30日の日曜・京都メインは天皇賞春が行われます。
3年ぶりに行われる淀の3200M戦に、楽しみなメンバーが揃いました。
新しく生まれ変わった京都競馬場。伝統ある長距離戦の、歴史的な転換点を迎えたと言って良いかもしれません。まずは以前からの変更点と馬場の傾向、そして有力な前哨戦を振り返っていきましょう。
京都競馬場の変更点と、開幕週の馬場状態について。
京都競馬場は2年5か月の改修期間を経て、先週から開催が行われています。
ただ主な改修点はスタンドなどの施設面であり、コース形態は大きくは変わっていません。
主な変更点は下記の2点です。
- 外回りの4コーナーの角度が緩やかになって曲がりやすくなった
- 馬場の排水性を高めるための工事を行った
このことから、先週の開幕週は速い時計が出る超高速馬場で行われました。
先週のマイラーズカップの勝ちタイム1分31秒5は、京都で開催されたマイラーズカップ史上3番目に速いタイムでした。例年と比べて速い勝ちタイムが出る馬場であったのは間違いないでしょう。
天皇賞・春 前哨戦回顧
阪神大賞典 レース回顧
1着:ジャスティンパレス 2着:ボルドグフーシュ 3着:ブレークアップ 4着:アフリカンゴールド 5着:ディープボンド 6着:サンレイポケット 7着:アイアンバローズ 11着:メロディレーン
勝ちタイム 3分06秒1 (良)
前半1000M:1分04秒9、中盤1000M:1分03秒3、ラスト1000M:57秒9
前半1000M通過が1分04秒9、中盤1000Mのタイムが1分03秒3とかなりのスローペース。
ラスト1000Mが57秒9と、いわゆるスローからのヨーイドンの競馬でした。
逃げたアフリカンゴールドが4着に粘るなど、完全に前が有利な展開で、先行しつつ切れる脚を使ったジャスティンパレスとボルドグフーシュが1,2着に食い込みました。
勝ったジャスティンパレスは道中2,3番手を進んでいた事、直線で内からうまく捌いたことが大きかったと言えます。2着ボルドグフーシュは勝ち馬より後ろの位置の5,6番手で進んだので、最後は届かなかったと考えられます。3着のブレークアップは転厩初戦かつ初の3000M戦だったので条件は優位ではありせんでしたが、ゴール前で2着馬に鋭く迫った脚は長距離適性の高さを感じさせました。
日経賞 レース回顧
1着:タイトルホルダー 3着:ディアスティマ 9着:アスクビクターモア
勝ちタイム 2分36秒8 (不良) 曇り
前半1000M:1分02秒7 上り4ハロン:49秒2 3ハロン:36秒8
不良馬場で前半1000M通過1分02秒7は平均ペースと言えます。その後は少しペースが緩んで徐々にペースが上がっていく、持続力勝負となりました。
ペースを作って逃げていたタイトルホルダーがラスト400Mからの200Mを11秒9と脚を使って、最後は2着に8馬身差をつける完勝。かなり時計がかかる馬場でも持続的に脚を使いつつ、勝負どころで後続を突き離せる脚をためることができたました。59キロを背負っての圧勝だっただけに、よりタイトルホルダーの強さが際立ったレースでした。
2着以下の馬は勝ち馬についていくだけで精一杯で力の差がはっきり出てしまったと言えるでしょう。1番人気9着のアスクビクターモアはゲートが開く前に突進して出遅れて後方からの競馬に。馬場も展開も合わず参考外だったと言えますが、それでも、もう少し何とかしてほしかった印象です。
序盤の展開はほぼ確定?
自爆覚悟で競り合う馬はいるのか?
それでは簡単にレースを展開を考察していきましょう。
3番枠を引き当てたタイトルホルダーが逃げていくのはまず間違いないのではないでしょうか。問題はそのタイトルホルダーに誰が競りかけていくのか? どのくらい競りかけていくのか? という点です。
レースの際は水分を含んだ馬場である可能性が高いのですが、排水性の高い馬場ですので、馬場の表面上に水分はあっても重や不良の馬場になることはあまり考えられません。逆に先週のような超高速馬場でもない、適度に水分を含んだ少し速い時計が出る馬場での天皇賞春になるでしょう。
そうなると、日経賞の再現に近いペースで進んでいくでしょうし、誰も競りかけないのであれば、日経賞と同様の結果に終わるでしょう。
ですが今回はG1の舞台。メンバーも強力ですし、ライバルも本気です。展開がどうなるかは、意見が分かれるところでしょう。
天皇賞・春 注目馬紹介
タイトルホルダー - 仁川でも淀でも。現役最強ステイヤーの看板に偽りなし。
まずは昨年の覇者、タイトルホルダーです。昨年春は天皇賞春、宝塚記念を完勝。凱旋門賞後は体調が万全ではなかったようで有馬記念では9着でしたが、今年は昨年と同様に日経賞から再始動、59キロを背負っても2着を8馬身突き放す圧勝と、改めてこの馬の地力を再確認するレースになりました。
今年は京都コースになりますが、3番枠を引いてスタートを決められれば、良い位置を取って進められるでしょう。2200Mの宝塚記念でも勝っているので道中でスピード負けすることもないはずで、前走の反動による疲労などイレギュラーな要素が無ければ、昨年と同様にレースを進められるはず。非常に安定度の高い馬と言えます。
ボルドグフーシュ - 2,3着はもういらない。タフな馬場、展開でこそ底力を発揮する。
タイトルホルダーが持続的にペースを作って逃げていく展開になった場合、スタミナと底力を問われるタフな展開になります。そんな展開で期待したいのが、ボルドグフーシュです。
前走の阪神大賞典ではインを通っていた勝ち馬に対し、外から追いかけましたが伸び切れず2着。前半がスローの展開が向かなかったことは確かです。
位置取りがどうしても後方からになるので、今回も2,3着かもしれませんが、タイトルホルダーに競りかける馬が多数いれば結果的に展開が向いてくるかもしれません。重賞を5回使って2着3回、3着2回と実績も十分。
タイトルホルダーに勝てるかどうかは別にしても、安定度の高い馬と言えるでしょう。
ジャスティンパレス - 阪神大賞典の勢いそのままに。京都に替わって立ち回りの巧さを発揮したい。
有力な前哨戦である阪神大賞典を勝ったジャスティンパレスにも注目が集まります。阪神大賞典ではインの3番手を進み、直線で狭くなる場面がありましたが、うまく捌いて勝ち切りました。直線の入口では2着だったボルドグフーシュと内外で分かれていたものの、ほぼ同じ位置から競り勝ったのは底力の証明と言えるでしょう。ルメール騎手の捌きも見事でした。
今回もルメール騎手で臨めるのは大きいですし、1番枠に入ったので、逃げるタイトルホルダーの後ろのインにつけられる可能性が高いです。後ろから圧力をかけてゴールまで最短距離を通っていけば、前にいるだろうタイトルホルダーに迫れるのではないでしょうか。
ブレークアップ - 前走はボルドグフーシュとハナ差。2回目の長距離戦で上積みが大きい1頭。
阪神大賞典3着のブレークアップも注目です。同レースでは戦前から勝ったジャスティンパレスと2着のボルドグフーシュが注目されて、前評判通り1,2着だったわけですが、2着争いが3頭で際どい争いになっていたことを忘れてはいけません。
直線の入口でボルドグフーシュに先に前に出られてしまいましたが、同馬の後ろをついていき、ゴール前で鋭く伸びて際どい2着争いまで持ち込みました。この一戦はブレークアップにとって転厩初戦で、しかも初の3000M戦。かなり手探り状態だったのは確かですし、ゴール前の脚を見ればあと200Mあれば2着もあったかもしれないと思わせるに十分の走りでした。
ジャスティンパレスとボルドグフーシュに近い長距離適性と能力があると判断していいのではないでしょうか。
シルヴァーソニック - 昨年の無念を乗り越えて。地力をつけて再び天皇賞春へ!
阪神大賞典組・日経賞組以外の注目は、シルヴァーソニックです。昨年のこのレースではスタート直後に無念の落馬と残念な結果になってしまいました。
ただ、その後は長期休養明けのステイヤーズSを勝ち、今年初戦はレッドシーターフハンデキャップというサウジアラビアのG3の3000M戦を勝利しています。道中では3番手のインを進んで直線では早めに抜け出して勝利。このレースは格付けこそG3ですが、1着賞金は1億7千万を超えるという、賞金面からはかなり格の高いレースと言えます。そんなレースで2着に2馬身ほど抜け出す完勝ですから力をつけたと言っていいでしょう。
レッドシーターフハンデキャップ後は天皇賞春か、ドバイゴールドカップか、という選択肢があったようですが、陣営は天皇賞春を選択。自信を持ってこのレースに挑む1頭かもしれません。
昨年は無念の落馬となってしまいましたが、その時とは別馬と言っていいほどの実績を積んだと言っていいでしょう。3戦続けてレーン騎手の騎乗も心強いですし、長距離レースではオルフェーヴル産駒が結果を残しています。スタミナと底力が生きる展開になれば互角以上に戦えるのではないでしょうか。
ディアスティマ - 阪神大賞典組よりも日経賞組を重視するなら浮上する1頭。
前哨戦を比較するならば、道中2000M通過地点までスローで進んだ阪神大賞典よりも、不良馬場でもタイトルホルダーが持続的にペースを作った日経賞の方がレベルが高いと言えるかもしれません。また、天皇賞春でもタイトルホルダーが持続的にペースを作っていくということになれば、そこで結果を出した馬を高く評価すべきではないでしょうか。
タイトルホルダーが2着を8馬身離してしまったので手放しで評価するのは難しいかもしれませんが、昨年の天皇賞春も2着のディープボンドに7馬身差をつけている事を考えれば、今年の日経賞組とそれと遜色ないと言えます。
そのため、日経賞で道中2番手から粘り込んだディアスティマを再評価します。もちろん、タイトルホルダーを逆転できるまでかと言えばハードルが高いですが、タイトルホルダーが後続を突き離してしまった時に、日経賞と同様に後続がなし崩しに脚を使わされて、結果的に先行馬が有利になる場合もあるのではないでしょうか。
この他にも、昨年の菊花賞を勝ったアスクビクターモアがいるように、長距離適性の高い馬が揃った今年の天皇賞春。
昨年はタイトルホルダーが2着に7馬身差をつける圧勝。今年もレースの序盤は同様にタイトルホルダーが逃げていくことになると思いますが、どんな結果になるのでしょうか?
かつてオルフェーヴルもゴールドシップも敗れてしまったように、淀の3200Mは波乱の結果も見られます。歴史ある京都芝3200Mの舞台で行われる天皇賞春を楽しんでいきましょう。この記事が皆さんの参考になれば幸いです。
写真:水面、かぼす