ルーツは1954年にまで遡る、歴史ある重賞・日本テレビ盃。
8月のNTV盃から、施行条件や時期、さらには名前も変更しながらも、数々の名馬を世に送り出してきた一戦です。スマートファルコンやクリソライト、クリソベリルと、近年の勝ち馬は中央馬が目立ちますが、今回はそうした中央の強豪を相手に勝利を収めた地方の名馬たちをご紹介していきます。
フリオーソ(2010年勝ち馬)
父ブライアンズタイム
母ファーザ(母父Mr. Prospector)
2021年現在、地方馬勝利として最後の勝ち馬であるフリオーソ。
東京ダービー馬・ヒカリオーソなど種牡馬としても活躍を収めている名馬です。
2006年のデビューから2012年まで、ダート戦線で中央馬相手に地方の1番手として長く活躍した本馬。ヴァーミリアン、カネヒキリ、エスポワールシチーなど猛者の中央馬相手の重賞勝利数9、2着12回は立派の一言です。
2009年のダイオライト記念、以来1年3ヶ月ぶりの勝利となった帝王賞から、秋の初戦に本レースを選択。相手は後のドバイワールドカップ2着馬トランセンド、このレース以降連勝していったスマートファルコンなど、素質馬が勢揃いしていました。
レースはトランセンドを行かせて終始2番手を追走。
向こう正面から徐々に差を詰めいていき、最終コーナーで並びかけると直線では上り最速の末脚で一気にトランセンド、スマートファルコンを置き去りにしてゴールイン。
まさに『強い勝ち方』で、能力もさることながらダート界が激戦の時代に中央馬と切磋琢磨しながら一戦級として活躍したフリオーソの真骨頂ともいえるレースぶりでした。
また地方から、フリオーソのバトンを受け取る名馬の登場を期待したいところです。
サプライズパワー(2000年勝ち馬)
父ミュージックタイム
母シノブモチズリ(母父シンザン)
それぞれの馬において、時代の巡り合わせの「良し悪し」は、多かれ少なかれあると思いますが、本馬は「悪い」部類に入るかもしれません。それほど、地方馬の層が厚い時代でした。その時代に、サプライズパワーは東京ダービー馬いう肩書を背負いながら、彼らに立ち向かっていきました。
地方ではメイセイオペラ、アブクマポーロの2大巨頭を筆頭にコンサートボーイ、インテリパワーなど名馬がズラリ。中央馬を見ても砂の女王ファストフレンドなどがいる、非常に厳しい時代でした。世代No.1でも古馬たちのメンツ次第で一気に壁を超えるか茨の道を進んでいくことになるか……というのは、よくある話でしょう。サプライズパワーは、間違いなく茨の道を歩みました。
南関クラシックでは、宿敵のキャニオンロマンが故障で離脱したことも追い風となり2冠を達成。古馬になってからも、分厚いダート界の壁が何度も立ち塞がりつつ、2000年の日本テレビ盃までに地方重賞を5勝重ねます。
そして日本テレビ盃では、エリザベス女王杯勝ち馬サンドピアリスを母にもつタマモストロングなどを相手に逃げ切り勝利。交流重賞における、最初で最後の勝利を掴み取ったのでした。
競馬で「タラレバ」は使いたくないものですが、この馬はまさに「時代が違えば……」と言いたくなるような馬でしょう。
マキバスナイパー(2002年勝ち馬)
父ペキンリュウエン
母スコールディング(母父Raise a Native)
前述のサプライズパワーの1つ年下にあたるマキバスナイパー。
デビュー間もない頃からコンスタントに使われながら、徐々に力をつけていき、東京記念を制覇します。
さらには次走の東京大賞典で3着、笠松の交流重賞オグリキャップ記念でも2着と、存在感を見せつけます。
さらにここからもう一段力をつけ浦和記念で交流重賞を制覇すると、翌年の夏には名手デザーモ騎手を迎えての帝王賞まで制覇しました。翌年には、2002年の日本テレビ盃で、帝王賞以来の交流重賞勝ちをおさめています。
色々な巡り合わせもある中でG 1馬になった本馬。力があることは勿論ですが、サプライズパワーとは逆に、巡り合わせの末に掴んだ勲章でもあるでしょう。
アブクマポーロ(1998年勝ち馬)
父クリスタルグリッターズ
母バンシユーウエー(母父ペール
最後はやはり、この馬しかいないでしょう。
未だに地方ダート最強馬にも入るであろうアブクマポーロ。
1997年には果敢に中央に挑戦しウインターカップを勝利するなど、充実期に入ります。翌年はまさに圧勝につぐ圧勝。日本テレビ盃でも、中央馬ウインドフィールズに8馬身差という圧勝を見せつけてくれました。
賞金獲得額はフリオーソに譲っています。
しかしそうだとしても、メイセイオペラとの二大巨頭が活躍した時代は、当時を知るファンの記憶から消え去ることがないのではないでしょうか。それほど、衝撃的な馬でした。
写真:@berry29051387、かず、Horse Memorys