[種牡馬・血統紹介]日本で血の『再始動』を目指す、アメリカンペイトリオット

2018年から日本のダーレー・ジャパン スタリオンコンプレックスで種牡馬入りしているアメリカンペイトリオット。
ダート競馬の聖地・アメリカで産まれ、競走馬として活躍した彼のキャリアは、砂の上ではなく芝の上で積み重ねられた。

日本でも今後ますますその活躍が期待される、偉大なるDanzig系の後継種牡馬・アメリカンペイトリオット。

彼の現役時代の活躍ぶりとその血統から、今後日本でどのような活躍をしていくのかを考えていきたい。

アメリカンペイトリオット
- 2013年 アメリカ産まれ

血統な背景

父のウォーフロントはアメリカのG2を勝った競走馬。
G1では2度の2着が最高で、残念ながらビッグタイトルを取れずに競走生活を終えている。
そんなウォーフロントだが種牡馬としては予想外とも言える活躍ぶりを示し、「Danzig晩年の傑作」とまで言われるような種牡馬としての評価を得た。

後継種牡馬であるザファクター(2008年産)や、デクラレーションオブウォー(2009年産)などが日本にも輸入されているように、日本でも注目の集まる血統である。

2013年産駒のエアフォースブルー・アメリカンペイトリオットは芝のG1勝ち馬となっているし、最近ではアメリカのダートG1を制している2016年産のオマハビーチやウォーオブウィルなども登場。
芝・ダート両方の適性を産駒に伝える可能性を持つ、非常にDanzig系らしい種牡馬がウォーフロントであり、アメリカンペイトリオットはその後継種牡馬としての活躍が期待される。

現役時代

そんな父から芝の才能を受け継いだアメリカンペイトリオットは、3歳の1月にデビューすると、その年のケントS(G3)に出走、重賞初制覇をデラウェアパーク競馬場の芝1800mのトラックレコード(1分47秒19)で飾った。

その後セクレタリアトS(G1 芝1800m)で3着入線し、3歳時を9戦3勝のキャリアで終える。

4歳時はキーンランド競馬場のメーカーズ46マイルステークス(G1 芝1600m)に出走すると、直線で後方から猛然と追い込み、先行馬をまとめて差し切って初のG1タイトルを手にした。古馬として、このG1制覇を含む5戦2勝の実績を上げて、競走生活を引退。

通算成績は14戦5勝(うち重賞2勝)という競走成績だった。

種牡馬としてのアメリカンペイトリオット

活躍を広げる父の後継種牡馬として、日本での活躍が期待されるアメリカンペイトリオット。

彼の血統的な特徴を、いくつかピックアップしていく。

●勢いに乗る父、ウォーフロントの血

まず、なんといっても父がDanzig系の後継種牡馬で成功しているウォーフロントである点。

上記したように、芝ダート両方の活躍の可能性を秘めている血統だろう。
配合相手の牝馬によって、様々な適性や特徴を持った産駒を送り出せるタイプと予想される。

●全姉弟クロスが引き出す芝適性

父が持つ「ムーングリッター」と母の持つ「リローンチ」の5×4の全姉弟クロスを持っている点も、要注目である。

リローンチもアメリカンペイトリオットと同じくアメリカの芝で活躍した馬で、この血の増幅がアメリカンペイトリオットの芝適性を引き出した要因の一つだろう。

リローンチの名前は「Relaunch=再始動」という意味。
まさに芝の才能がこのクロスで再始動したということになる。

●シンボリクリスエスとの血統的繋がり

アメリカンペイトリオットの3代母トライセニア(妹)が、シンボリクリスエスの母ティーケイ(姉)と全姉妹の関係である点も、日本で種牡馬をやる上では見逃せないポイントだ。(父:ゴールドメリディアン、母:トライアルゴの全姉妹)

アメリカンペイトリオットの母はシアトルスルー5×5の他に、アグネスタキオンの母父父でもあるボールドルーラー産駒ラジャババの血を内包していて、ボールドルーラーの血が濃い繁殖牝馬である。

シンボリクリスエスも芝ダート兼用の種牡馬で、芝では母方の持つシアトルスルーの影響からか一本調子でキレ負けしてしまう傾向があったので、アメリカンペイトリオットもそういった産駒が多く出る可能性はあるだろう。

●遂に日本でも出るか、Danzig系の大物種牡馬

これまで日本での「Danzig系」といえば、

  • チーフズクラウン系(マイネルレコルト、マイネルキッツ、ビービーガルダンなど)
  • グリーンデザート系(シンコウフォレスト、ベーカバドなど)
  • アジュディケーティング系(アジュディミツオー、ワイドバッハなど)

といった種牡馬・競走馬が活躍してきたものの、どの系統もその勢力を拡大・定着するまでには至っていないのが現状。ただし、近年ではデインヒル系から芝適性を強く受け継いだ「ハービンジャー」が出てきて、日本でも多くの産駒がG1戦線でも活躍している。
ここにアメリカンペイトリオットが種牡馬として活躍し、新たな系統として「ウォーフロント系」の地位を確立できれば、まだまだサンデーサイレンス系やキングカメハメハ系が主流となっている今の日本の競馬界にとっても、その意義は非常に大きい。

血統的に日本で活躍できる可能性を大いに秘めているアメリカンペイトリオット。
彼の産駒たちが日本の競馬でその才能を「再始動」できるだろうか?

写真:s.taka

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