[日本ダービー]今年のダービーは"一強"なのか?無敗の皐月賞馬ソールオリエンスにスキルヴィングらが挑む。 - 重賞プレビュー

一強か、大混戦か。
第90回 日本ダービー

28日日曜の東京11Rは競馬の祭典・日本ダービーが行われます。全ての競馬関係者がこの舞台に立ち、勝つことを夢見る目標のレース。毎年、各陣営の強い想いと想いがぶつかって、いくつもの名場面を見せてきた一戦です。今年はどんなドラマが待っているのでしょうか?

2023年 日本ダービーの見どころ

今年のダービーの見どころは『ソールオリエンスの能力は本物か?』という点でしょう。
皐月賞では後方から3,4番手にポジションをとり、直線の入口ではかなり外を回っているのにまだ前との差があるという絶望的な位置。残り200Mでも一番外でようやく中団に上がってきたのですが、そこからの伸びが圧巻でした。特に残り100Mからの伸びは素晴らしく、1頭だけ次元の違う脚を見せて勝利しました。

東京コースに替わって『距離が延びてもこの驚異的な脚を使えるのかどうか?』『対抗できる馬がいるのか?が』最大の注目点と言えるでしょう。

日本ダービー 前哨戦を振り返る

皐月賞

1着:ソールオリエンス 2着:タスティエーラ 3着:ファントムシーフ 4着:メタルスピード 5着:ショウナンバシット 6着:シャザーン 7着:トップナイフ 9着:フリームファクシ 10着:べラジオオペラ 11着:グリューネグリーン 17着:ホウオウビスケッツ 

勝ちタイム:2分00秒6(重)晴れ

前半1000M:58秒5 後半1000M:1分02秒1 上り4ハロン:49秒7 3ハロン:37秒2

前半1000M通過が58秒5に対し、後半1000Mが1分02秒1と明らかに前半の方が速い流れ。
重馬場でもグラニットが逃げたが2番手以降もそれほど離れなかったので前半がかなり速くなり、後半1000Mが全て1ハロン12秒台という我慢比べのような消耗戦となりました。各馬の上りがかなりかかっていることから、馬場の悪化と前半のHペースでなし崩しに脚を使わされてしまい、先行馬がかなり苦しくなる展開だったと言えます。外を持続的に走っていたタスティエーラが抜け出して勝ちパターンに入ったところで、道中後方を進んで大外をぶん回したソールオリエンスの爆発的な追い込みが決まったレースでした。

青葉賞

1着:スキルヴィング 2着:ハーツコンチェルト

勝ちタイム:2分23秒9(良)

前半1000M:1分00秒4 上り4ハロン:46秒5 3ハロン:34秒8

前半1000Mは1分00秒4。開幕週の超高速馬場を考えればスローペースと言えます。
レースの中盤から徐々に速くなり、残り800Mからゴールまで1ハロン11秒台というロングスパート勝負。
長く良い脚を使えた馬が上位に来る展開で、上り3ハロン最速で同タイムの1,2着馬が3着以下を離しました。余力のあったスキルヴィングが地力の高さを見せつけました。

個人的な意見としては、皐月賞組の方がレベルそのものは高かったと感じています。ただ、重馬場で前半が速くなり直線で上りがかかる展開というのは、今回のダービーと真逆の展開になる可能性がありそうです。
ダービーでは青葉賞のような後半が速い展開になると思うので「皐月賞組がその展開や馬場に対応できるかどうか?」「青葉賞組は皐月賞組と比べて能力そのものの高さで勝負できるかどうか?」というところが焦点となりそうです。

ダービーで内枠が有利な理由とは?

近年のダービーを語る上で絶対的に外せないのが『内枠有利の傾向』です。
特に1番枠は好成績で、13年の勝ち馬キズナ、14年の勝ち馬ワンアンドオンリー、19年の勝ち馬ロジャーバローズと3頭のダービー馬をしています。21年でハナ差で2着だったエフフォーリアも1番枠でした。
この傾向がある理由として ①この時期は好天で気温もちょうど良いので芝の生育が良いこと ②ダービー週からCコース替わりになること などがあげられます。

今週末は絶好の馬場コンディションで行われると思います。Cコース替わりで内が有利な馬場傾向になる可能性が高く、今年も2番枠にスキルヴィング、5番枠にソールオリエンスと有力馬が入りました。今年も、内枠の有力馬を中心にレースが進んでいくのは間違いないでしょう。

日本ダービー 注目馬紹介

ソールオリエンス - 『忘れたものを取りに行く』。新たな怪物と共に2年前のリベンジを誓う横山武騎手。

まずは皐月賞を勝ったソールオリエンスです。
今年の3歳牡馬路線はとにかく主役不在の混戦でした。
皐月賞も中心となる馬が不在。そのなかで圧倒的なパフォーマンスを見せ、ソールオリエンスが一気に主役の座に躍り出ました。総合的な能力では間違いなく世代NO.1級と言って良いでしょう。

今回のダービーは不良馬場だった皐月賞とガラッと条件が変わりますが、その中で皐月賞と同じような走りができるか、という点がポイントになります。ただ、新馬戦では東京コースでの勝ちあがり。道中は出遅れ気味だったものの、盛り返して3,4番手の位置を取って残り400Mからは内の2着馬との一騎打ち、そして上り3ハロン33秒3の切れを見せて勝ち切りました。前目の位置を取って残り400Mで先頭に立つ立ち回りは高速馬場で前が止まりにくい今の東京の馬場にあった走りです。スタートさえ決まって位置を取ることができれば、先週のリバティアイランドのように直線で他馬を突き離すかもしれません。何より、早め先頭に立って抜け出す形は2年前のエフフォーリアと同じ立ち回り。あの時はシャフリヤールの強襲によってわずかに栄冠に届きませんでしたが、同じようなシチュエーションが巡ってきたと言えます。リベンジか、それとも再びダービーの厚き壁に阻まれるか──横山武騎手とソールオリエンスが今年のダービーの中心的存在なのは間違いありません。

スキルヴィング - ダービー最大のジンクス『青葉賞組はダービーを勝てない』を、今年こそ破れるか。

ソールオリエンスが皐月賞で見せたパフォーマンスは圧巻で、皐月賞組では逆転は難しいのでは、とも思える力の差を見せつけられました。逆転があるとするならソールオリエンスと未対戦の馬達ではないでしょうか。
その対抗1番手が、青葉賞を勝ったスキルヴィングです。

これまで4戦3勝2着1回という完璧な戦績で、4戦すべてが東京コース。非常にコース実績の高い馬で、3勝全て上がり最速という東京競馬場の申し子のような存在です。加えてルメール騎手鞍上となれば期待が集まるのも当然でしょう。

気になるのは『青葉賞組はダービーを勝てない』というジンクスがあることでしょうか。このジンクスが続いてきた理由として考えられるのは ①3歳牡馬にとって長めの距離である2400Mの距離であること ②ダービーへの出走権を取るため力を使い切ってしまい中3週のダービーでは余力が残っていないことが多く、中5週の皐月賞組と比べて体力的な面で厳しいいこと などが挙げられます。

ただ、スキルヴィングに関してはクラシックを使わず、3か月の休養明け緒戦が青葉賞。その青葉賞も少し余裕があっての勝利でした。木村調教師にとっても、勝算あっての臨戦過程というべきでしょう。

皐月賞ではこれまで京成杯からの馬が勝てていないというジンクスを覆してソールオリエンスが勝ちました。ならばあダービーでも同様に、ジンクスを覆してスキルヴィングが勝ってもおかしくありません。キタサンブラック産駒の木村厩舎の馬にルメール騎手が騎乗と、今の競馬の中心的存在が集まったこの陣営こそダービーを勝つ役者というべきではないでしょうか。

ファントムシーフ - 皐月賞の不運はここで幸運を呼び込むため。『持っている』武豊騎手が2強を逆転するか。

ダービーにおいては皐月賞の上位組の取捨判断が重要になります。
皐月賞で力は見せたものの、不利や展開が向かなかった馬がダービーで巻き返すというのはよくある話です。今年もその可能性が十分あると見ていいでしょう。

なかでも皐月賞3着のファントムシーフの巻き返しには期待したいです。
皐月賞では苦手な不良馬場で婿正面で落鉄のアクシデントがありながらもゴール前で脚を伸ばして3着に入ったのは、力がある証拠でしょう。共同通信杯勝ちがあるので東京コースに替わるのはプラスですし、前目の位置を取りつつ速い上りを使えるので今の東京コースにはピッタリと言えます。

14番枠に入ってしまったのが痛いですが、そこは現役でダービー最多の6勝を挙げている武豊騎手の手腕に期待したいですね。昨年騎乗したドウデュースも皐月賞では展開が向かず3着。ダービーではイクイノックスの方が中心視されていましたが、レースで見事に勝ち切りました。今年も同様にファントムシーフが勝ち切る可能性もあるでしょう。なにより武豊騎手にダービーを勝ってほしいと願うファンが多いですし、その声援があと一押しするかもしれません。

シャザーン - ダービー最多の3勝を挙げた友道厩舎。今年は岩田望騎手で4度目の頂点を狙う。

かつて『ダービーは運の強い馬が勝つ』と言われていた時代もありましたが、個人的には18頭の出走となった現代にはあまり当てはまらない話かと思っています。仮に私が『現代のダービーを勝つ馬はどんな馬か?』と問われると『ダービーの勝ち方を知っている者がいる陣営が勝つ』と答えるかもしれません。

昨年勝ったドウデュースは、ダービー騎手の武豊騎手とダービートレーナーの友道調教師がコンビを組みました。一昨年のシャフリヤールは福永騎手と藤原調教師が、20年のコントレイルは福永騎手、19年のロジャーバローズは角居調教師と、陣営にダービーを勝った経験がありました。

競馬の祭典である日本ダービーは毎年独特の雰囲気を持つ特別なレースです。そこで勝った経験があると無いとでは大きな差があるのは間違いありません。特に今年は出走馬に力の差がない混戦ですので、『人』により注目が集まることでしょう。そういう意味ではダービー3勝している友道厩舎は注目ですし、出走させるシャザーンはダービーでこそ期待したいです。

皐月賞では不利もあり6着になりましたが、元々ダービー向きと言われていた同馬。
東京向きの切れも持っていますので上位に食い込んでもおかしくありません。

べラジオオペラ - 今年も1番枠は要チェック。大駆けを狙う1頭。

高速馬場でCコース替わりという事で内枠有利と述べましたが、やはり今年も激走する馬がいるなら内枠の馬である可能性が高いと言えます。

先週の東京芝のレースでは、内で先行していた馬が直線でも粘っているシーンをよく見ました。
Cコース替わりでその傾向がより顕著に出てくるかもしれません。内枠から先行し、内、前をキープしつつ東京コースで速い上りを出している馬が、今の東京コースに合うでしょう。その傾向に合致するのが1番枠のべラジオオペラです。

2戦目のセントポーリア賞(東京芝1800M)では2番手を追走し直線では上り3ハロン33秒9の脚を使って押し切りました。3戦目でスプリングSを勝った実力馬でもあるので皐月賞では3番人気に推されましたが前半が速いペースに巻き込まれて10着と敗れてしまっていますが、こちらは馬場も合わなかったようで参考外と言えます。

綺麗な馬場でスタートを決めて先行できれば、馬場を味方にして残す可能性は十分にあるのではないでしょうか。

トップナイフ - 誰もが動けない重い空気のなかで立ち回る匠の技。横山典騎手の立ち回りを見よ!

今年のダービーはどの馬が先行してペースを作っていくのか、という点も注目です。

皐月賞では何が何でもハナにというグラニットがいましたが、ダービーではいません。前走で逃げたのはプリンシパルSを勝ったパクスオトマニカだけで、前走で先行した馬が少ないというメンバー構成です。また、差し脚が強烈なソールオリエンスとスキルヴィングがいるので、あまり先行激化しても2強にとって都合が良くなるだけですから先行激化して速い流れになるということはないでしょう。先行馬が多いものの、誰かに逃げてもらって3,4番手を取りたいと考えている陣営が多いのではないでしょうか。

そんな誰も逃げそうにないという、ある意味では意識の死角でうまく立ち回りそうなのが、トップナイフと横山典騎手です。ホープフルSでは出負けしたもののハナに立ち、後続がなかなか追い上げてこないという展開を味方にしてゴール前まで粘っての2着でした。直線での切れはありませんが、持続的に脚を使える馬ですので、4番枠に入ったのは絶好と言えます。好スタートを切って逃げ、ある程度後続には軽視されながら進んでいけば、伸びてこない後続を尻目に2,3着に粘ってしまうかもしれません。

独特の立ち回りをする横山典騎手。ダービーという大舞台でも存在感ある立ち回りを期待したいですね。

今年もダービーが近づくにつれて盛り上がってきました。今年の3歳牡馬は大混戦と言われているなかで皐月賞はソールオリエンスが勝ちましたが、この大舞台を勝った者こそが3歳世代の主役になるのは間違いありません。実力伯仲のメンバーですので、ゴール前の直線は各馬が鎬を削る激しいレースになることでしょう。どんな結果になるのか、どんなドラマが待ち受けているのか今から楽しみです!

この記事が皆さんの参考になれば幸いです。

写真:水面、かぼす

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