[連載・馬主は語る]スペシャルウィークは肌に回っていい(シーズン2-21)

ノーザンファームミックスセールは2頭に絞りました。1頭目はビットレート(10歳)です。実はビットレートの初仔であるクエイヴァー(父ヘニーヒューズ)に出資しており、2番仔もキャロットクラブで募集されていたのですが、残念ながら落選してしまいました。クエイヴァーは馬体の形というかシルエットが美しく、それで出資を決めたのですが、馬体のサイズが小さくてデビュー戦は大敗を喫してしまいました。それはそれで仕方ないのですが、2番仔(父ドレフォン)は牝馬ながらも募集時で500kg近くある馬格を誇っており、前後躯にしっかりと実が入って立派な馬体を有していることが伝わってきます。この2頭の産駒の出来を見るにつけ、ビットレートの仔出しは悪くはないのではというのが僕の見立てです。

しかもビットレートの父スペシャルウィークは馬体の大きな産駒を出す傾向にあり、それゆえに牝馬が走るフィリーサイアーとされるのですが、肌馬に回ったとき産駒にも大きさを伝えるのです。それは母父クロフネや母父メジロマックイーンと同じ原理ですね。シーザリオがエピファネイアやリオンディーズ、サートゥルナーリアと大物を誕生させ続けられたのは、父スペシャルウィークであるのも理由のひとつです。また、エピファネイアやリオンディーズ、サートゥルナーリアの産駒が大きく出るのも、母父スペシャルウィークゆえでもあります。

それではなぜノーザンファームがミックスセールに出してきたのか?同じような血統の繁殖牝馬ばかりが残ってしまうのを避けるため、もしくは今年取り上げたバゴ産駒の出来があまり良くなく、実は筋肉量豊富なドレフォン産駒も走りそうにない、などなど。あくまでも推測の域を出ませんが、ノーザンファームが戦力外通告をしたということは、何らかの理由があると考えて良いはずです。

このことについて下村獣医師に尋ねてみると、「ビットレートはまだ結果が出ていない繁殖牝馬ですし、私もずいぶんと早くに決断したなぁと思いました。キャロット募集のドレフォン産駒は、筋骨豊かで悪くないですよね!」と返答がありました。まあ、僕には想像が及ばないような現場の事情もあるでしょうし、あまり勘ぐってもキリがないので、素直に候補の1頭に入れておこうと思います。

同じようなケースとしてということで、ピエリ―ナ(11歳)の名前が下村獣医師から挙がりました。僕はノーマークだったのですが、調べてみたところ、ピエリ―ナ(父チチカステナンゴ)自身は中央で2勝、地方で3勝の計5勝を飾っている実績があります。自身は420~430kg台で走ったように、馬格の小さい馬でしたが、産駒は問題ないサイズ感に出ているようです。初仔のホワイトクロウ(父ヘニーヒューズ)は460kg台の馬体重で走り、新馬勝ちを果たして2勝目も間近です。2番仔のトウセツ(父ダンカーク)がすでに3勝を挙げ、レパードステークスでも6着したように、ダートの一線級での活躍が見込める逸材です。

その下のリオンディーズ産駒もキャロット募集馬で、下村獣医師いわく「同馬は白老ファームイヤリング部門にいたのですが、私は好きな形でした。スタッフに聞いたら、かなりのオススメと言っておられました。相手が違う種牡馬相手に、形の良い産駒を出せるというのは繁殖牝馬としての高い資質の表れです」とのこと。今年はルーラーシップの仔を宿していますので、もしかすると大物が誕生するかもしれません。なぜこの馬が繁殖牝馬セールに放出されるのか分かりませんし、おそらく欲しい人はたくさんいるはずですので高くなるかもしれませんが、候補馬の1頭に加えました。

上記の2頭は、繁殖牝馬として脂が乗ってくる年齢ではありますが、決して若いとは言い切れません。実績や馬体は文句をつけようがないのですが、今年のテーマである若い繁殖牝馬という点ではいささか物足りません。そこでもう1頭、未供用の馬の中から、僕が選んだのはコントゥール(4歳)です。父はハーツクライ、半姉のレッドクラウディアは船橋のクイーン賞(GⅢ)や中央競馬の昇竜ステークス(オープン)など、計5勝を挙げ、中央と地方競馬で合わせて1億円以上の賞金を稼いだ名牝です。コントゥール自身も2度にわたる屈腱炎により僅か3戦で引退してしまいましたが、ダートで1勝を挙げて勝ち上がっています。そして実は、コントゥールは僕の出資馬なのです。しかも、見学ツアーに行って、現地で実馬を見て選んだ馬ですから愛着があります。

なぜコントゥールをこれまで繁殖牝馬候補として挙げなかったかというと、すでに勝ち上がっていたからです。勝ち上がっていなかったラフルオリータやヴァンデスプワールはもしかするとサラブレッドオークションに出てくるかもと期待して待っていましたが、まさかコントゥールが一番先に繁殖牝馬セールに上場されることになるとは思いも寄りませんでした。ラフルオリータもヴァンデスプワールも勝ち上がってターフで走っており(ヴァンデスプワールは2023年4月に引退)、一方のコントゥールは、勝ち上がりはしたものの引退して繁殖牝馬として僕の目の前に現れるのですから、人生と同様に馬生も不思議です。

ノーザンファームミックスセールは、ビットレート、ピエリ―ナ、そしてコントゥールの3頭が有力候補として浮かび上がってきました。

(次回へ続く→)

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