[インタビュー]17歳馬マイネルバルビゾンがいよいよ迎えるラストラン。高知・那俄性調教師と桜井厩務員の語る想い

高知で走る17歳馬マイネルバルビゾン。

馬齢や282戦23勝という戦績だけでも圧巻だが、17歳を迎えた2026年シーズンも15戦をこなし、メンバーあがり最速の3着をはじめ実績も残しているというのも凄まじい。
「バル爺」として親しまれる高知の人気馬だが、2026年9月27日、ついにラストランを迎える。

今回は、管理する那俄性調教師と桜井厩務員に、マイネルバルビゾンの底力について伺ってきた。

■精神的な強さが若さの秘訣

「精神面に強さを感じる馬だね。内面的な『芯の強さ』がないと、ここまで長くは活躍できない。闘争心がこの馬を支えているんだろうと思っているよ」

那俄性調教師は、マイネルバルビゾンの底力を「闘争心にあり」と分析する。確かに、中央でデビューし、佐賀や南関東競馬を経て高知に来た経緯を考えても、そういった環境の変化に対応できる精神面のタフさがあったことは想像に難くない。

「南関時代には何人か怪我させているらしい(苦笑) こちらに到着した時も気性が悪くてね。ただ、そういう気の強さは闘争心の裏返しだからね。大概の馬はどこかで闘争心を失って、それに伴って筋肉も落ちていって、引退となる。この馬は、ピークの時は500キロ近かったのと比べると今は480キロ前後と少し軽くなったけど、それでもまだハリもあって、現役を続けるに相応しい馬体を維持してきた。一時期は460キロくらいまで落ちていたんだけど、盛り返したんだから大したもんだよ」

マイネルバルビゾンの馬体を見ると、肌ツヤの良さも目立つ。これも筋肉のハリや内臓面の健康状態の良さによるものだが、それを支えるのが「闘争心」と「精神力」だというから舌を巻く。近づいてみると、確かに眼光の鋭さが、奥に秘める負けん気を伝えてきた。まじまじと見ていると「まだ噛みつくから気をつけて」と声がかかる。

「今年の6月にも、双眼鏡持って前を通ったら、急にこちらに向かって『ブワーッ!』って来た。『お前、ジジイのくせに元気やのう。今日はやる気になっとるな』って言ってたら、本当に3着に来た(笑)」

■飼葉桶もピカピカになる、見事な食欲

担当するのは、桜井厩務員。既に厩舎の長老のような存在となっていたマイネルバルビゾンだったが、担当してみてからの第一印象は「元気いっぱいな馬」とのことだった。

「食欲が旺盛で、人間には強く当たるタイプですね。例えば馬房に人が入る時だと、飼い葉を食べてる状態で入ったら食事優先で人間は無視するんですが、食事がない状態で入ると立ち上がって襲いに来たりします(苦笑) 毎日、凄く食い意地が張ってるので、元気の源になっていると思います」

そんな桜井厩務員は、担当したばかりの頃はマイネルバルビゾンの癖が分からず、何度か噛まれたという。しかし今は、噛まれるようなことはない。

「元気いっぱいではありますが、牝馬を見て興奮したり、他馬を見て喧嘩を売りに行ったりするようなことはありません。そういう意味では、癖がわかればそれほど苦労はしなかったですね」

17歳になっても、他の馬よりも食べるのが早く、飼葉桶もピカピカになるくらい舐め回しているというマイネルバルビゾン。その馬体をピカピカに磨き上げるのも、桜井厩務員の大切な仕事だ。

「プレッシャーはありますね。注目度が高い馬ですから。パドックに出た時の雰囲気も、やはり他の馬と違ってカメラを向けられることが多いです。しっかりと見た目もカッコ良くして、無事に最後のレースまでやり遂げられたらと思っています」

■引退後は雄大な自然に囲まれて余生を送る予定

那俄性調教師は、馬房の横に飾られた数々のお守りを眺めながら、目を細める。

「ファンもとても多い馬。お守りも送っていただけるし、毎月手紙を送ってくれる人もいる。まだまだ元気だから、もっとやれるとは思ってはいるんだけどね。ただ、最高齢勝利はメンバー次第なところもあるし、最高齢出走となれば19歳までやる必要がある。そうした中で、17歳(近藤翔月騎手)が17歳に乗る、という大目標も達成できた。それであれば、あとは余生を無事に過ごしてもらおうと思って引退を選んだんだよね」

マイネルバルビゾンは引退後、あしずりダディー牧場で余生を過ごすことになっている。

「そもそもこれくらいの馬齢になると、引き取り手が本当に少ない。5歳、6歳なら乗馬でも取ってくれるけど、今から乗馬としてリスタートは厳しいからね、どんどんお金がかかってしまう。元々は3,4年前から、知り合いの牧場に『引退後は頼んだぞ』とお願いしていたんだけど、そこもオーナーが高齢で先々が心配だった。あしずりダディー牧場は設備も良いし広々としているし、『来てもいいよ』と言ってくれた時はオーナーと一緒に喜んだよ」

長い現役生活を終えて、のんびりとした余生を送ることになるマイネルバルビゾン。那俄性調教師は「戦いの場から離れて気が抜けてしまうことなく、頑張って生きようという気持ちを保ってくれたらと思う。元気に長生きして欲しい」と語る。引退後には「よう頑張ったの。お疲れさん」と声をかけたいという。

写真:緒方きしん

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