ジャパンカップってどんなレース?

「世界に通用する強い馬作り」を目指すべく、外国から強豪馬を招待して日本のサラブレッドと競わせようという趣旨により、1981年に日本初の国際招待競走としてジャパンカップが創設されました。

1981年は北米とアジア地区から招待馬を選出し、アメリカ・カナダ・インド・トルコ(招待馬デルシムは来日後故障のため不参加)の4か国から計8頭を招待して行われ、アメリカ代表のメアジードーツが2分25秒3のJRAレコード(当時)で優勝。翌年からは招待範囲がヨーロッパ、オセアニアにも広げられ、参加国の多さから「世界一の競走」、「競馬のオリンピック」と評されることもありました。さらに1983年からは、地方競馬の所属馬(1頭)も招待対象に加えられました。

2014年にスイス発祥の世界大手時計メーカー・ロンジンとパートナーシップを締結。公式計時もロンジンがサポートしており、2020年現在の正式名称は「ジャパン・オータムインターナショナル ロンジン賞 第40回ジャパンカップ」となっています。

今年の見どころ

無敗の牝馬三冠に輝いたデアリングタクトが出走!

今年の桜花賞(芝1600m)、オークス(芝2400m)、秋華賞(芝2000m)と、「牝馬三冠」の全てのレースを制し、5戦5勝と無敗のデアリングタクト(牝3 栗東・杉山厩舎)。10月28日にジャパンカップ出走を表明。早いうちから今年のジャパンカップにおける注目の1頭となりました。

昨年11月のデビュー戦を勝った彼女の存在を、競馬ファンが強く意識するようになったのは、今年2月のエルフィンステークスです。後方待機でレースを進めたデアリングタクトは、馬場状態が悪かった当時の京都競馬場でラスト600mのタイムがメンバー中最速の1位34.0秒(2番目に速かった馬は34.9秒)を披露し圧勝。
一躍、桜花賞をはじめとする牝馬三冠戦線の主役に上りました。続く桜花賞は大雨が降る中で行われ、最後の直線に入る前では12番手でレースを進めましたが、直線一気の豪脚を見せ勝利。オークスでも最後の直線では13番手から追い込んでの快勝。63年ぶりに無敗で桜花賞・オークスを制した馬になりました。

秋は予定していたローズステークスには出走せずに秋華賞1本に向かったデアリングタクト。
パドック(レース前の馬を見せるところ)ではテンションが高くなり、スタートするまで興奮していました。しかし、3コーナーから徐々に進出し、最後の直線では5番手のポジションに付ける競馬。見事、日本競馬史上初の「無敗で牝馬三冠」を達成しました。

デアリングタクトにとって追い風なのは、過去に牝馬三冠を達成した馬たちがジャパンカップで結果を残している点でしょう。
2018年に牝馬三冠に輝いたアーモンドアイ、2012年に牝馬三冠に輝いたジェンティルドンナは次のレースにジャパンカップに照準を合わせ、いずれも勝っている実績があります。
また、コントレイルは3歳牡馬、アーモンドアイは4歳以上牝馬で55Kg、他の馬が57Kgの負担重量で出走するのに対してデアリングタクトは53Kgで出走できる点も追い風になります。

デアリングタクトが生まれた長谷川牧場は、母馬が8頭のみという小さな牧場です。
デアリングタクト以外の重賞勝ち馬は2010年の小倉大賞典を制したオースミスパークしかいません。小さな牧場からジャパンカップ制覇へ──これも競馬の醍醐味です。

無敗の牡馬三冠に輝いたコントレイルが出走!

今年の皐月賞(芝2000m)、日本ダービー(芝2400m)、菊花賞(芝3000m)と、「牡馬三冠」の全てのレースを制し、7戦7勝のコントレイル(牡3 栗東・矢作厩舎)。11月5日にジャパンカップへの参戦を表明すると、翌日のスポーツ新聞はコントレイルのジャパンカップ参戦を一面で報じるなど「史上初の無敗の牡馬三冠馬VS無敗の牝馬三冠馬」の直接対決に競馬ファンが騒然としました。

デビュー戦を勝ったコントレイルが競馬ファンの間に衝撃を与えたのは2戦目の東京スポーツ杯2歳ステークスです。レース前に騎乗したライアン・ムーア騎手が振り落とされ、左肩を強打。満足に追えない中でも、芝1800mのJRAレコードタイムとなる1分44秒5をマークするなどの圧勝を演じました。
続くホープフルステークス(G1・芝2000m)でも圧勝し、3歳になった今年は皐月賞、日本ダービーを制覇。この時から、父のディープインパクトと同じく無敗での牡馬三冠に注目点が集まりました。

菊花賞の前哨戦・神戸新聞杯も、ステッキを入れずに快勝。
単勝オッズが1.1倍と圧倒的支持を得て出走した菊花賞は終始アリストテレスにマークされ、苦しい競馬を強いられましたが、最後はクビ差を付けて勝利し、史上初の「親子2代による無敗の牡馬三冠」を達成しました。

菊花賞では皐月賞や日本ダービーで見せた圧倒的な強さは見られませんでしたが、母方の血統を見るとスピードに長けた血統なので、やはり芝3000mで行われた菊花賞は長かったのでしょう。
実際騎乗した福永祐一騎手も「やはり3000mは彼にとっては長い距離でした」とコメントを残しています。
芝3000mの距離は長かったものの勝ったと考えると、やはり3歳の牡馬ではトップの存在で間違いありません。

コントレイルにとって、菊花賞への臨戦過程とジャパンカップへの臨戦過程との大きな違いは「リラックスできる環境を作れた事」でしょう。
神戸新聞杯の後は栗東トレーニングセンターに残ってトレーニングをしていたこともあり、馬自身がリラックスできていなかった可能性はあります。
菊花賞の後は鳥取県にあります大山ヒルズに出されていましたから、今回は精神的にリフレッシュされた状態のはずです。

11月12日に栗東トレーニングセンターに戻ったコントレイル。管理する矢作芳人調教師も「少しでも嫌なところがあれば、すぐにでもやめる決断はするつもりです」と前置きした上で、ファンが臨んでいたデアリングタクトとの対決をオーナーサイドに相談し実現しました。

世界中のホースマンがコントレイルの動向に注目する中、ジャパンカップでどんなパフォーマンスを見せるのでしょうか?

芝G1競走8勝馬アーモンドアイが出走!

無敗のコントレイルとデアリングタクトの対決だけでも盛り上がりを見せていたジャパンCですが、11月12日に史上初の芝G1レース8勝を成し遂げたアーモンドアイ(牝5 美浦・国枝厩舎)が参戦・引退を表明した事で、その盛り上がりが一気に加速。

アーモンドアイのジャパンカップ参戦&引退のニュースはその日のNHKのニュースでも取り上げられるほどでした。

2018年の牝馬三冠を制し、続くジャパンカップでは芝2400mの世界レコード(新記録)である2分20秒6をマークしたアーモンドアイ。昨年はドバイターフ、天皇賞・秋を制し、歴史に名を刻む名馬の1頭となりました。今年もドバイターフから始動する予定でしたが、新型コロナウイルスのため開催自体が中止。5月のヴィクトリアマイルを制し、続く安田記念は2着と惜敗しましたが、前走の天皇賞・秋を制し、史上初の芝G1レース8勝目を挙げました。

ポイントとなるのは芝2400mという距離。一昨年のジャパンカップを制しましたが、昨年の有馬記念(芝2500m)では9着と大敗。父が短距離型のロードカナロアなので、一部では「年を重ねるごとに父の距離適性が前面に出てきたのではないか?」という見解もあります。

しかし、有馬記念は予定していた香港遠征を発熱のため回避し、2週間後の有馬記念に出てきたなど体調面が必ずしもベストではない状態だったことは間違いありません。

また、1周目の直線でファンが歓声を上げたことで、馬がエキサイトしてしまった面もあるでしょう。

その点を踏まえると、入場制限があり観客が少ない今の状況は、アーモンドアイのパフォーマンスが発揮しやすい環境と言えます。

騎乗するクリストフ・ルメール騎手はフランス人ですが、日本のレースに乗りたいがためにJRAの騎手免許を取った騎手です。フランス競馬時代にはフランスオークスを3勝するなど、競馬大国フランスでもトップの騎手でした。幾多の名馬に乗ったルメール騎手ですが、アーモンドアイが芝G1レース8勝目を挙げた天皇賞・秋の勝利騎手インタビューでは涙を抑えることができませんでした。ルメール騎手とアーモンドアイのコンビも、このジャパンカップで見納めとなります。しっかりと、目に焼きつけたいところです。

フランスからの白い刺客・ウェイトゥパリスが参戦!

昨年はジャパンカップ史上初となる「海外招待馬がゼロ」という中で行われました。今年も新型コロナウイルスの影響で「海外招待馬がゼロ」の可能性が高まっていましたが、フランスからウェイトゥパリス(牡7 フランス・A.マルチアリス厩舎)が参戦したことで、2年連続とはなりませんでした。

7歳と高齢ですが、今年になって充実したウェイトゥパリス。5月に行われたフランスのG2レース・シャンティ大賞(芝2500m)で2度目の重賞タイトルを獲得すると、続く6月に行われたフランスのG1レース・ガネー賞(芝2100m)では後に凱旋門賞を制するソットサスと僅差の2着に入りました。その後、フランスのG1レース・サンクルー大賞(芝2400m)では前年のドバイシーマクラシックを制したオールドペルシアンらを下し、初のG1タイトルを獲得。その後はフランスのG2レース・フォア賞5着、前走の凱旋門賞ではソットサスの9着に終わっています。

サンクルー大賞のレースぶりを見ますと、スタートのダッシュがすこし苦手なタイプでしょう。しかし、勝負所で加速するタイプで、直線が500mあるサンクルー競馬場の坂で加速する辺り、東京競馬場に向いている馬だと思います。逆に不良馬場で行われた凱旋門賞ではレースにならなかった点を見ると、良馬場向きの馬なのでしょう。

血統を見ると、父のシャンゼリゼは北米の芝G1レースで3勝を挙げている馬です。日本でも活躍しているデインヒルの子供で、兄妹にはヨーロッパで数多くの活躍馬を送り出しているダンジリなどがいます。

母の父はコジーン。過去の産駒には安田記念を制したアドマイヤコジーンやオークスを制したローブデコルテがいるなど、日本の馬場に適応した実績のある種牡馬です。

主戦のピエールシャルル・ブドー騎手は新型コロナウイルスの影響で来日ができず、代わって日本でJRA騎手免許を取っているミルコ・デムーロ騎手が騎乗します。ただ、ウェイトゥパリスには弟のクリスチャン・デムーロ騎手が騎乗していたので、ウェイトゥパリスの癖などを伝えているかもしれません。

白い馬体のウェイトゥパリスが直線で躍動する姿が見られるかもしれません。

キセキが勇退する角居調教師に勝利をプレゼントするか?

一昨年、このレースで2着のキセキ(牡6 栗東・角居厩舎)。レースの展開を占う上でも、注目の馬です。

2017年の菊花賞以来、勝ち星が遠ざかっているキセキですが、2018年のジャパンカップ、今年の宝塚記念2着などG1レースでは安定した成績を収めています。スタートで大きく出遅れる事がある馬ですが、ここ最近のレースを見ると、スタート時のダッシュは五分に出ていますので、そこまで不安視する必要はなさそうです。

天皇賞・秋で騎乗した武豊騎手が「馬場状態が悪く、消耗戦になればこの馬には向いていますね」と語っている様に、一昨年のジャパンカップで見せた「自分のペースで逃げる競馬」を、京都大賞典以来のコンビを組む浜中俊騎手と目指します。

管理する角居勝彦調教師は、来年の2月でもって調教師生活にピリオドを打ちます。デルタブルースでメルボルンカップを、ハットトリックで香港マイルを、シーザリオ(サートゥルナーリアの母)でアメリカンオークス(現在は廃止)を、ヴィクトワールピサでドバイワールドカップを制するなど、海外の競馬界にもその名を刻んだ調教師です。

角居調教師にとって2014年のエピファネイア以来となるジャパンカップ制覇に向け、打倒コントレイル・デアリングタクト・アーモンドアイを意識して最後のジャパンカップに挑みます。

ワールドプレミア、グローリーヴェイズなど、実力派が多数出走!

昨年の菊花賞を制したワールドプレミア(牡4 栗東・友道厩舎)。昨年の有馬記念3着以来の出走となります。春は体調不良のため休養をしましたが、ジャパンカップ歴代勝利騎手1位の武豊騎手を背に、一発を狙います。

また、昨年の香港ヴァーズを制したグローリーヴェイズ(牡5 美浦・尾関厩舎)。こちらは京都大賞典を制し、勢いに乗ってジャパンカップに参戦します。芝2400m戦では4戦3勝と相性の良い舞台。川田将雅騎手とのコンビで挑みます。

その他にも昨年のジャパンカップ2着馬のカレンブーケドール(牝4 美浦・国枝厩舎)、2016年の日本ダービーを制したマカヒキ(牡7 栗東・友道厩舎)をはじめ「打倒デアリングタクト・コントレイル・アーモンドアイ」を狙う馬は少なくありません。

勝つのはデアリングタクトか、コントレイルか、アーモンドアイか──はたまた、波乱が起きるのか。

第40回ジャパンカップは日曜日の15時40分スタートです。テレビではフジテレビの「みんなのKEIBA」、関西テレビの「競馬BEAT」、更にNHKのBS1チャンネルでも放送されます。また、競馬専門チャンネルグリーンチャンネルは9時から17時までの間、無料で視聴できます。ご自宅等で是非ご覧ください。

なお、ジャパンカップは通常のG1レースと異なり、「東京競馬第12レース」ですので、ご注意ください。また、阪神競馬場で行われるG3レース・京阪杯も「阪神競馬第12レース」です。京阪杯の発走は16時15分です。そちらもご留意を。

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