[連載・クワイトファインプロジェクト]第8回 悲喜こもごものなか、名馬タイテエムが突如脚光を浴びる2022年

本題の前に、前回取り上げたエレディターレ号は2/12の東京2Rでデビュー戦を迎え、11着でした。最後はバテたのかも知れませんが先行はできましたし、ひと叩きされて変わってくるでしょうか。次に期待しましょう。

さて、もう2月も半ばになりましたが、年末年始の、というか主に年始の競馬関係の様々な話題から。現役ダービー馬ワグネリアン号の病死や、有馬記念馬が引退し乗馬に(=種牡馬入りできなかった)との報道、BCディスタフの勝ち馬がJRA賞の対象にならなかったこと等々……、今年の年始は、いつもの年以上に競馬の話題が駆け巡りました。

ワグネリアンの件は本当に残念ですが、後のことはすべて人間の判断が絡むことですので、ここでの私としての論評は差し控えます。しかし、SNSの普及で多くの競馬ファンの方々が自分の意見を自由に述べ、競馬サークルにも一定程度影響を与えられる今の風潮はいいことだと個人的には思います。SNSを通じた世論の後押しがなければクワイトファインは種牡馬になれていませんし、今もなお、以前に紹介したYoutube動画や、吉本興業きっての競馬通芸人として知られる「ビタミンSお兄ちゃん」さんの動画でクワイトファインについて言及していただいたお陰で、少しずつですがクワイトファインの知名度も上がってきております。

そんな中、SNSの時代ならではの出来事として、タイテエム号(1969年産まれ)のオーナーの流れを汲むメイタイファームさんが、元日に牧場の公式twitterアカウントを開設。さらにはタイテエムの「ウマ娘」入りを希望している、という話題がネットニュースで取り上げられ、大きな反響を呼びました。

メイタイファームさんは、今は生産者としての名義は個人名となっているようですが、現役馬ですとコスモカルナック(3勝クラス)等が活躍しています。旧名義のメイタイ牧場ですと、宝塚記念3着のタイイーグル、フラワーCでホクトベガの2着にきたタイジュリエット等の活躍馬も輩出しました。

 そして、現在クワイトファインの仔を受胎中の繫殖牝馬バトルクウの預託先が、メイタイファームなのです。

今までは、牧場さんのご迷惑になってはいけないのであえて預託先を公表してはいませんでした。しかし今回、メイタイファームのtwitterで紹介していただいたことで、(タイテエムのおこぼれに与った形ですが)バトルクウがクワイトファインの仔を受胎していて、メイタイファームで産まれる予定である──ということが広く知れ渡る結果となりました。ここでも、クワイトファインの知名度アップにつながりました。有り難い限りです。

種牡馬タイテエムは、父としてシンチェストや、牝馬ながら中山記念を制したコーセイ、母の父としてはマイネルレコルト(朝日杯FS)、ホットシークレットなどを輩出しています。……とは言え、さすがに50年近く前の馬ですし、現役時代の成績ほどには種牡馬として活躍馬が出せなかったこともあり、現役競走馬の血統にその名を見つけることは極めて難しくなっています。

それでも、こうして約50年の時を経て、タイテエムのはるか後に産まれた世代の若い方々にもその名が注目されるのですから、面白いものです。

タイテエムの血統についてもう少し解説しますと、父は凱旋門賞馬セントクレスピン(ハイペリオン系)で、タイテエム自身は持ち込み馬(海外で受胎中の牝馬を日本に輸入し、日本で出産すれば外国産馬扱いにはならない)でしたが、その後、父のセントクレスピンも日本に輸入されています。日本では天皇賞馬エリモジョージなどの活躍馬を送り出しましたが、平成以降の活躍馬で言えば2冠馬ミホノブルボンの父マグニチュードの母父として、その名をとどめています。マグニチュード自身は未勝利馬で普通なら種牡馬にはなれませんが、父が凱旋門賞馬ミルリーフ、母も英オークス馬という血統で日本に輸入されました。

私も詳しく統計をとった訳ではありませんが、ハイペリオン系は母父、あるいは母母父としてネアルコ系を支える形になると産駒の能力を大きく底上げする血統なのかと思います。ノーザンダンサーの父ニアークティックがまさに父ネアルコ、母父ハイペリオンですし、サンデーサイレンスの母母父モンパルナスもハイペリオン系です。しかしネアルコ系の大成功をもたらした代償としてハイペリオン系は(ほぼ)滅亡してしまいました。

今回は、ややとりとめのない内容になってしまいましたが、私と同じ53年前に産まれた天皇賞馬と、平成4年の二冠馬に血統的な縁があり、それぞれの功績に思いをはせることができる、それがサラブレッドの面白さだと個人的には思っています。

 サラブレッドが経済動物であり、大手生産者にとって種牡馬を残すか残さないかがビッグビジネスである以上、単なるファンの思い入れだけではどうにもならない面があるということも白日の下に晒されてしまったわけですが、日本のサラブレッド生産における血統の多様性について、もう少し競馬ファンの意見など広い視野で議論すべき時期が来ているのではないでしょうか。私は一介のサラリーマン地方馬主にすぎませんが、プロジェクトが続く限り、常に一石は投じ続けていきたいと思います。

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