多数の路線から個性的な馬が勢揃い!
2022年マイルチャンピオンシップ
昨年のこのレースでグランアレグリアが引退してから、明確な主役がいなかったマイル界。
春の安田記念はソングラインが制しましたが1~3着は同タイムで、8着までが勝ち馬から0秒3差と大接戦となりました。しかもその安田記念を勝ったソングラインはマイルチャンピオンシップには出走せず。2着のシュネルマイスターの秋初戦は1200MのスプリンターズSで9着と、一気に混戦ムードが強まりました。
そこに安田記念には出走していなかったソダシや3歳勢が加わって、より実力伯仲となったマイル戦線。各馬の能力比較が難しく、どこから判断していいのか分かりにくいのですが、まずはこの秋に行われた前哨戦を振り返っていきましょう。
富士S
前半800Mが46秒0、後半800Mも46秒0というイーブンペース。道中外目の中団を進んでいたダノンスコーピオンとソウルラッシュが3~4コーナーで外々を回って上がっていき、残り200Mで先頭に立ちましたが、その後ろから伸びてきたセリフォスがさらに外から伸びてきてゴール前では3頭の競り合いになりました。しかし、最後は一番外から伸びてきたセリフォスが勝利。2着がソウルラッシュ、3着がダノンスコーピオンという結果になりました。
展開に紛れは無く、上位人気3頭がそのまま地力を見せて上位を占めたというレースでした。
ただ、勝ったセリフォスはいつもよりも後方の位置から差し切るというこれまでとは違う走りを見せました。しかし同馬は、賞金的にこの富士Sを勝たないとマイルCSに出られなかった可能性が高かったので、馬の仕上がりもかなり本気度が高かったですし、後方から力任せに差し切る競馬をしたので本番に向けて疲労が残っていないか、上積みがあるか……というところは気になります。
2,3着のソウルラッシュとダノンスコーピオンは本番に向けて余力を残した走りに感じました。このレースでは負けてしまいましたが、順調な臨戦過程と言えるでしょう。
毎日王冠
逃げたレッドベルオーブがペースを作って800M通過が46秒2、1000M通過が57秒9と速い流れ。そこからもペースが緩まず、残り600Mでさらにギアが上がって上り3ハロン34秒4という切れ比べになりました。
直線ではレイパパレとダノンザキッドが先に抜け出します。さらに外から伸びてきたジャスティンカフェが残り100Mで先頭に立とうとした時に、馬群の間を縫うようにサリオスが伸びてきてゴール前で差し切って勝利。1分44秒1というレコードタイムで勝利しました。
逃げたレッドベルオーブが飛ばし気味に逃げたといっても前半800M、1000M通過は富士Sとほぼ同じタイム。そこから200M走って上り3ハロン34秒4は富士Sの上り3ハロン34秒2に匹敵する切れを見せました。富士Sよりも200M余分に走っていながらもほぼ同じペースで進んで直線でも同様の切れを見せているのですから、いかにこのレースがレベルが高かったかが分かります(ちなみに7ハロン目の11秒8を除いた1600Mのタイムは1分32秒3で、富士Sのタイムは1分32秒0)。
その中で力を見せた上位3頭の強さは評価すべきですが、阪神芝1600Mに替わってどうか、そして本番に向けて疲労や上積みがあるかどうか、というところは気になるファンも多いでしょう。
府中牝馬S
ソダシが出走した府中牝馬Sについても簡単に触れましょう。
毎日王冠と同じ東京芝1800Mで行われ、ローザノワールが前半1000Mを57秒9と速めのペースで逃げました。
ソダシは道中3番手を追走し、早め先頭に立って押し切ろうとする競馬。しかし、内から伸びてきたイズジョーノキセキにゴール前で交わされて2着に敗れました。
前半1000M通過は毎日王冠と同じ57秒9で進み、残りの800Mを46秒6で走った展開はほぼ毎日王冠と同じ流れ。ただ、毎日王冠よりも上り4ハロンのタイムが0秒4だけ遅い分全体の走破時計も遅くなりました。単純比較すると、もし仮にソダシが毎日王冠に出走していたら5着相当の走りだったので、レースのレベル自体は毎日王冠の方が高いと言えるでしょう。
混戦を解く鍵は馬場にあり?
昨年と同じ馬場の推移なら……
ここまで、有力馬の前哨戦を紹介してきましたが、3つとも東京コースで、しかも通常よりも2秒は速い時計が出たんじゃないかと思えるような高速馬場でのレースでした。
気になるのは「阪神コースに替わってどうか?」という点。阪神芝1600Mは有利不利の少ないコースで、今回の出走メンバーは大逃げなどの極端な戦法をする馬はいないはずなので、各馬がそれぞれ得意の位置を取ってのガチンコ勝負となりそうです。それだけに、馬場状態がレースの大きなポイントになった先週のエリザベス女王杯と同様に、引き続き馬場状態には注目したいところです。
今の阪神開催は10月8日から年末まで続く開催で、開催初日からずっとAコースを使用して7週目となります。どうやら、長い開催を考慮して、かなり良好な馬場状態で開催をスタートさせているようです。開催が続くにつれて段々と時計がかかってきましたが、先週の土曜日までは馬場状態は良好で、まだまだ速い時計が出ていました。
ただ、日曜になって雨が降り、その中でエリザベス女王杯など芝のレースが6レース行われたことで一気に時計がかかる馬場になっています。
エリザベス女王杯でも勝ったジェラルディーナは直線でかなり外を回っていましたし、2着同着のライラックは一番外を回って追い込んできた半面、内目を通った馬は伸びませんでした。今回も外を回って差してくる馬が展開的に有利になる可能性が高いと言えます。
実際、昨年のマイルチャンピオンシップも勝ったグランアレグリアは一番外から、3着のダノンザキッドは外目から追い込んできた馬でした。
今週末も、Aコース7週目の痛んだ馬場に雨が降ればさらに渋った馬場になり、高速馬場だった東京コースの前哨戦と大きく条件が違ってきます。前哨戦でいいところのなかった馬が道悪適性をいかして逆転の激走を見せることもあるかもしれません。
いかがだったでしょうか?
実力馬が揃ってハイレベルな混戦となった今年のマイルチャンピオンシップ。G1馬の5頭だけではなく、他にもこのレースを勝つ可能性を秘める実力馬が各路線から集まりました。
有力馬それぞれにドラマがあり、そこに想いを馳せるのも競馬の楽しみと言えるでしょう。
もちろん予想の上でも非常に楽しみなレースであるのは間違いありません。この記事が皆様の参考になれば幸いです。
写真:かぼす