「夏競馬の暑熱対策」で変化する、夏競馬の新しい楽しみ方!

昨年からスタートした、夏競馬での暑熱対策。今年は新潟、中京の2場に拡大し、期間も4週間に延長されて実施されている。昨年より更にパワーアップした連日の猛暑の中、馬にも人にも優しい競馬開催は、来年以降も実施され、夏競馬の開催パターンとして定着していきそうである。

「競走時間帯の拡大」は5レース終了から6レース開始までの“昼休み”が3時間20分設けられる。この3時間20分の過ごし方と、それに伴う1日のレース時間の拡大で、夏競馬のレース観戦シーンが大きく様変わりしている。

自宅でのテレビ観戦シーンが変わった?

中京競馬の1レーススタートが9時35分、新潟競馬の12レーススタートが18時25分と、最大で土日の各9時間レースを楽しめる。「中央競馬は10時から16時過ぎまで」という固定したレースサイクルが変わる。つまり、土曜の競馬中継が終われば“ドラえもん”を、日曜の中継が終われば“笑点”を見なくても、レースを見続けることができるのだ。

週末の朝起きてグリーンチャンネルで1レースを見ながら朝食を食べ、最終レースを見ながら夕食を食べるという夢のような夏の週末を過ごすことができてしまう。

昼の新潟、中京のレースが休止時間はどうするのか?その間は札幌競馬がカバーしてくれる。普段あまり見ることのない札幌のダート1000m戦や、芝の2600m戦などを見る機会にも恵まれる。

8月9日(土)の武豊騎手の4600勝達成シーンも札幌の8レース、新潟中京の昼休み時間に実施された。レジェンド武騎手の記録達成を他場のレーススタートで消されることなく、じっくりと見れたのは貴重な機会だった。

日中、テレビをつけていれば競馬中継をやっているというのは、嬉しい限りだが課題もある。例えば新潟が昼休みの間、札幌の5レース~10レースまでは単独で開催されていることになる。つまり、パドック解説も長く詳細になるため、思わず馬券を買ってしまう…ということも多くなる。普段は本場のレースしか買わない人も、ついつい札幌のレースにも手を出している人が、この数週間は増えているのではないだろうか?

それでも、週末の夢時間が延長されるのはうれしいこと。個人的には来年以降も、是非続けて欲しいと思う。

競馬場での過ごし方も変わった?

実際に競馬場に行ってみて思ったことは、「昼休み中のレース休止時間の過ごし方をどうするのか?」に尽きる。暑さに対する施策は両競馬場ともいろいろ工夫がみられ、涼しく過ごす工夫がなされている。新潟・中京とも暑熱対策期間の4週間は、フリーパスの日で入場無料で出入り自由になるため、昼休み中の過ごし方パターンが広がるはずである。また、昼休み期間の場内モニターは、札幌競馬のレース関連の情報がフルパターンで放映されている。両競馬場で最も多い昼休みの過ごし方パターンは、競馬場がWINSと化し、札幌のレースを予想し馬券購入して楽しんでいる層が多いと思われる。実際、レース中継のゴール前は、スタンド内で歓声が上がる。

<中京競馬場>

「夏の中京は覚悟がいる暑さ!」というのが定説だ。何年か前に中京記念を見に行った時、最高気温が37℃に迫る猛暑の中で、場内の飲料自販機の水とお茶がどこも売り切れになり、探し回ったのを思い出す。

初の暑熱対策が実施された今年、名鉄中京競馬場前駅からフローラルウオークに入った時点で、競馬場までの無料シャトルバスに並ぶ列が目に留まる。バスに乗らなくてもフローラルウオークを歩くと至る所でミストが出ている。フローラルウオークから西門へのエスカレーターを昇ると、今度はミスト扇風機の隊列が迎えてくれ、涼しく競馬場まで行きつく。場内に入ると「ミスト涼ませ隊」のスタッフの方々がいて、ミストを噴射してくれる。子供たちが大喜びでミストを被る姿は、新しい夏競馬の風景だ。

朝一番に入場して嬉しかったのは、入場ゲートでアイスキャンデー引換券をもらったこと。珍しいものでもないが「夏=アイスキャンデー」の連想が、涼感を誘う。

また、場内の食堂や売店で商品購入すると割引クーポン券がもらえたり、昼休みに様々なイベントが開催され、札幌競馬観戦も含めて、充分昼の3時間20分を楽しめる。

遠方から中京競馬場へ来た人たちは、昼の時間を利用して名古屋グルメを楽しみにでかけるパターンも多いとか?3時間あれば、神宮前まで戻ってひつまぶし、大須商店街で名古屋グルメの食べ歩き等も可能である。入退場自由のフリーパスの日だけに、さまざまな競馬観戦スタイルが広がっている。

<新潟競馬場>

新潟駅から距離のある新潟競馬場は、昼休みに新潟駅に戻って…というのは少々難しい。場内でいかに楽しむかがメインとなるが、それに応えるようなイベントが開催されている。中心はファミリー向けのイベントが多く、「レースが実施されない時間帯は、子供たちと夏休みの思い出を作ろう」を提案している。

指定席に座る多くの人たちは馬券検討をしている人が多く、札幌のレース馬券を購入しながら新潟メインのレース検討をしている。静かな空間の中、誰かが「大谷が40号打った!」と叫んだら、周辺の人たちが一斉にスマホを触り出したのが面白かった。それくらい指定席の昼休み時間は静かに時間が流れている。

新潟競馬場といえば千直の長い直線。その直線のスタート時点を近くで見ようと、4コーナーに向かって歩いて行く人たちも多い。普段は昼休みも短く連続してレースがあるので、見に行く機会を作れなかったが、時間がある今回は多くの人たちが歩いていた。

実際行ってみると想像以上に遠かった…。スタート時点に近づけるスタンドの端まで行ったが、スタート地点は遥か先。外回りの4コーナーもテレビで見るより遠くに感じ、「新潟の直線の長さ」を改めて実感した。

そして、メインレース。実際に観戦エリアを端から端まで歩いてからレースを見ると、レースの見え方が違ってくる。逃げ残る難しさやロングスパートの追い込みなど、馬券検討での与件が拡大するのは悩める反面、面白さも倍増するはずである。

新潟競馬場で昼休みを過ごすなら、是非歩いてみることをおすすめしたい。

──年々暑さが増す、酷暑の夏。来年以降も夏競馬の暑熱対策は、更に改善されていくように思う。暑さを乗り切るための工夫で、快適に夏競馬を楽しめるようになっている各競馬場。競馬場に足を運び、現地でしか味わえない暑さの中で、がんばっている馬たちを応援するのも楽しい夏の思い出になるはずだ。

Photo by I.Natsume

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