2023年4月26日にグランドオープンを迎えた「BafunYasai TCC CAFE」。「馬とつながる、食でつながる」をコンセプトに据えた「BAFUN」×「食」をつなぎ合わせたカフェの運営を始めて、およそ2か月が経過した。今回は、そんな「BafunYasai TCC CAFE」を運営する TCC Japan 代表取締役 山本 高之さんにカフェ運営の手応えについて伺ってきた。
「まずは一度来てもらうことが目標です」
「(「BafunYasai TCC CAFE」がオープンした)GWというのは特別なシーズンですから、そのGWが終わって通常営業を開始して、いよいよ…といった気持ちですね」
山本さんは、カフェのグランドオープンからの日々をそう振り返る。GW期間には関西や九州といった遠方から訪れた方もいた。中には「東京競馬場への遠征前にご飯を食べに」という競馬ファンの方もいたのだという。順調な滑り出しに聞こえるが、一方で、客層の多くはすでに同社の引退競走馬支援の取り組みを知っている人たちというのが現状だ。
「料理や店舗の雰囲気など、お店に来てくださった方々からの反応は上々です。ただ、多くは元から活動を応援してくれている方々なので、自ずと感想もプラス方向になりやすいのかな…という気持ちもあります(笑) ここのカフェの存在を知らずにフラッと立ち寄る人はまだあまりいないようです。2階ですから、店に入るまでのハードルがやや高いのかもしれません」
2階へと階段をあがり、ドアを開けたら開放的な空間が広がっている「BafunYasai TCC CAFE」。馬や厩舎の雰囲気を感じられるよう工夫したという内装は、ウッドチップが敷き詰められているゾーンもあり、馬が好きな人であればワクワクするような場所に仕上がっている。クラウドファンディングに参加した人は、入り口にあるモザイクアートで自分の写真を探すのも楽しみのひとつだろう。
また、平日のランチ営業では席を独立させているが、土日にはそれらのテーブルをつなげて大きなテーブルとすることで、客同士のコミュニケーションも促している。
「スタッフは馬も競馬も好きなので、やはりお客さまとも馬の話題で盛り上がることが多いみたいですね。競馬新聞をひろげてマークシートを塗っているお客様もいらっしゃいますが、あまりギャンブルっぽい感じにならずに内装や店内の空気感に溶け込んでいる印象です。競馬をやらない馬好きの方でも、気にならないような雰囲気だと思いますよ」
土日の競馬中継はプロジェクターで放映するが、「今のプロジェクターは性能が良いので画質が良く見やすい」とのこと。音量の設定を小さめにして、競馬に興味のない人もBGM程度に楽しめる空間を目指す。競馬をひとつのエンターテイメントと捉えて『おしゃれな空間で競馬を楽しむ』というスタイルを提供しているが、これには、現役馬を応援することで引退後も応援したくなる……という流れを目指す意図がある。
馬ふん堆肥を使用したメニューの数々
肝心の料理も、評判は上々だ。「BAFUN」×「食」のコンセプトから、意識的に野菜が使われた料理を注文する人も多い。特に今から夏に向けてはどんどん野菜のバリエーションが増えていくシーズンであり、馬ふん野菜が活用される場面も増えそうだ。
「オーガニックな農家と契約しているため、仕入れがやや不安定な面もあります。ただ、15品目のサラダなど、季節によってそれぞれ旬な野菜が出るので、そうした変化は魅力のひとつだと思います。減農薬・無農薬などでコストはかさみますが、良いものを提供していきたいですね」
昼はペペロンチーノやオムライス、夜はビーフシチューや野菜プレートが主力で、デザートは自家製のにんじんケーキが人気だ。ランチタイムでもプラス料金でアルコール提供もあり、時期によってはサングリアに馬ふん堆肥を使用した果物を使うことも視野に入れている。
発酵ジンジャーエールの生姜は浦和競馬の野田トレセンの馬ふんを、お米は美浦トレセンの馬ふん堆肥を、それぞれ使用している。
さらにチリにおける最大規模の競走馬生産牧場が所有するワイナリーがイタリアと共同で生産したワインも、グラスで提供されている。ここまで一貫して馬ふん堆肥に囲まれると、一人の競馬ファンとして、どこか満たされた気持ちになるから不思議だ。
「食事を通して、馬に対する距離感を縮めていきたいですね。普段の食生活との関わりを感じてもらいたいです。そこをきっかけに、多くの日本人が持っている『馬=競馬、乗馬』というイメージを変えていきたいです。ここでは、食を楽しむだけでも間接的な引退競走馬支援になりますから……」
集客に関してはやや現実の厳しさを感じるものの、届いてくる感想からは手応えがある。このまま良いものを提供し続けていけば……という思いが強いという。まずは足を運んでくれた人々に満足してもらい、そこからリピーターや口コミ客を増やしていけたらと目論んでいる。
「この店が存在することそのものが、一般の方々への啓蒙になればと思っています」
レジ横で物販もしている「BafunYasai TCC CAFE」だが、そちらも好評だ。特に反応が多いのは、絵馬。全国的に馬の神様として有名な滋賀県の賀茂神社と連携したオリジナル絵馬は、デザインは勿論のこと1年間は賀茂神社に奉納されることなどを含め、ストーリーもしっかりしているのでファンとしては心惹かれるものがある。山本さんも「オリジナルなので原価がなかなか高くてお値段が張ってしまいますが、面白い」と自信をのぞかせる。さらにTCCホースのARスタンプラリーなども好評で、「BafunYasai TCC CAFE」でしか体験できない面白さが数々用意されている。
「たまに、道からこのお店をたまたま見かけた通行人の方々の声が聞こえてくることがあります。中には、若い女性の『え、馬ふん!?』というちょっと驚いたような声も…。この店が存在することそのものが、一般の方々への啓蒙になればと思っています。飲食関係・生産関係も含めて、馬ふん堆肥への食農的な面も期待しています」
もっと入りやすくするために、様々な方策を練っている。客単価を下げて訪問客を増やし、取り組みを知ってもらう機会を増やすというのおもその一つだ。実際、今もカフェのみ利用も歓迎している。
「ここをフックとして馬に会いにいく人が増えたら、と思っています。お店の企画として、一人では牧場に行きにくいと感じている人たちを集めて牧場訪問などもしてみたいですね。イベントには力をいれたいと思います。また、売上重視だけに走ってしまうとブレるので、コンセプトは大事にしていきたいです。ここでマズいものを提供すると馬ふん野菜の価値を低くくしてしまうので、当然ながらそのあたりも気をつけています。出す以上は、自分達で美味しいと自信を持って提供できるものを! そこから、引退競走馬への興味を深めていただければと思います」
表参道から、引退競走馬支援を広めていく──。
そんな大いなる挑戦が、始まっている。
●営業日
月・水・木 11:30~17:00 (ランチ・カフェ)
金 11: 30~22:00 (ランチ・カフェ・ディナー)
土・日 10:00~22:00 (競馬タイム・ディナー)
祝 11: 30~22:00 (ランチ・カフェ・ディナー)
※火曜定休
●営業時間
ランチタイム 11: 30~15:00
カフェタイム 14:00~17:00
ディナータイム 17:00~22:00 (フードLO.21:00、ドリンクLO.21:30)
競馬タイム 10:00~16:30
※営業形態は変更となる可能性があります。最新情報はInstagramをチェックください。
Instagram > https://www.instagram.com/bafunyasai_tcc_cafe/
Web予約 > https://yoyaku.toreta.in/tcccafe/#/