巷で話題になっているゲームアプリ「ウマ娘 プリティーダービー」。
実際の競走馬をモデルにしたこのゲーム。登場するウマ娘たちの中に現役で走っている馬をモチーフとしたキャラクターはいませんが、子供、孫あるいは親戚にあたる馬が現役で駆けている例はたくさんあります。
そういった競走馬を「ウマ娘 プリティーダービー」から競馬を持った方々にも応援してもらいたい。そんな思いからこの「今も駆ける スターの血を引く者」では、ウマ娘にも登場するキャラクターのモデルとなった競走馬と血縁関係に当たる馬を、その週のビッグレースからピックアップして紹介していきたいと思います。
日曜日のメインレースは日本ダービーです。
日本ダービーとは
ホースマンなら誰もが憧れる最高峰のレース。
例えるなら高校球児にとっての甲子園、ゴルファーにとってのマスターズ、漫才師にとってのM-1グランプリとでも言いましょうか。ホースマンにとっては「特別な」レースであることは間違いありません。
ウマ娘に登場するキャラクターの中にもダービーとは縁の深い馬が多いです。
例えば、91年の日本ダービーでは、トウカイテイオーが父シンボリルドルフに続く「無敗での二冠制覇」を成し遂げています。また、93年の日本デービーでは「3強対決」を制したウイニングチケットがデビュー24年目のベテラン柴田政人騎手に「ダービージョッキー」の称号をプレゼントしています。
人馬ともにドラマの多い日本ダービー。
今回の記事では「ダービー馬の血を受け継ぐ馬」に注目してみました。
エフフォーリア
去年のコントレイルに続く無敗の二冠、そしてその先を狙うのが1枠1番エフフォーリア。
この馬の父エピファネイアの母方の祖父は、アニメ「ウマ娘 プリティーダービー」の第1期主役を務める98年のダービー馬スペシャルウィークです。
98年の日本ダービーはスペシャルウィーク・キングヘイロー・セイウンスカイの3強ムード。皐月賞が行われる中山コースから直線の長い東京コースに舞台が移るのは、逃げ脚のしぶといセイウンスカイより、末脚の鋭いスペシャルウィーク、キングヘイローに有利に働くのではないかと言うのが大方の見方でした。
しかし、レースはキングヘイローが逃げると言う意外な形で進みます。当時弱冠22歳でキングヘイローの手綱を握っていた福永祐一騎手はこの時のことを「レース中のことは最後の直線以外全く覚えていない」と語るように、意図した逃げではありませんでした。
結果キングヘイローは最後の直線入り口で早々に余力をなくし、入れ替わるようにセイウンスカイが先頭に立ちます。しかし、その瞬間、馬群を縫ってくる黒い影、ならぬ黒鹿毛、スペシャルウィークが上がってきます。だれもがセイウンスカイとスペシャルウィークの一騎打ちになると思ったでしょう。しかしそれもつかの間、フジテレビ三宅正治アナウンサーの「並ばない、並ばない、あっという間に交わした」と言う実況が示すように、一瞬のうちにセイウンスカイ以下後続を置き去りにします。最後は5馬身差をつける圧勝劇でスペシャルウィークがダービー馬の栄光をつかみ取りました。
当時鞍上の武豊騎手は29歳。
この時すでにリーディングジョッキーを8度獲得。
年間最多勝記録も更新し、大舞台でも20を超えるG1を勝利するなど「天才」の異名にふさわしい活躍をしていました。しかし、そんな武豊騎手でも「幼いころからの夢」ダービーだけは勝てておらず、一部には「武豊はダービーを勝てない」というジンクスめいた噂もされるようになっていました。
それもあってかこの時の武豊騎手は普段の冷静なイメージとはかけ離れた喜びように映りました。直線でムチを落としていたと言う逸話は有名ですが、それを知らずともゴール後の大きく派手なガッツポーズを見れば武豊騎手の興奮が伝わってくると思います。ダービーと言うのはそれくらい「誰もが獲りたい」レースなのです。
余談ですが、エフフォーリアは父エピファネイア、父の父シンボリクリスエス、母の父ハーツクライと言う血統なのですが、これらの馬は全てダービーでは2着に敗れています。父たちと同じ道をたどるのか、それとも無念を晴らすのか、そこも注目してみてみたいと思います。
タイムトゥヘヴン
NHKマイルカップからの転戦となるタイムトゥヘヴン。
彼の母方の祖父は99年のダービー馬アドマイヤベガです。
99年の日本ダービーは93年のウイニングチケット・ビワハヤヒデ・ナリタタイシンのいわゆる「BNW」の時と似た3強ムード。1番人気は皐月賞2着、安定した持続力のある末脚を誇るナリタトップロード、2番人気は皐月賞は6着に敗れたもののキレ味抜群のアドマイヤベガ、3番人気は皐月賞で大外一気を決めたテイエムオペラオーでした。
先ほど「『BNW』の時と似た3強ムード」と書きましたが、その時と決定的に違うのは「3強」に騎乗する騎手。「BNW」の時はウイニングチケットの柴田政人騎手、ビワハヤヒデの岡部幸雄騎手は何年にもわたり活躍してきたベテランの名手で、それにナリタタイシン騎乗の若き天才武豊騎手が挑むという構図でした。
一方、99年の日本ダービーは当時24歳の渡辺薫彦騎手と当時22歳の和田竜二騎手2人の若武者がそれぞれナリタトップロードとテイエムオペラオーに騎乗し、アドマイヤベガに乗る武豊騎手に挑むと言う構図でした。
レースはその3強がそれぞれ中団やや後方で脚を溜める展開。3コーナーから4コーナーにかけてテイエムオペラオーがまず動き、それにナリタトップロードも追随していく形。武豊騎手とアドマイヤベガはここでワンテンポ我慢して仕掛けていきます。
直線半ばあたりから勝負は外から伸びてきたこの3頭に絞られます。残り200mからは先頭に立ったテイエムオペラオーを残り100mでナリタトップロードが捕らえ、そのさらに外から伸びたアドマイヤベガがゴール直前で差し切ると言う手に汗握る展開でした。
和田騎手と渡辺騎手が価値を急ぐあまり早仕掛けになった……と言ってしまうにはあまりにも厳しすぎるタイミングの妙。仕掛けるタイミングを遅らせて、それでいてゴール前キッチリ差し切れるタイミングでゴーサインを出した武豊騎手のセンスが光る騎乗だと言えるのではないでしょうか。この時はまるで武豊騎手が「君たちにダービージョッキーの称号はまだ早いよ」と言っているようにも見えました。
勝ったアドマイヤベガは桜花賞とオークスを制した母ベガに続くクラシック制覇。この時のフジテレビ三宅正治アナウンサーの「母ベガの二冠達成から6年、またもその息子が輝く一等星に」と言う実況も印象的でした。
そしてこれは余談中の余談ですが、筆者はこの時ニシノフラワーの長男ニシノセイリュウと後の二冠馬ネオユニヴァースの兄チョウカイリョウガを推して悔しい思いをしていました。
最後に、この「日本ダービー」と言うレースはホースマンなら誰もが夢見る最高峰のレースです。なので、毎年1、2を争うような熱いレースが繰り広げられます。なので、ウマ娘から競馬に興味を持った方には絶対にリアルタイムで観戦してほしいです。それだけで競馬の魅力が十分伝わると思っています。そして、その時は「推し馬」を決めて観戦することをお勧めします。推す理由は何でも構いません。ウマ娘の好きなキャラクターとかかわりがあるとかで構いませんし、単純に名前で決めても良いと思います。実際、筆者が99年のダービーでチョウカイリョウガを推していたのも「らんま1/2」に出てくるキャラクター響良牙がお気に入りだったからです。
そんな軽い気持ちの推し馬が1頭いるだけで自分も「参加者」として楽しめる気がします。そしてこのコラムの筆者としてはこの文章がその「推し馬」を決める一助になれば幸いです。
その他の主なウマ娘関連馬
- バジオウ、ワンダフルタウン:父ルーラーシップの母がエアグルーヴ
- ラーゴム:父オルフェーヴルの母方の祖父がメジロマックイーン
- タイトルホルダー:父ドゥラメンテの母方の祖母がエアグルーヴ
- アドマイヤハダル:伯母にスイープトウショウ
開発:Cygames
ジャンル:育成シミュレーション
プラットフォーム:iOS/Android/PC
配信:日本
利用料金:無料(一部有料コンテンツあり)
URL:
・AppStore
https://apps.apple.com/jp/app/id1325457827
・GooglePlay
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.cygames.umamusume
・DMM GAMES
https://dmg.umamusume.jp
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