ジャスタウェイ - ドバイで末脚を爆発させた名馬。ジャスタウェイはジャスタウェイ以外の何ものでもない
Just a Way ~その道~

ジャスタウェイの馬名の意味を調べると、「その道」とある。英語の綴りでは「Just a Way」とのことで、これを生成AIに翻訳させると「一つの道」「一つの手段」と返ってくる。

私が、この「ジャスタウェイ」は人気漫画・アニメの「銀魂」に登場してくるキャラクター(?)と同名であることを知ったのは、ジャスタウェイがアーリントンカップを制した頃かと思われる。同時にジャスタウェイの馬主である大和屋暁氏がアニメ「銀魂」の構成作家であることを知り、ちょうどそのタイミングでアニメチャンネルで「銀魂」が再放送されるタイミングであったことから、私も「銀魂」を見始めたのである。

すっかりその作品にハマってしまった私はアニメを一気見し、ついにジャスタウェイが登場する「第32話 人生はベルトコンベアのように流れる」に到達する。その見た目は筒に爪楊枝のようなものが左右の腕のように取り付けられ、上に死んだ目をした無表情の顔がのせられたシンプルな形状ではあるが、そこで知ったのはジャスタウェイがとある反政府組織の工場で大量生産される爆弾ということだった。主要キャラクターでもなく、物語の行く末を大きく左右するような重要アイテムというわけでもないのだ。

ちなみにジャスタウェイの工場で働く労働者はそれが爆弾と知らされることなく秘密裏のもとで単純労働をさせられており、その工場長がしつこくその製造物のことを訊かれた際に答えたのが、
「ジャスタウェイはジャスタウェイ以外の何ものでもない! それ以上でもそれ以下でもない!」
である。なんとなく「Just a Way」に意味が通じるものがあるのは、気のせいだろうか。

そんな位置づけのキャラクター(?)だが、その愛らしい(?)風貌からいくつかグッズも登場しており、我が家の玄関ではジャスタウェイの貯金箱が飾られている。

我が家の玄関に飾られている「ジャスタウェイ」(筆者撮影)
ジャスタウェイ! この破壊力!

3歳春にアーリントンカップを制したジャスタウェイ。しかしNHKマイルカップと日本ダービーでは悔しい結果に終わる。休養を挟んで秋は毎日王冠で2着、天皇賞・秋で6着と健闘し、休養へ。4歳になっても秋の実績が評価されて中山金杯・京都記念・中日新聞杯で人気を集めるも裏切る結果となってしまう。

きっかけを掴んだのが、6月に得意の府中で行われるエプソムカップ。後方で脚を溜めて直線に向くと、最内から32.7(上がり1位)の末脚を繰り出し、クラレントに敗れるも2着に入る。そこで目覚めたのだろうか、夏の関屋記念でも後方で脚を溜め、広い直線で33.2(上がり1位)の脚を繰り出して2着となった。さらに毎日王冠では中団から競馬を進め、32.8(上がり1位)の末脚で2着。破れはしたものの相手はダービー馬エイシンフラッシュであり、着差も0.1差と、確実に力をつけていることを示した。

エプソムカップから左回りの直線の長いコースで末脚を磨き、4戦目は頂上決戦の天皇賞・秋。ここには牝馬三冠に加えてジャパンカップも制していたジェンティルドンナ、毎日王冠で先着を許したダービー馬かつ前年王者のエイシンフラッシュ、さらに重賞で逃げ切り圧勝を続けていたトウケイヘイローらの強敵が揃い、ジャスタウェイは5番人気の評価だった。しかし、蓋を開けてみればジャスタウェイはこれらの強敵を置き去りにしてしまったのだ。

中団でじっくりと進めたジャスタウェイは直線に向くと、真ん中から抜け出し横綱競馬を図ろうとするジェンティルドンナを早々にとらえ、さらにそこから末脚が爆発。4馬身差の圧勝劇だった。その時、テレビ中継の実況で叫ばれたのは「ジャスタウェイ! この破壊力!」であった。アナウンサーが「銀魂」のことを知っていたのかはわからないが、直近数走でジリジリと引火して溜まったエネルギーが爆発した瞬間だった。

この頃になると「銀魂」を知る競馬ファン(もしくは「銀魂」から競馬に入ったファン)にとってはいわゆる「ネタ馬」と呼ぶには失礼すぎるレベルの馬となり、ましてこの急成長ぶりから「ここまで強いとは…」と驚くばかりであった。当然、筆者もその一人だった。

天皇賞・秋を制したジャスタウェイと福永祐一騎手(筆者撮影)
Just a Way!! Dashed away!!

天皇賞・秋を制し5歳になったジャスタウェイはドバイデューティーフリーの前哨戦として中山記念から始動する。左回りの直線の長いコースでその才能を開花させたことから、中山で同じような強さを見せることができるのか──。筆者は半信半疑であったが、ジャスタウェイの爆発は一過性のものではないことをすぐに知ることになる。鞍上の騎乗停止により横山典弘騎手が代打騎乗していたジャスタウェイは、インの好位からの競馬を選択。外に出して前の馬を早めに交わすのかと思いきや、狭い内側1頭分をラチ沿いスレスレを縫うように抜け出すと、あとは一人旅だった。引火したジャスタウェイには右回りも直線の長さも道中のポジションも関係なく、ジャスタウェイはジャスタウェイ以外の何ものでもない存在となっていたのだ。

そして本番のドバイデューティーフリーを迎える。このレースでは南アフリカの無敗馬ウェルキンゲトリクス、アイルランドチャンピオンSの勝ち馬ザフューグ、BCフィリー&メアターフを含めGI連勝中のダンク、さらには日本からロゴタイプ・トウケイヘイローも参戦し、芝のマイルから中距離のナンバーワンを決めるにふさわしい舞台が整っていた。

当時、日本では海外馬券の発売が始まっていなかったため、夜中に日本馬を応援するのは純粋な観戦だった。才能を爆発させたジャスタウェイを押さえることができる馬は海外にもいないのではないか。当時、日本国内でも馬券が発売されていたとしたら、おそらく一番人気に支持されていただろう(各ブックメーカーで1〜2番人気に支持されたが、オッズは4.0倍~5.0倍程度だったという)。

ゲートを開くとやや後手を踏んでしまい、後方3番手からの競馬を強いられるも、その末脚を知っている福永祐一騎手は慌てることなく後方待機。レースは武豊騎手のトウケイヘイローが逃げるも競りかける馬はおらず馬群が密集した状態で進む。3コーナーから4コーナーにかけて、ジャスタウェイは外に出ると、徐々に進出。直線に向いたころには外から先行馬を射程圏内に入れ、残り300m付近で先頭に立つとあとは突き放すのみ。天皇賞・秋を再現するかのような「爆発力」を見せ、終わってみれば6馬身1/4差の大圧勝劇に終わった。

Just a Way!! Dashed away!!
(中略)
Just a Way is a big big winner!!

という実況は、英語に疎い自分でも聞き取れる実況で、あの「銀魂」の「ジャスタウェイ」が世界中に鳴り響いたことは感慨深いものがあった。

この圧勝は従来のレコードを2秒以上短縮する大レコードで、さらに父ハーツクライとともに親子でのドバイのG1制覇という日本の競馬ファンに嬉しい結果をもたらした。

そしてこのレースでのジャスタウェイの勝利はワールドベストレースホースランキングで130ポンドを獲得し、その年の日本調教馬初の世界1位に輝いた。「世界のジャスタウェイ」の誕生だったのだ。

銀の刃を振りかざし 魂の咆哮とともに突き進め

──また「銀魂」ネタかよという声が聞こえてきそうだが、実はこのフレーズはJRAの公式名馬PR企画である「名馬の肖像」で用いられたフレーズの一部である。縦読みすると「銀魂」と読める文字配置となっているので、ぜひ公式サイトからご覧いただきたい。

ジャスタウェイが帰国後初戦に選んだのは安田記念だった。不良馬場でその火力は当然封じられることになったのだが、「世界のジャスタウェイ」はそれ以上でもそれ以下でもなく、食い下がったグランプリボスをハナ差でねじ伏せる勝利で、並んでも強いことを証明した。

すでに王者と呼ばれる存在となっていたジャスタウェイだったが、秋も挑戦を続けた。凱旋門賞は日本馬初制覇への挑戦でもあったが、日本ダービー11着以来となる2400mへの挑戦でもあった。結果は8着に敗れたが、これで諦めることなく、次は天皇賞・秋でもマイルCSでもなくジャパンカップへ出走。ここではエピファネイアの大パフォーマンスに屈することになったが、2着に健闘し、距離を伸ばしても十分実力が発揮できることを証明した。

そしてラストランの有馬記念ではさらに100mの延長に挑戦。中山芝2500mでは不利と言われる8枠15番からのスタートは偶然にも同厩の盟友ゴールドシップのお隣だった。レースではもう1年現役を続けることになる3着ゴールドシップに続く4着に敗れたが、挑戦を続けたジャスタウェイにはファンから称賛の拍手が送られた。

ジャスタウェイは引退し、種牡馬入りをしてから重賞勝ち馬をコンスタントに輩出し続けている。ダノンザキッドがホープフルSを、テオレーマがJBCレディスクラシックを制覇するなど、芝・ダート問わず、また距離も幅広い活躍を見せる。

ドバイデューティーフリーは、その後、ドバイターフに名前を変えた。ジャスタウェイの後にもリアルスティール・ヴィブロス・アーモンドアイ・パンサラッサが制するなど、日本の強豪馬が活躍している。他にもドバイのレースは数々の日本馬が勝利をして記録にも記憶にも残るレースをみせてくれているが、ジャスタウェイほどの大爆発はなかなか見ない。

なぜなら、ジャスタウェイはジャスタウェイ以外の何ものでもない。それ以上でもそれ以下でもないからだ。

安田記念を制したジャスタウェイと柴田善臣騎手(筆者撮影)

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