![[重賞回顧]福島から秋へ、豪脚一閃!~2026年・ラジオNIKKEI賞~](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/06/202606301.jpeg)
今週から小倉、福島、函館の3場開催が始まり、いよいよ本格的な夏競馬が開幕した。
その福島競馬場で行われる芝1800mの重賞、ラジオNIKKEI賞は、現在のJRA重賞で唯一、3歳限定のハンデキャップ競走として行われるレースである。
それゆえに、ハンデを考慮して出走するか、あるいは別のレースへ向かうか、レース前の動きにも注目が集まった。
最軽量ハンデ52kgは、牡馬で未勝利を勝ち上がったサイモンシャリオと、今回唯一の牝馬で1勝クラス勝利の実績があるルージュボヤージュの2頭。トップハンデは57kgで、札幌2歳S勝ち馬ショウナンガルフ、毎日杯2着、NHKマイルC4着のローベルクランツ、リステッド競走の萩Sを制してホープフルSも5着に好走したバドリナートの3頭。上下差は5kgとなった。
また、出走する場合はトップハンデ57kgが想定されていたサウンドムーブは、次週の小倉競馬へ向かうことが発表された。抽選対象となっていたサンブライトは、出走が叶えば最軽量50kgのハンデであったが、鞍上の横山典弘騎手の斤量調整が難しく、次週の1勝クラスを目指すことになった。
それでも、今年はフルゲート16頭が集まった。フルゲートでの施行は2023年以来3年ぶり。当時の勝ち馬エルトンバローズは、先週のしらさぎSで復活勝利を挙げたばかりである。
ほかにも、このレースを経験した馬たちのその後の活躍は目立つ。長距離GI3勝のフィエールマン、海外GIを2勝したパンサラッサ、古馬重賞3勝のノースブリッジ、マイル重賞2勝のサクラトゥジュール。3歳夏の福島から大きく飛躍した馬たちの名を見れば、ラジオNIKKEI賞が出世レースの一つであることは間違いないだろう。
人気を集めたのはサノノグレーター。福島県出身で、過去にこのレースを2勝している田辺裕信騎手とのコンビは、今回が3戦目となる。スプリングSでは後方から追い込み、アウダーシアから0秒2差の5着。皐月賞でも前の2頭が止まらない展開の中、上がり33秒9の末脚で0秒8差の9着まで追い上げた。自慢の決め手で、今度こそ全馬を差し切ることができるだろうか。
2番人気はリッツパーティー。先行して抜け出す競馬で1勝クラスを突破し、今回が重賞初挑戦となる。夏は北海道で騎乗する横山武史騎手が、このレースでも継続騎乗。ハンデkgも魅力的だ。後続の追撃を凌ぎ切り、一気のジャンプアップを果たせるか。
台風が過ぎ、馬場が回復した福島競馬場は、開幕週らしく土曜日からレコードが続出する高速馬場となった。スピードだけでなく、斤量を生かす機動力、福島芝コースへの適性、そしてこれまでの成長力も問われる一戦。夏の福島から飛躍への一歩を刻むのは、どの人馬だろうか。
レース概況
スタートでローベルクランツが出遅れ、ショウナンガルフも両隣との間隔が狭くなり、後方からの競馬となった。
積極的に前を狙ったディールメーカーに、コロナドブリッジがついていく。頭を上げて行きたがる仕草を見せていたリッツパーティーは、横山武史騎手が前の2頭の真後ろに入れ、折り合いに専念。ルージュボヤージュとスカイスプレンダーも先行ポジションを狙い、ガリレアとジーネキングが中団付近に位置を取った。
そこから数馬身離れた位置に、クカイリモク、サイモンシャリオ、サノノグレーター、バドリナートが横並びで続く。後方のインにキンググローリー、外からはスペルーチェが前をうかがい、最後方にはローベルクランツとショウナンガルフが続いた。
隊列がおおよそ決まり、向こう正面へ。すると、後方からスペルーチェが捲るように動き始める。逃げるディールメーカーは、スピードの出る馬場を1000m59秒0で通過。その後ろをリッツパーティーが追走し、中団にいたガリレアも外から位置を上げ、レースはコーナーの攻防へと入っていった。
外を勢いよく回る馬たちがいる一方で、先行していた馬たちをガリレア、リッツパーティーが外から追いかける形となる。追走が苦しくなったスカイスプレンダー、コロナドブリッジが後退し、下がってくる馬たちをかわしながら、後方の馬たちは内外に分かれて最後の直線へ向かった。
逃げて押し切りを狙うディールメーカーを、リッツパーティーが追いかける。馬群の最内からはクカイリモクも抜け出しを図る。前で運んだ馬たちが粘り込みを狙い、開幕週の高速馬場を味方につけて後続を振り切ろうとする中、直線で一気に追い出されたサノノグレーターが、馬群の外から一頭だけ違う脚色で伸びてきた。

大外を勢いよく伸びたサノノグレーターは、逃げ粘るディールメーカーをゴール前で捕らえ、最後は1.1/4馬身差をつけて完勝。勝ちタイムは1分45秒2のレコードであった。
逃げたディールメーカーは2着、これを追いかけたリッツパーティーも3着を確保。終盤で馬群のインを捌いてきたバドリナートが4着、最後までしぶとく脚を使ったガリレアが5着でレースを終えた。
前の2頭がペースを握り、そのまま上位に残る展開を、道中後方にいたサノノグレーターが豪脚で差し切った一戦。鞍上の田辺裕信騎手は、この勝利でラジオNIKKEI賞3勝目。福島県出身の名手が、地元の重賞でまた一つ強さを見せた。
各馬短評
1着 サノノグレーター 田辺裕信騎手
中山競馬場での前2走で見せた末脚は、福島の開幕週でもしっかりと生きた。道中は中団後方で脚を溜め、直線では馬群の外へ進路を取ると、そこから一頭だけ違う脚色で加速。逃げたディールメーカー、これを追ったリッツパーティーが上位に残る開幕週らしい展開を、大外から直線一気の末脚でまとめて差し切った。
勝ちタイムは1分45秒2のレコード。上がり3ハロンも最速の34秒0を記録し、文字通り抜けた決め手を見せてくれた。前で運んだ馬たちが粘る流れを後方から差し切った内容は、この馬の強さが際立つものだった。

田辺裕信騎手にとっては、このレース3勝目。左かかとの骨折治療を終えて戦列復帰した初週から、サノノグレーターの決め手を最大限に引き出し、地元で勇躍してみせた。
これまで中山競馬場で走ってきたレースでも好時計を持っていただけに、秋は中山競馬場のGⅡ、セントライト記念で、再びその豪脚を見てみたい。
2着 ディールメーカー 高杉吏麒騎手
積極的にハナを奪い、レースを作ったのがディールメーカーだった。開幕週の綺麗な芝を味方につけ、1000m59秒0のマイペースで先頭を譲らず、直線でもしぶとく脚を使っている。
過去4走はすべてマイル戦。ニュージーランドトロフィーでも0秒3差の4着に好走したが、クビ差でNHKマイルCへの優先出走権を得られなかった。
それだけに、一息入れて1ハロンの距離延長に挑んだ今回、最後は勝ち馬の豪脚に屈したものの、2着に粘った内容は今後の選択肢を広げる走りだった。
初騎乗の高杉吏麒騎手が、リッツパーティー、コロナドブリッジが迫ってくる中で、ハナへ行くことを選んだ攻めの騎乗も光った。重賞初挑戦の舞台で自らペースを握り、レコード決着の立役者となった。
勝ち馬とは決め手の差が出たが、先行力と粘り強さは十分に示している。さらに距離を延ばすのか、それともマイル路線へ戻るのか。2着で賞金を加算したことで、次走以降の可能性が大きく広がった。
3着 リッツパーティー 横山武史騎手
過去3走はすべて東京競馬場でのもの。
今回は初の重賞挑戦に加え、初の右回り、初の1周コースでの競馬でもあった。
スタートから序盤にかけて行きたがる面を見せながらも、北海道から福島に参戦した横山武史騎手が、1コーナーまでに3番手へ入れて折り合いをつけた。向こう正面からはディールメーカーに終始並びかけ、プレッシャーを与えながら進める強気の競馬。人馬ともに勝ちを目指す姿勢が伝わってくる内容だった。

重賞初挑戦でありながら、最後まで大きく崩れず、重賞好走経験のある相手に交じって3着を確保したことは大きな収穫だろう。直線では逃げるディールメーカーを追いかけ、前で運んだ馬として最後まで粘り込んだ。後ろにいたコロナドブリッジやスカイスプレンダーが先に苦しくなる中、最後までディールメーカーに食らいついた走りは、このメンバー相手でも通用することを示している。
54キロのハンデを生かしつつ、重賞戦線で戦える力を示した3着だった。右回りは問題なくこなし、1800mも守備範囲と見ていい。折り合い面を考えるとマイルの方がより競馬はしやすいかもしれないが、今後の選択肢を広げる好内容だった。
4着 バドリナート 津村明秀騎手
リステッド競走の萩Sを勝利し、ホープフルSでは後の2冠馬ロブチェンを相手に5着。
京都新聞杯では着順を落としたものの、実績を評価され、トップハンデ57kgを背負ってこのレースに挑んできた。
8枠15番からスタートを決め、1コーナーでは外を回る形になったが、向こう正面では一旦位置を下げ、後方のインコースへ潜り込んだ。津村明秀騎手が距離ロスを減らそうとする工夫が見える立ち回りだった。
結果的に、サノノグレーターは3コーナーから外を回し、バドリナートは内を通って直線を迎えることになる。外ではガリレアやスペルーチェが前を狙う中、インコースで仕掛けどころを待てたことも、最後の脚につながった。
直線では馬群の内を捌き、4着まで脚を伸ばした。外から伸びた勝ち馬とは対照的に、バドリナートは馬群の中を割るようにして差を詰めている。最後は左ムチに応えたところで内へ寄る場面があり、最内から追い上げようとしたクカイリモクの進路が狭くなったものの、トップハンデを背負いながら最後まで脚を使えた点は評価したい。
上位3頭には届かなかったが、これまで経験してこなかった後方からの末脚勝負で、馬群を割って伸びた内容は地力の高さを示すものだった。展開や進路ひとつで、次走以降も上位争いに加わってくる存在だろう。京都新聞杯では結果が出なかったものの、今回のように後方で脚を溜める形なら、もう一度距離延長を試みる価値もありそうだ。
レース総評
今年のラジオNIKKEI賞は、開幕週の福島競馬場に好天も重なり、高速馬場で行われた一戦となった。
勝ちタイムは1分45秒2のレコード。逃げたディールメーカー、これを追いかけたリッツパーティーが2着、3着に粘り込む展開を、道中中団後方で脚を溜めたサノノグレーターが大外からまとめて差し切った。さらに、内を進んだバドリナートが4着まで追い上げる。前で運んだ馬の粘りと、後方から脚を伸ばした馬の決め手がぶつかり合う、見応えある好勝負だった。
勝ったサノノグレーターの末脚は、まさに圧巻だった。中山競馬場での前2走で見せていた決め手を、初めての福島競馬場でも存分に発揮。直線の短い福島競馬場、さらに開幕週で前が止まりにくい馬場を考えれば、逃げ先行勢を一気に捕らえた内容は、見た目にも爽快な走りだった。
田辺裕信騎手が戦列復帰した初週に地元福島で重賞を勝ったことも、このレースを印象深いものにしている。
一方で、上位に入った馬たちも、それぞれに新たな可能性を見せた。ディールメーカーはマイルから1ハロン距離を延ばし、初騎乗の高杉吏麒騎手とともにレースを作って2着。リッツパーティーは初の右回り、初の1周コース、初の重賞挑戦という条件の中で、先行して3着に粘った。バドリナートはトップハンデ57kgを背負いながら、これまで経験してこなかった後方からの競馬で馬群を割り、4着まで伸びている。
サノノグレーターは秋の大舞台へ。ディールメーカーは距離選択の幅を広げ、リッツパーティーは右回りと1800mへの対応を示し、バドリナートは控える競馬で改めて脚を使った。
着順以上に、次走以降の見方が広がる一戦でもあった。
ラジオNIKKEI賞は、勝ち馬だけでなく、ここで敗れた馬たちも後に大きな舞台で存在感を示してきたレースである。3歳夏の福島で見えた適性、成長、そして新しい選択肢。それらが秋以降、どのような道につながっていくのか。
レコード決着の数字や着順にとらわれず、この一戦に出走した馬たちのこれからも追いかけたくなる、余韻の残るラジオNIKKEI賞となった。

写真:うみ、ぼん(@Jordan_Jorvon)
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