「あったらいいな」から生まれた、岩手ジョッキー缶バッチ

皆さんは競馬場に行くと、何に注目していますか?

私の場合は、グッズコーナーです。
お気に入りの騎手のグッズがないかと、ついつい商品の棚を覗いてしまいます。
なかでも騎手の似顔絵が描かれたものが好きで「武豊騎手とキティちゃんのコラボ、かわいいなぁ~」「つの丸先生が描いた藤田菜七子騎手のイラスト、味わいがあるよな~」と、いつも楽しんでいました。

それでも、あくまで「ユーザー」としてワクワクしながら眺めているだけでした。

しかし、あることをきっかけに、私のイラストを使った岩手競馬の騎手の缶バッチが発売されることになったのです。
今回はそんな「岩手競馬騎手缶バッチ」の制作秘話をお話をさせていただきます。
どうぞ、お付き合いください。

事の発端

2019年の9月頃、競馬仲間と「騎手のグッズ、もう少し種類があればいいのにね……」「TCKで売っていた騎手の似顔絵グッズ、好きだったな。あれの岩手版が欲しいな~」と話すことがありました。

そしてその思いは、日に日に大きくなっていきます。
「岩手の騎手たちをモデルとした似顔絵グッズが欲しい」
この「あったらいいな」が私を突き動かしたのです。自らの手でグッズを作ろうという無謀とも言える挑戦が始まりました。

似顔絵グッズといえば、運営がプロのイラストレーターに頼んで作るのが通常の流れでしょう。
しかし運営でない以上、自身で動いてみることを選びます。
「きっとTwitterにあげてバズったら、何かあるだろう」と考え、まずは自らの手で岩手競馬騎手全員のイラストを描いてみました。
さらには友人に聞いて、缶バッチなら小ロットで注文できることを知り、そのまま缶バッチを手配。自分たちの手で地道に配布を開始します。
その先々で多くのファンからご好評をいただいた一方で、発売できそうなほどの手応えは得られないままでした。
一度組合の方にイラストを見せたのですが「調騎会の了解を得ないと……」とやんわりと断られてしまいます。

やがて1人のファンにより大きなうねりに

月日は過ぎ、缶バッチの試作配布を繰り返す日々のなか、ある日1人のファンから連絡が入ります。
きっかけは2019年に岩手でデビューした女性騎手・関本玲花騎手の缶バッチをデザインしたことでした。

Twitterなどでは「関本玲花おじさん」として親しまれている岩手競馬ファンの方から「LVRレディスヴィクトリーラウンド2020に出場する関本玲花騎手の『布教活動用』として、沢山バッチが欲しい」とお声がけをいただいたのです。
その缶バッチはいつの間にか佐藤友則騎手の手にも渡っていき、関本玲花騎手の笠松における初勝利セレモニーで使っていただくことへと繋がっていきました。

『アピールがんばるぞ!』と思いきや、コロナウイルスの影響が……

「現役で活躍されている佐藤友則騎手に好評なら、これはもう正式に商品化してもらうしかない!」と思い立ちます。
商品化するのであれば、岩手競馬の関係者の目にとまるのを狙うしかありません。
狙い目は、3月に開催される岩手競馬の表彰式「2019IWATE KEIBA AWARDS」の交流会(事前予約で一般参加可能)。

「そこで配れば関係者の目にもとまって、正式にグッズとして認められるかもしれない!」と考え、大量に缶バッチを注文します。

しかし2020年春には全国的な新型コロナウイルスの流行が巻き起こります。
岩手では感染者こそ出ていなかったものの、ほの影響をうけ中止……。
手元に残った大量の缶バッチは、Twitterで呼びかけて、欲しい人に送付する事になりました。

新たな活路を求め、1通の手紙を……

コロナによる自粛の日々のなか、ある日、以前組合の方に言われた「調騎会の了解を得ないと……」という台詞が頭をよぎります。

私にとってそれはある意味で『最終手段』。
しかしグッズ化のためにともう一踏ん張りして、缶バッチと書類を同封し岩手競馬調騎会騎手部会会長である村上忍騎手に送ったのです。
送付してからは、どう受け取られるかと不安になる事もありました。
「忍さん、変な手紙送ってごめんよ……」と嘆いていた矢先、組合の方から「村上忍騎手より相談を受けてメールいたしました」との連絡が入りました。

私は書類のなかで、売り上げの一部を寄付したいと提案していました。騎手部会では毎年、いわての学び希望基金への募金活動を行っているのですが、私のバッチの売上の一部を調騎会へ寄付することを条件に、承諾が得られたのです。
※いわての学び希望基金…東日本大震災津波で親を失った子どもたちなどの「暮らし」と「学び」を支援するための基金

そして、販売開始

東日本大震災による岩手県の被災孤児・遺児は583人にのぼります(令和1年10月統計による)。

缶バッチの利益がそういった方々のために役立ててもらえるのは、とても有意義な事だと感じます。
「あったらいいな」から始まった取り組みが、コロナ禍などを経て、そうした活動へと昇華されたのは驚きもありながら、やはり嬉しい気持ちが大きいです。

岩手競馬に興味のある方は、ぜひお手にとっていただけたらと思います。

いつか、缶バッチを付けた方々と競馬場でお会いするのを楽しみにしています。そして岩手競馬を一緒に盛り上げていきたいです。

辛いご時世ですが、力を合わせて乗り切っていきましょう!




岩手競馬騎手缶バッチ発売サイトbooth「michinokuya」

https://michinokuya.booth.pm/


参考:岩手県HP
写真:名古屋競馬ファン(駒野義明/仮名)Twitter@758keiba_fan

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