[連載・馬主は語る]繁殖牝馬を手に入れる方法(シーズン1-18)

方向性が大きく変わると、それに伴って計画も大幅に変更をしなければいけません。いつの間にか、競走馬ではなく、繁殖牝馬を探してみることになりました。繁殖牝馬を手に入れる方法は、以下の3つが挙げられます。

  • 繁殖牝馬セールで購入する
  • サラブレッドオークションで購入して繁殖入りさせる
  • 知人から購入する

さすがに「繫殖牝馬を売ろうか?」と言ってくれる友人は僕にはいないので、まずは繁殖牝馬セールがいつどこで開催されるか調べてみたところ、競走馬のセリ市やトレーニングセールほどには数も種類もないことが分かりました。僕が見つけた範囲では、「ノーザンファーム繫殖牝馬セール」と「ジェイエス繫殖馬セール」の2つが主なところです。友人の生産者が昨年のノーザンファーム繫殖牝馬セールで1頭購入したという話は聞いていたのに、あまりピンと来ていませんでしたが、セリ市で馬が高く売れた生産者に繁殖牝馬を買ってもらうために10月に行われるとのことです。ちなみに、「ノーザンファーム繫殖牝馬セール」と「ジェイエス繫殖馬セール」は毎年10月に連日で行われていますので、10月は2つの繫殖牝馬セールをはしごできそうです。お酒が一切飲めないため、飲み屋すらはしごしたことがない僕が、繫殖牝馬セールで初めてのはしごをするなんておかしなものです。

競走馬の価格が全体的に上がってきているということは、繫殖牝馬のそれも上がってくることは必至です。過去の購買価格はあまりあてにならないと思い、昨年の結果を調べてみたところ、ノーザンファームの繫殖牝馬セールでは64頭が上場されて62頭が落札、お腹に子どもを宿している受胎馬は上が5600万円から下は200万円、空胎馬も7200万円から100万円と振れ幅が大きいです。平均価格は1119万円です。

友人である碧雲牧場の長谷川さんは昨年のノーザンファーム繫殖牝馬セールにて、キタサンブラックの仔を宿したマンドュラを600万円で落札していました。マンドュラは名前の響きからも分かるように、ワールドエースやワールドプレミアらを生んだマンデラの妹にあたります。マンデラが父アカテナンゴに対し、マンドュラは父デインヒルダンサーということで決して引けを取るものではありません。マンドュラ自身は身体が小さくて13歳と高齢のため血統的価値に対して安く買えたと長谷川さんは言っていましたが、マンデラは16歳のときにワールドプレミアを生んでいますから、マンドュラもこれから大物を出す可能性も十分にあるはずです。

これだけの世界的血統が数百万で手に入るのですから、ノーザンファームの繫殖牝馬セールは夢があります。特に未供用の(繁殖牝馬としての実績がない)3歳馬は、翌年に種付けをして仔が生まれるのが翌々年になりますし、どのような産駒を出すのかデータもない分、血統的背景に対して安い価格で取引されていると感じました。繫殖牝馬としてある程度の経験や実績がある高齢の牝馬か、それとも繫殖牝馬としては未知の部分が大きい若駒を取るのか悩ましいところです。購入したいと思える血統背景の繫殖牝馬に、自分が配合したい種牡馬がすでについていれば理想的ですね。

ちなみに、「ジェイエス繫殖牝馬セール」は2020年10月開催が平均386万円、2021年1月開催が平均477万円という価格で取引されており、「ノーザンファーム繫殖牝馬セール」よりは安いのですが、案の定というか、前年よりも平均価格は大幅に上がっています。上場頭数は秋(10月)が圧倒的に多くて200頭以上、冬(1月)は30~50数頭ですから、秋の繫殖牝馬セールがメインということです。冬季のセールは、「未供用馬や現役引退予定馬にも売買される機会を作る」という目的で2008年1月に初の試みとして開催され、「牝馬を買って走らせた後に、繁殖馬セールで売却する」という所有スタイルの確立、ひいては牝馬需要への拡大に繋がれば、と期待されています。 

一方、サラブレッドオークションで牝馬を購入し、繁殖に上げても同じことになります。サラブレッドオークションで落札する方が、競馬場で走らせることもでき、その後、タイミングが来たら繫殖牝馬に上げれば良いので、一粒で2回美味しいような気もします(笑)。繁殖牝馬として牧場に戻すとすれば、種付けシーズン(4、5月を中心として2月から7月の間)よりも前に牧場へと戻すことを考えると、年内で競走馬としての区切りをつける必要がありますね。競走馬として走らせると繁殖牝馬になるのが遅れるので悩ましいところですが、競走馬としても走る可能性と天秤に掛けつつ、走らせるのかそのまま繁殖牝馬にするのか選択することはできます。ただそうなると話は元に戻ってしまいますけどね。サラブレッドオークションか繫殖牝馬セールか、どちらかに決め打ちするのではなく、両方の選択肢を持っておくというのが今の僕にとっては現実的なのではないでしょうか。

(次回に続く→)

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