた。

確認できるダイナアクトレスの綺麗な立ち姿はあまり多くないが、改めて写真を見てもどうもスプリンターとは思えない。
それが正しいのかどうかは今となっては確かめようもないが、持ちうる血は確かにスタミナとスピードを兼ね備えた成長力のある中距離タイプだったようだ。

初仔のステージチャンプが早速その適性の高さを見せた。勝ち鞍としては94年日経賞と95年ステイヤーズSだが、93年菊花賞と95年天皇賞春で2着。

この馬は当時のステイヤーとしてはまとまりのある身体つきだったが、日経賞ではライスシャワーを下しての勝利。もちろん父がリアルシャダイだったこともあるだろうが、スローペースから長くスピードのある脚を使える戦いぶりは、モデルスポートないしはその母の父Red Godを彷彿とさせるものがある。

ステージチャンプ

ダイナアクトレスの快進撃は更に続く。ステージチャンプの妹にあたり、サンデーサイレンスを配されたプライムステージが札幌3歳SとフェアリーSを勝利し、晩年にはクロフネ産駒のベストロケーションが京都牝馬S2着、キーンランドC3着と繁殖生活の最後まで活躍馬を送り続けた。

異なる種牡馬との間に一流馬を輩出できることがダイナアクトレスの優秀さの証拠の一つではないだろうか。

その後プライムステージの全妹にあたるランニングヒロインが大仕事をやってのける。競走馬としては2戦未勝利に終わってしまったが、産駒には08年ジャパンカップ勝ち馬のスクリーンヒーローを輩出した。

このように祖母が優秀、母は凡庸、孫世代で大活躍馬が出るというのが遺伝の面白いところでもあり、牝系の重要性を感じ取れる一端だ。

スクリーンヒーローは父がグラスワンダー。グラスワンダーの産駒らしく古馬になってから本格化し、柔らかい脚捌きでHaloらしいスピードと機動力を兼ね備えていた。ステージチャンプとよく似たタイプではあるが、スクリーンヒーローの方が競馬が上手で、スローペースを先行して粘りこむのが得意だったから、大崩れしにくいタイプだった。
ランニングヒロインを経由してサンデーサイレンスが入ったこと、父がグラスワンダーだったこと、牝系にノーザンテースト、Red Godが入ったこと、全てがガチっとハマったタイプで、スピード性能も機動力も成長力も兼ね備えていて、競走馬としては理想的なタイプだったのではないだろうか。

スクリーンヒーロー

障害界でもスターを輩出

スクリーンヒーローと3/4同血のマルカラスカルという馬をご存知だろうか。この馬は父がグラスワンダーでスクリーンヒーローと同じ、母トレアンサンブルはランニングヒロインの妹にあたる馬だが、父がトニービンだから血統の字面上はそこだけがスクリーンヒーローとの違いとなる。

マルカラスカルは障害競走で大活躍した馬で06年中山大障害、08年中山GJ勝ちなどの実績がある一流馬だ。やはり例にもれずこういう馬の存在を考えるとダイナアクトレスがスプリンター、ないしはマイラーだったとは考えづらいものがある。そのほか分岐は異なるが10年阪神SJ勝ち、同年中山GJ3着のトーワベガや現役障害OP馬のキャプテンペリーなどもマジックゴディスの一族だ。

Red Godがスタミナ源というのは考えづらいので、それ以降の配合で培ってきたスタミナを活かしてそれぞれジャンパーとして活躍しているのだろうが、襷コースや急コーナーを曲がる機動力の一助としてマジックゴディスの存在があるのかもしれない。

父方からも母方からも影響を及ぼすスクリーンヒーロー

スクリーンヒーローは種牡馬としてはかなり高齢の域に入った。しかしモーリスやゴールドアクターという後継種牡馬に恵まれ、モーリスからはジャックドール、ピクシーナイト、ジェラルディーナという3頭のG1馬が既に出ている。一流馬は牡馬に偏りやすい系統だけに今後母系に入って発展を見せるには柔らかさを意識した配合が必要とされるのではないだろうか。

マジックゴディスの牝系は今現在も20年にベストアクターが阪急杯を制すなど一定の活力を持って推移している。とはいえ一時期に比べれば勢いが落ちているのも確かなので、ここからの復権が待ち遠しい。

写真:Horse Memorys、かず、かぼす

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