本日は皐月賞。
各路線を勝ち抜いてきた精鋭16頭が集まりました。
今年も各路線から、多様なメンバーが頂点を狙います。
思い起こせば10年前にも、重賞未勝利から前哨戦・スプリングSを勝利、そのまま皐月賞を制した名馬がいました。後の三冠馬、ご存知オルフェーヴルです。
オルフェーヴルと、オルフェーヴル産駒
ここ最近、オルフェーヴル産駒が評価をあげています。
ちょっと安定感を欠くところはありますが、芝の長いところだけでなくダートの短距離でも重賞馬を輩出するなど、結果を出していますね。歳を重ねて強くなるイメージが強いオルフェーヴルですが、今年はラーゴムがきさらぎ賞を勝ちました。ラーゴムはきさらぎ賞から直行で、皐月賞に挑戦する予定です。
オルフェーヴル自身のクラシック出走はスプリングSの勝利まで危うかったことを考えると、やはり早いうちに重賞を勝っておくことに越したことはないのでしょう。オルフェーヴル産駒にも2歳でGⅠを勝ったラッキーライラックがいるのだから驚くほどのことでもないと言われてしまいそうですが、牡馬でも早い時期からクラシックを狙える重賞馬が出てきたのは、ファンにとって喜ばしいことです。
オルフェーヴルの初年度産駒は今年で6歳。
時の流れは早いもので、彼が三冠馬となったのは10年も前のことです。
私は競馬を彼から知り、それ以来彼のことをずっと追いかけ続け、その間に中学生だったのがいつの間にか大学生になって……競馬のことばかり考えたまま、とうとう大学も6年生(獣医学科)を迎えてしまいました。
私は、オルフェーヴルが三冠馬となってからの競馬ファンです。
彼の1回目の凱旋門賞やジェンティルドンナと馬体をぶつけ合ったジャパンカップからの記憶はあるのですが、いつから競馬を見始めたのかということに関する明確な記憶はありません。
それでも、オルフェーヴルのファンですから、スプリングSが彼にとって大きな転機となったことは、理解しています。このスプリングSでの勝利がなければ(正確には優先出走権を確保しなければ)、彼はクラシックを戦い抜くことが困難になり、三冠も達成できなかったかもしれないのですから。
オルフェーヴルの「型」が確立した一戦
本稿を執筆するにあたり、私はスプリングSだけでなく、彼が出走したすべてのレースに目を通してみました。
2011年は東日本を襲った震災によって日本中が暗いムードに包まれ、競馬開催にも影響が及びました。それでも競馬は止まらず走り続けました。ファンの心を奮い立たせるため、そして競馬の歴史を紡ぐために。
そして、オルフェーヴルたちクラシックを目指す3歳馬18頭が、スプリングSの開催される阪神競馬場に集結しました。レース終盤、最後の直線で大外から、あるいは馬群を割って(直線で内ラチの方にささりながら)前にいる馬をぶち抜いていくオルフェーヴル。スプリングSは、彼のスタイルが確立したと言えるターニングポイントだと言ってよいでしょう。彼は素質がありながらも新馬戦以降は勝ちきれませんでした。しかし、自らの力をこの一戦で証明し、クラシックへの道を切り開いたのです。
レースを改めて見返しての感想ですが、彼が三冠馬になるという結果を知っていてもなお、次走のことが不安になるような走りでもありました。上がり最速とはいえ斜行しながら最後の直線で追い抜いていくのを見ると、その当時、もし私が馬券を買う目線でこのレースを見ていたとしたら「今回は展開が向いただけ」という、いかにも常識的な評価を下してしたことでしょう。
しかし、京王杯の頃はもっとかかっていたのが、シンザン記念やきさらぎ賞では少しずつマシになってきて、そのときはとらえ切れていなかった先行馬をスプリングSではきっちりと差し切っていることは評価できます。陣営の努力が実ったレースだったのでしょう。
まあ、教育が実ったと言っても……後になっても反旗を翻し続けているのは彼らしいところですが(苦笑)。
血脈と人の思いが積もり、開花する
忘れてはならないことですが、馬は成長します。特に3歳の若駒であれば、尚更です。
そう考えても、やっぱり3歳のオルフェーヴルは成長速度が異常だったように思います。その成長速度を保てたから三冠馬になることができ、さらには衰えるどころかよりいっそう成長することによって引退まで高いパフォーマンスを保ち続けました。
その成長力の源泉はどこにあるのでしょうか?
この問いの解として、多くの人が真っ先に思い至るのは血統でしょう。
ステイゴールド・メジロマックイーンという、もはや説明不要の"ステマ配合"に加え、その産駒が「三度変わる」と評されたノーザンテーストの4×3のクロス……。そういった成長力に定評のある血が連なり、夢を語るにも過去を語るにも楽しみな血が凝縮されている血統──これがオルフェーヴルに底知れぬ力を与えている一因に違いありません。
しかし、オルフェーヴルの成長は、血によるものだけではないはずです。
オルフェーヴルに限らず、その馬に力を与えてくれるのは何も"受け継いできた血脈"ばかりではないのですから。
特に重要なのが人の力──つまり馬を育んできた牧場や厩舎、そして見出した馬主などの尽力でしょう。そもそも血統というものも、人の熱意なくして続かないものです。ある人は名馬を名種牡馬としてその遺伝子を拡散させようとし、またある人は復活の時を期して細い糸を切れないように長続きさせようとする……こうした思いに呼応した名馬たちが競馬の歴史を紡ぐのです。
オルフェーヴルもまた、時に反抗的な態度をとりつつも、真剣な人の思いに応える走りで感動を与えてきました。そして、スプリングSは初めて重要な場面で人々の期待に応えた一戦であり、つまりこれは彼が名馬としての第一歩を踏み出したレースなのです。
そんなロマンに思いを馳せながら、今年の出走馬たちの前哨戦を見返してみるのはいかがでしょうか?
課題を克服し、名馬への第一歩を歩み始めている馬が、ここにいるかもしれないのですから。
皐月賞のトライアル競走勝ち馬たち
共同通信杯や京成杯など、皐月賞目指す馬が出走するレースは多くあります。
しかし「トライアル競走」に指定されているのは、弥生賞・スプリングS・若葉Sの3レースのみ。
今年の勝ち馬は、下記の通りです。
- 弥生賞:タイトルホルダー
- スプリングS:ヴィクティファルス
- 若葉S:アドマイヤハダル
果たして、彼らの躍進はあるのでしょうか?
皐月賞の発走は、本日15:40です。