[地方レース回顧]浦和に輝く七つ星~2021年・さきたま杯~

私の地元でもある浦和競馬場。

浦和競馬場では、春にさきたま杯、秋にテレ玉杯オーバルスプリントと、2度の交流1400m戦が組まれています。コースを1周するレイアウトのため、スタートから1コーナーへの距離が短く、前半の位置取りで後方になると差し切るのが難しいので、逃げ先行馬がスピードを活かすレースが繰り広げられます。

今年は中央から昨年の覇者ノボバカラ、南部杯勝馬アルクトス、フェブラリーS2着のエアスピネル、かしわ記念勝馬ワイドファラオの実力馬4頭が挑みます。
迎え撃つ地方競馬からは地元小久保厩舎への移籍初戦となるハイランドピーク、浦和はめっぽう得意なベストマッチョ、浦和開催のJBCスプリントで3着の経験があるトロヴァオらが参戦。

実力伯仲の好メンバーでの対戦。
是非とも現地で観戦したいところでしたが、残念ながら無観客開催の為、テレビ埼玉の中継で応援しました。

ゲートの不具合の為、発送時刻が10分ほど遅れてのスタート。長めの輪乗りからノボバカラが動かず、目隠しをしてのゲートインとなりましたが、ほかの各馬は順調にゲートに収まりました。

レース概況

好発進を決めたエアスピネルとベストマッチョがハナ争いに行きますが、外枠からプレシャスエースが左海ジョッキーの出鞭に応えて逃げを打ちます。ワイドファラオが4番手、ノボバカラが5番手でコーナーに。アルクトスは無理に追いかけず6番手内、外にはトロヴァオが並走します。

トロヴァオから2馬身後ろにハイランドピーク、ザイディックメアが続き、スタートで躓いてしまったブレスジャーニーが後方3番手、ナリタスターワンがついていき、最後方にはメイショウオオゼキ。

向こう正面で縦長の隊列になり、軽快な逃げを打つプレシャスエースを各馬が追いかける展開となります。
3コーナーに入るところで先行各馬の手が動き始めますが、プレシャスエースもコーナー出口まで粘ります。

最後の直線、先に抜け出したベストマッチョを、内からエアスピネルが交わします。このまま振り切るかと思われましたが、外々を回して1完歩ずつ追い詰めたアルクトスがゴール直前で差し切りゴールイン。エアスピネルは半馬身差敗れ2着でした。

堅実に駆けたワイドファラオが3着、ベストマッチョは4着、後方から差してきたハイランドピークとトロヴァオがそのあとに続きましたが先行各馬には追い付けませんでした。

各馬短評

1着 アルクトス

1枠1番からのスタートということもあり、スタート直後に田辺ジョッキーが行き足を少しつける動作をしていましたが、逃げを打ったプレシャスエースに先行各馬が引っ張られたことで囲まれる心配がなくなるとじっくり構えてコーナーに入ることが出来ました。

540キロを超える雄大な馬格の持ち主で、切れ味よりも長くスピードを持続する競馬で勝負するタイプ。そのため小回りコースの内枠という点が心配でしたが、向こう正面に入った時には内を1頭分空けて外に持ち出していて、囲まれない位置で競馬が出来たことが勝因でしょう。

南部杯をレコードで制した時も馬3頭分は内を開けて自らの競馬をすることに徹していました。外を回してでも持ち前の持続力を活かし切るレースが合っているように見えます。乗り慣れた田辺ジョッキーが一番いい形にリードしていて、今後も自らのスタイルを貫いて勝負することになるでしょう。

南部杯以降は勝てないレースが続きましたが、秋の南部杯連覇、JBCスプリント制覇に向けて、良い再スタートを切ることができました。

2着 エアスピネル

この馬は2歳時の朝日杯FSの2着に始まり、3歳牡馬クラシックを皆勤、マイルチャンピオンシップや今年のフェブラリーSでの好走など、芝ダート条件不問で堅実に走ってくる、本当に強い馬です。

ダート初戦のプロキオンSやフェブラリーSで末脚を活かす乗り方をした鮫島克馬ジョッキーとは手があっているようで、勝負所まで脚を溜めて最後に一瞬の加速で勝負するのが最近のレーススタイルです。

今回はその一瞬の脚を逃げ馬プレシャスエースとベストマッチョの間を抜ける際に使ってしまい、最後まで詰めていたアルクトスを振り切るところまで持たなかったのが惜しまれます。

長きにわたり第一線で走り続けて、勝てないながら常に上位争いをしている姿からは衰えが見えません。今日もゲート入りを待つ間も気合十分に歩いていた姿を見ると、秋もどこかでG1に挑む姿が容易に想像がつきます。できれば現役の間にどこかで1つG1級競走を勝つところが見たいものです。

3着 ワイドファラオ

かしわ記念の回顧でも触れた通り、前後半フラットにマイペースを貫くタイプなので、末脚が届きにくい浦和競馬場は合っているかと思います。実際に2019年のテレ玉杯オーバルスプリントで2着していて、同じコースでの実績を持っての参戦でした。

最後の直線で外からアルクトスが追ってきた際にベストマッチョの真後ろに入ってしまったことで、一瞬追い出しが遅れてしまったので、ベストマッチョを交わしたところでレースが終わってしまいました。しかしスムーズに走れれば、上位2頭との着差はさらに詰められたことでしょう。

小回り1400の1周コースは差し追い込み脚質は届きにくいので、ワイドファラオにとってはベスト条件でしょう。秋にオーバルスプリントに参戦するようであれば、再び馬券内に入る走りを見せてくれるはずです。


4着 ベストマッチョ

中央でオープン勝利実績もあり、南関移籍後は同じコースでプラチナカップを勝利しています。
浦和競馬場1400mは1勝2着2回と相性の良いコースなので、地方勢では最も上位の4番人気に支持されました。

この最近は1200m戦でも逃げを打ってスピードを見せるレースを続けていますが、今回はプレシャスエースが前に行ったところで2番手の競馬を選択します。ところが、抜かされたことでスイッチが入ってしまい、ハイペースで逃げるプレシャスエースを追いかけてしまったことで、終いまであと一歩持ちませんでした。

終いが苦しくなったにせよ後続の末脚をしのいで4着入線しており、もうひと踏ん張りできるレース展開になれば着順を上げることが出来そうです。

5着 ハイランドピーク

2018年のエルムSを勝っている重賞馬で、地元浦和の小久保厩舎へ転厩した初戦となりました。
また、中央在籍時には1700-1800m戦を中心に使われていて、1400mは初めての距離でした。

馬場入り後の輪乗りを見た際に、大柄なアルクトスに比べて完歩も小さく小気味よく歩けていたので、ピッチ走法でコースは合いそうな印象です。

とはいえ、短距離戦の経験が無かったことも相まって、前半戦は追走に苦労している様子でした。ハイペースで前が苦しくなり差を詰めることが出来ましたが、このコースで後方から一気に差し切るのは至難の業です。

中央で重賞を勝って小久保厩舎に移籍した馬にセンチュリオンがいますが、こちらと同じ中長距離路線へ進むほうが末脚の活かせるレースが出来そうです。とはいえ、今回は中央上位の馬たちも交えての1戦でしたから、南関重賞でもう一度距離を試してからの判断でも遅くはなさそうですね。

レース総評

結果はJRA勢のワンツースリーとなりましたが、果敢に逃げを打ったプレシャスエースや中央勢に最後まで食らいついたベストマッチョが展開を引き締め、ゴール前まで見ごたえのあるレースでした。
直線を駆け抜ける馬の近くでレースを観戦できるので、本来であれば迫力の瞬間をこの目で見ることができたのですが、無観客開催が残念でなりません。

同じコースでテレ玉杯オーバルスプリントや南関重賞のプラチナカップ、ゴールドカップなどが開催されるので、コース巧者の場合は何度も活躍できるチャンスが巡ってきます。

そのチャンスが巡ってきたときに、人馬の活躍をこの目で間近で見れる日を今から心待ちにしております。

写真:三木俊幸

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