[インタビュー]関東オークス2着馬ラブパイローなどを生産。トラストスリーファームの代表が語る、生産牧場としての想い。

関東オークス2着馬ラブパイローなどを生産した牧場、トラストスリーファーム。
今回は、生産牧場としての想い、そして生産馬への想いを、代表の岡崎さんに伺ってきた。
45歳で生産牧場を経営する競馬人の考える、生産牧場の在り方とは──。

良い意味で、記憶に残るエピソードのない馬。

生産馬であるラブパイロー。父パイロ、母父アドマイヤマックスという血統で、芝・ダートで勝利をあげる活躍をあげている。3月には芝の出世レース・ミモザ賞(1勝クラス)を制覇し、6月にはダートの交流重賞・関東オークスでも2着に粘る走りを披露。
生産馬の晴れ舞台の当日、岡崎さんはテレビの前で応援していたという。

「あの仔は頑張って逃げ粘るタイプかと思いますが、そのことを陣営の方々が深く理解しているから活躍できているんでしょう。持ってうまれた能力だけじゃなく、周りにも恵まれたと思います。山崎誠士騎手の乗り方も素晴らしかったですよね。南関の星スピーディキック(1番人気)に先着したことも褒めてあげたいです」

自身の牧場が送り出した牝馬の活躍に、声が弾む岡崎さん。
しかしラブパイローが牧場にいた頃のエピソードというと、あまり記憶に残っていないという。

「何事もなく無事に育ってくれた仔は、良い意味で記憶に残らないんですよね。ラブパイローも、そんな1頭でした。ただ、怖がりな感じの仔で、人には触らせないタイプではありましたね。テンションは高いけど、頭がいいからそれを人前では隠すんです。だから、人の前ではかなり良い仔にしてくれているけど、触られると我慢できなくなったりするところもある……そんな、可愛い仔でした」

「馬よりも鹿が多い」という放牧地

「ウチの生産馬でGⅠを獲りたい、みたいな目標はないんです」

動物が大好きだという岡崎さん。そうした気持ちは、仕事をやっていく上でプラスになるという。
そんな岡崎さんの仕事の信条は「うまれてきた仔たちを無事に競馬場へと送り出す」ために努力をするということ。裏を返せば、それ以降はその陣営の功績だと考えている。
「ベストとしてはひとつも怪我せず病気せずできればいいカッコで送り出せること」。それこそが、生産牧場としての仕事だという。

「ウチの生産馬でGⅠを獲りたい、みたいな目標はないんです。もし獲ってくれたとしても、それは馬の功績だと思っています。勝ってくれた馬がすごい。勝たせてくれた陣営の方々がすごい。『どうだ、この俺がやってやったぞ!』という感情は湧いてきません」

生産牧場は、経営を成り立たせるのがかなり難しい。
岡崎さんは「大小あれど、長年続けられている方々は尊敬している」と語る。そして先人たちと同じ方法を辿るだけでは、経営を続けるのは難しい。例え同じ方法ではなくとも、牧場を"会社"として成り立たせていく必要がある。ひとつの企業としてやっていくために、ロマンよりもビジネス的な判断に迫られることもあるという。シビアな世界だと言わざるを得ない。

「配合などは、買ってもらうための手段です。馬を育てる人間としては"無事に送り出す"のが大切だと考えています。丈夫で長持ちする馬たちは、環境に恵まれさえすれば一勝はできるはず。だから、そのチャンスを失わせないための努力は欠かせません。異変などになるべく早く察知をして、無事に送り出したいですね。馬たちは自分達はなにかできるわけではない。面倒を見てあげるのが僕らの仕事ですから。その上で結果を出してくれたらいいな、というスタンスです」

生産牧場として、職人的なスタイルを感じさせるトラストスリーファーム岡崎さん。
その生産馬たちが無事にデビューを迎え、陣営に恵まれ活躍する姿を多く見られるよう、ぜひ生産馬にご注目いただきたい。

写真:ブロコレさん(@heartscry_2001)、トラストスリーファーム

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