若駒ステークスは、重賞を除く2・3歳限定オープン(リステッド競走)の中では、屈指の出世レースといえる。過去の勝ち馬から、トウカイテイオーとディープインパクトが後に顕彰馬となり、ハクタイセイ、アンライバルド、マカヒキを加えた5頭が、その年のクラシックを制した。

また、毎年のように少頭数で行われているが、それでも後の活躍馬が多数誕生してきたところに、いかにこのレースが出世レースであり続けてきたかが裏付けられている。

今年も、7頭立ての少頭数となったが、人気はやや割れ加減。

その中で、少し抜けた1番人気に推されたのはグロリアムンディだった。昨年10月に京都芝2000mの新馬戦を快勝し、続く、前走のGⅢラジオNIKKEI杯京都2歳ステークスでも1番人気に推されるほど、その素質は高く評価されていた。結果だけを見れば4着に終わったものの、先着を許した3頭は、すべて馬場の外目を伸びてきた馬で、この馬だけが内目を伸びて上位に入着した点は、十分に評価できる内容だった。

2番人気に続いたのはアドマイヤザーゲ。半兄に、2009年のダービー馬ロジユニヴァースがいる良血で、新馬戦と黄菊賞を連勝した実績を持っている。前走のGⅠホープフルステークスでは10着と大敗したものの、今回の出走馬で2勝しているのは2頭だけで、実績上位のこの馬に期待が集まった。

そして、3番人気に推されたのはレヴェッツアだった。アドマイヤザーゲと同じく、ノーザンファーム生産でドゥラメンテ産駒の同馬は、2018年のセレクトセール当歳市場で、8640万円(税込)の高値で取引された。新馬戦こそ4着に敗れたものの、そこから中1週で出走した2戦目はしっかりと変わり身を見せ、上がり最速の末脚で快勝し、このレースに臨んできた。

以下、人気順では、キャリア1戦1勝のヴァリアメンテ、そしてもう1頭の2勝馬であり昨年8月にコスモス賞を制した、牝馬のウインアグライアが続いた。

レース概況

ゲートが開くと、まず、最内枠からジャスパードリームが先手を切った。2馬身差の2番手にタイセイドリーマーとウインアグライアが付け、その後ろをグロリアムンディとレヴェッツアが併走。そこから、4馬身開いてアドマイヤザーゲが6番手となり、さらに1馬身開いた最後方をヴァリアメンテが追走していた。

先頭から最後方までは10馬身ちょっとの差で、少頭数にしてはやや縦長の展開。前半1000mの通過は1分1秒5と、重馬場を考慮すれば平均ペースで流れていた。

3コーナーに入ると徐々にレースは動き始め、まず、タイセイドリーマーとグロリアムンディがポジションを上げ始める。アドマイヤザーゲがそれを追い、最後方のヴァリアメンテも差を詰めて、残り600m地点では、先頭から最後方までの差が5馬身ほどに縮まった。

4コーナーを回って、迎えた直線。馬場の真ん中へと持ち出されたタイセイドリーマーが先頭に立ち、ぽっかりと開いた内をウインアグライアが伸びる。馬場の真ん中から、グロリアムンディが前を追う一方で、アドマイヤザーゲは後退。変わって、大外から追い込んできたのがヴァリアメンテだった。

坂を駆け上がり、残り200mを切ったところで、今度はウインアグライアが先頭に立ち、リードは2馬身。グロリアムンディが、タイセイドリーマーを交わすのに手間取る中、大外を追い込んできたヴァリアメンテの末脚は、さらに勢いを増して一気に2番手まで上がり、先頭のウインアグライアを追う。

しかし、最後はウインアグライアがクビ差しのぎきって優勝。2着にヴァリアメンテ。3着争いは、ハナ差でグロリアムンディが制した。

重馬場の勝ちタイムは2分3秒8。
牝馬の優勝は、1996年のヒシナタリー以来、25年ぶりとなった。

各馬短評

1着 ウインアグライア

他馬が避ける内ラチ沿いを、ただ一頭伸びて優勝。
「桜花賞へ向けて視界良好!」とまでは言えないにせよ、面白い存在ではある。高速馬場や瞬発力勝負にならず、スタミナや持久力が問われる展開になれば──昨年、同じ勝負服が活躍したオークスでの一発があってもおかしくない。

また、和田騎手はこのレース連覇となったが、過去7年間で6回騎乗し、3勝、2~4着が各1回と、実はこのレースを得意としている騎手でもある。

2着 ヴァリアメンテ

今回も上がり最速の末脚で追込み、あわやの場面を作った。
多少、展開に注文が付くところもあるが、前走もスローペースを4コーナー11番手から差しきっているため、決して恵まれた訳ではなかった。次走も、直線が長い、坂のあるコースに出てくれば、十分にチャンスはありそうだ。

3着 グロリアムンディ

ポジション取りは問題なかったように思えるが、伸びなかったところを見ると、上位2頭との差は、馬場の巧拙の差ということになるだろうか。良馬場でもう一度見直したいが、多頭数のレースは未経験なだけに、この結果から、次走多頭数のレースで人気になった際は、疑う必要もある。

レース総評

この時期の3歳馬にとって、2000mのレースはまだまだ厳しい条件といえるが、重馬場になったことにより、さらに過酷な条件となってしまった。グロリアムンディやアドマイヤザーゲなど、この馬場に泣かされた馬も何頭かおり、それらの馬達の次走に、改めて注目したい。

また、上位に入線した馬の強みもわかり、超高レベルのお宝レースだったわけではないが、決してレベルの低いレースだったわけでもなく、それなりに見所のあるレースとなった。

6週間行われる中京開催も、今週で折り返し。土曜日は、終日雨が降って馬場がさらに悪化し、よりパワーや底力が必要な馬場となってきた。

先週の、愛知杯と日経新春杯の回顧で、血統にロベルトを持っている馬が上位入線を果たしているという話を書かせていただいたが、このレースも、ロベルトを持つ3頭による1~3着独占となった。
次週以降も、引き続きこの傾向には注目していきたい。

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