![[連載・ドリームホースが繋ぐ夢と希望]第1回 イットールビー(父:クワイトファイン・母:イットーイチバン)誕生から現在まで](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2025/05/イットーイチバン.jpg)
馬主のドリームホースと申します。笠松競馬が大好きな岐阜出身の馬主です。「志は岐阜から全国制覇」国産の血統を後世に残すことを信念に馬主をしております。
今回ご紹介するのは、イットールビー(牝2)です。今年、金沢競馬場でのデビューを予定している彼女は、「華麗なる一族」の牝系を受け継ぐ1頭です。
イットー、ハギノトップレディ、ダイイチルビーと続く名牝の血を、この馬から未来へと繋いでいきたい…そんな願いを込めて、イットールビーと名付けました。「華麗なる一族」の系譜であることがひと目で伝わるよう、意識して名付けた名前ですが、発音からふっと浮かび上がる「It’ll be(きっと、その夢は叶う)」という響きが、私自身の「国産名馬の血を未来へ繋ぎたい」という想いを、後押ししてくれる気がします。勝利を掴み、そして次の世代へと命のバトンを繋いでいく──それが、彼女に託した想いです。
ここでは、そんなイットールビーの誕生から現在に至るまでの物語を振り返ります。

私は当時、国産名牝の系譜を持つ牝馬と出会えないかと、日々思いを巡らせていました。日本競馬における名馬たちの血を未来へ繋いでいくには、牡馬だけでなく、牝系の継承もまた重要だと強く感じていたからです。
中でも特に注目していたのが、母から娘へと受け継がれるミトコンドリアDNAでした。細胞の「エネルギー産出工場」とも称されるこの遺伝子は、競走能力にも関係するとされており、日本の競馬環境で結果を残してきた国産名牝の遺伝子を、どうしても次世代へ繋ぎたいと願っていました。
そんな折、運命的な出会いが訪れます。それが、イットールビーの母であるイットーイチバンです。
「華麗なる一族」の血を受け継ぐ彼女との出会いは、2021年でした。運命的なものを感じました。彼女は当時、北海道・浦河にあった大道牧場に繋養されていた繁殖牝馬でした。
大道牧場といえば、ネーハイシーザー、ネコパンチ、シンホリスキーなど、個性と実力を兼ね備えた名馬たちをターフに送り出してきた名門です。そんな大道牧場が2022年に閉場するという知らせとともに、繁殖牝馬の譲渡先を探しているという情報が届きました。
「華麗なる一族」の血を受け継ぐ牝馬を求めていた私にとって、それはまさに運命のタイミングでした。
こうして私は、イットーイチバンとのご縁をいただき、彼女を譲り受けることになったのです。

イットーイチバンとの出会いがあった頃、私はすでに、国産の名馬の血を未来へ残したいという想いから始まったプロジェクトに共鳴し、その歩みを共にしていました。それが「クワイトファインプロジェクト」です。
クワイトファインの血統表には、日本競馬を代表する三冠馬──シンボリルドルフ、ミスターシービー、シンザンの名が並びます。さらに、彼自身がトウカイテイオー最後の牡馬系統という事実も、国産血統を後世に繋ぎたいという私の願いに深く響きました。
「華麗なる一族」の牝系を受け継ぐイットーイチバンと、国産の至宝ともいえる血を宿すクワイトファイン。『この二頭の出会いが、日本競馬の夢を詰め込んだ一頭を生む』と信じて、私は迷うことなくその配合を選びました。
2021年、イットーイチバンにクワイトファインとの種付けを行いました。しかし、この年は不受胎に終わってしまいます。
それでも諦めることなく、翌2022年も同じ配合を試みました。その思いが実を結び、イットーイチバンは無事にクワイトファインの仔を受胎し、翌春に待望の牝馬が誕生しました。それが、イットールビーです。
この小さな命に、私は“牝系として血を未来へ繋ぐ”という夢を託しました。
しかし、喜びも束の間でした。イットールビーはイットーイチバンの「ラストクロップ」となってしまったのです。彼女が離乳する前に、母馬のイットーイチバンは放牧中の事故により、突然この世を去ってしまいました。それでも、イットールビーは牧場の皆様の深い愛情と手厚いケアによって大切に育てられ、今ではとても人懐っこく、やさしい性格の馬に成長しています。
2024年6月、イットールビーは北海道日高町の高橋ファーム内・大岩ステーブル様へ預託され、デビューに向けた育成が始まりました。馴致から育成までの過程は順調に進み、入厩に向けたメニューも無事にこなしてくれました。
そして2025年4月25日、イットールビーは北海道を出発。翌日には、金沢競馬場・川添厩舎へと入厩を果たしました。その場所は、父・クワイトファインが現役生活の最後を過ごした思い出の地でもあります。
イットールビーは、今後能力試験を受験し、怪我なく順調に進めば、早い段階でのデビューが見込まれています。「華麗なる一族」の牝系を受け継ぐ彼女にとって、まずは競走馬としての役割を全うし、いずれは、「繁殖牝馬」として血を未来へ繋いでいくことが目標です。
私自身、イットールビーには現役生活でベストを尽くし、その後もその血を残していってほしいと心から願っています。ただ、その夢をひとりの馬主の力で叶えていくのは、決して簡単なことではありません。
「イットールビー1頭だけなら、きっとできる。しかし、“その次”へと想いを繋ぎ、継続していくには“つながり”が必要だ」
そんな助言をいただきました。
いろいろなご意見があることは承知しております。ですが私は、この馬の未来を一緒に見届けてくださる方と、想いを共有しながら、歩んでいきたいと考えます。
そこで、イットールビーを共有してくださる馬主様を募集することを決意しました。
この思いをお伝えしたところ、SSオーナーズクラブ様が快くご協力くださり、共有馬主の募集を開始していただけることになりました。
イットールビーの現役時代、そしてその後の繁殖牝馬としての歩み…そのひとつひとつの瞬間を、同じ想いを持つ方々と分かち合いながら歩んでいけたら、どれほど心強いことかと思います。
『きっと、その夢は叶う』――It’ll be――。イットールビーに託した想い。
もし、この想いに共感いただける方がいらっしゃいましたら、どうか、イットールビーの“今”と“未来”を一緒に見守っていただけませんか?
詳細は、SSオーナーズクラブ様のホームページにてご確認いただけます。皆様のご参加を、心よりお待ちしております。
