僕は学生時代、南関東の競馬場(特に大井競馬場や川崎競馬場)には足しげく通っていました。当時はまだ場末の賭博場の雰囲気をかもしだし(僕はそれも好きですが)、女性の姿はほとんど見られませんでした。ナイター競馬が始まったことが大きなきっかけとなり、大井や川崎競馬場はいつの間にかおしゃれなエンターテイメントスポットに様変わりしました。関係者の意識改革と努力は賞賛に値します。ずいぶんと華やかになった競馬場に、今度は馬主として入ることができるなんて嬉しい限り。そこで憧れの馬主席や馬主エリアについて、僕にとって最もなじみのある大井競馬場と川崎競馬場を調べてみました。
大井競馬場はモノレールの駅を出ると、厩舎からの馬糞の匂いがほのかに鼻に広がり、馬の近くに来たなと嬉しくなります。そのまま歩くと競馬場が見えてきて、左手に馬主専用の入り口があります。馬主はここから入れるのだと羨望の眼差しで見ていたあの門を、馬主になればくぐることができるのです。ただ調べていくと、馬主席とは言ってもそれほど特別なものではなく、一般の方々と同じエリアの一角に席が確保されているということです。中央競馬のように、一般の競馬ファンとは明確な区分けがあって、馬主しか知らない世界があるといったVIP待遇を期待してはいけません。東京馬主会の会員になっていれば、その日の出走馬主かそうではないかで席が変わりますが、L-Wing3階の1500円の席か2500円の席かの違いぐらいです。馬主登録証を持っていれば馬主用パドックには入れるようです。僕は席に座ってじっとしているタイプではないので、パドックの内側から馬を近くに見られるのは良いですね。
次は川崎競馬場の馬主席について。川崎競馬場は川崎駅からバスもしくは歩いて向かいます。僕は駅から競馬場に歩いて行ける場合は、歩くことにしています。「特別室」などと書かれた看板が立ち並ぶ色町を横目に、煩悩と振り払いながら歩くこと15分ほど。賭博場だった頃の昔の雰囲気や建物、食べ物(特に辛すぎる焼きそばが好きです)をわずかに残しつつ、おしゃれを装っている川崎競馬場の今の感じも嫌いではありません。馬主席に関しては、地方競馬でいちばん豪華と言っても良いそうです。特に出走馬主であれば、サービス面を含めても中央競馬よりも豪華かもしれないとのこと。おそらく僕は愛馬が出走するときぐらいしか競馬場に足を運ばないと思いますので、馬主席の特別感を味わうにはちょうど良いかもしれません。
僕が預託を検討している岩手競馬の水沢競馬場と盛岡競馬場の馬主席について調べてみましたが、ネット上にはほとんど情報がなく、たとえ出走馬主であってもそれほど豪華な馬主席が用意されているわけではなさそうです。年間所得が500万円以上ぐらいの基準で馬主になって、特別扱いされると思ったら大間違いだぞという声があちこちから聞こえてきそうですが、まさにそのとおりで、JRAの馬主席やその雰囲気と比べてはいけないということです。
地方競馬場の馬主席情報や雰囲気を詳しく知りたい方は、実際に馬をその競馬場に預けている先輩馬主さんがネット上に写真等をアップしてくれているので検索してみてください。誰かを招待して華やかな社交場として使ったり、非日常的な空間を求めるのであれば、川崎競馬場が良いのではないでしょうか。ただし、先日、川崎競馬場を訪れて中の人に聞いてみると、馬主でなくても同じエリアに入れるそうなので、馬主としての特別室ということではないようです。いずれにしても、地方競馬場の馬主席に関しては、あまり大きな特別扱いなどの期待を寄せない方が良いということ。まあ、馬主席が豪華だからといって、愛馬が勝つわけではありませんし、中央競馬の馬主席のように派閥があったりすることもなくかえって気楽に利用できると考えることもできますね。馬主席はあくまでも馬主の特典のひとつにすぎないということです。僕はどちらかというと、厩舎に入れて愛馬と会ったり、たずさわってくれている方々と話ができたり、また競馬場のレースで勝ったときには、関係者全員で口取りをしたいという想いの方が強いです。
参考サイト
馬主席も含め、実際に現地に行ってみないと分からないということで、未踏の地である水沢競馬場に赴くことにしました。僕の水沢競馬場のイメージは、高校生の頃に読んだ漫画「パッパカパー」の主人公・杉ちゃんが、借金取りから逃れた末にたどり着く競馬場でした。そこに登場する菅原勲という騎手の名前や鉄火場、場末のバーなどのイメージが入り混じって、あらゆる意味において極北の競馬場だと思っていました。あくまでも漫画の中の誇張された世界であり、実際はそうではないことを確認するためにも、水沢まで足を運ぼうと思ったのです。
今年のゴールデンウィークの真っ只中、思い立ったが吉日、日帰りで水沢競馬場に向かいました。僕の住んでいる東京町田から水沢競馬場まで、実際にどれぐらい時間が掛かるのか、馬を預けることになったときのことも考えて、体感してみたかったのが第一の理由です。もちろん、自分の愛馬が主に走るであろう晴れの舞台をこの目で見ておきたいという気持ちもありました。
「ひと声かけてくださいよ」とあとから言われるのも何なので、永田厩舎の志村さんにも前もって連絡を入れておきました。すると、「装鞍所以外であればお会いできると思いますので、競馬場に着いたら連絡してください」と返信がありました。競馬開催中は関係者とはコンタクトが取れないと勝手に思っていたので驚きましたが、それならとばいうことで志村さんと永田調教師にも会って、直接話を聞いてみようと思いました。
町田から新宿に出て、そこから中央線で東京駅へ向かい、東北新幹線に乗りました。当初の予定では、一関駅から在来線で水沢駅までのルートでしたが、良く調べてみたところ、一関の手前に水沢江刺(みずさわえさし)という何だか物騒な響きにも感じられる駅があり、そこからの方が近いことが分かりました。一関から回るよりもだいぶ(1時間近く)早く水沢競馬場に到着するのです。地元の人たちにとっては当たり前かもしれませんが、僕はショートカットをみつけたような嬉しい気分でした。水沢江刺駅で降り、タクシーに乗り込んで10分ほどで競馬場が見えてきました。
(次回へ続く→)