[地方レース回顧]雨を駆ける、昇り竜~2021年・東京スプリント~

大井競馬1200mで争われる交流競走の東京スプリント。今年は15頭のメンバーが集いました。
昨年のJBCスプリントを勝ったG1馬サブノジュニアが最も重い58キロ、昨春のさきたま杯を勝ったノボバカラが57キロ、そのほかの馬たちは56キロの斤量で争われます。

夕方までは曇っていた天候も、レース前には激しい雷雨となり、馬場コンディションは不良でのスタート。各馬の底力が試される1戦となりました。

レース概況

ロケットスタートを決めたキャンドルグラスが気合をつけて飛び出しますが、すかさず内枠のベストマッチョ、サイクロトロン、ヒロシゲゴールドが3頭横並びでハナ争いに行きます。リュウノユキナは控えて4番手、グランドボヌールが続いて、その後ろにノボバカラ、サブノジュニア。二の足がつかなかったキャンドルグラスも外を回って末脚を溜めます。向こう正面での映像では激しい風雨で画面がかすむようなコンディションの中、各馬が勢いよく3コーナーへ飛び込んでいきました。

コーナーを抜けたところで、一杯になったサイクロトロンと手ごたえの悪いヒロシゲゴールドを振り切ってノボバカラが先頭に立ちます。しかし、前の3頭を見ていたリュウノユキナが持ったままの手ごたえで交わしました。前の馬たちが止まったことで差し馬の流れになり、後方で構えていたサブノジュニアが仕掛けようとしますが、ばてた馬を交わすのに少し手間取ってしまいます。

最後の直線でサブノジュニアが懸命に追い詰めますが、アタマ差まで追い詰めたところがゴール。外から鋭い末脚を見せたキャンドルグラスが3着、コーナー手前から追い通して長く末脚を使ったノボバカラが4着に健闘しました。5着には直線で盛り返したヒロシゲゴールドが粘り込み、先に抜け出していたベストマッチョは差し馬の末脚に屈して6着敗退でした。

各馬短評

1着 リュウノユキナ

門別競馬場で2歳でデビューし、地方所属のまま札幌競馬場でのすずらん賞を勝利。福島2歳Sで2着など、芝でも良い走りを見せていた馬です。この2年にわたりコンビを組む柴田善臣ジョッキーとのコンビでダートのオープンクラスを連勝し、勢いそのままにダート重賞に挑戦してきました。

前に逃げ先行馬を見ながら、直線に入ると自分のタイミングで抜け出せるレースセンスの良さが持ち味。勝負どころの見極めは、やはり大ベテランの鞍上の腕が光るポイントでした。

2着 サブノジュニア

昨年のJBCスプリントチャンピオンは負担重量が最も重い58キロでの参戦。前走のフジノウェーブ記念は適性から外れる1400mでのレースだったので最後に末脚を使いきれず4着でしたが、得意の1200mで差し脚が決まる展開になればこのメンバーでも屈指の実力の持ち主です。

今回は斤量差に加え、リュウノユキナに比べて仕掛けどころで前を交わせず末脚を出し遅れた分があっての敗戦でしょう。そうは言っても最後まで末脚の勢いよくアタマ差まで追い詰めていますし、ベスト条件なら実力に陰りは見えないことが、改めて証明できた一戦でした。

3着 キャンドルグラス

南関短距離戦の常連、キャンドルグラス。サウスヴィグラス産駒らしい筋骨隆々の迫力ある馬体からパワフルな末脚を繰り出します。今回はスタートが完璧に決まりましたが、行き脚がつかないので末脚勝負に徹する短距離の追い込み脚質を信条としている馬です。

最も得意としているのは船橋記念連覇を達成している船橋1000m戦ですが、末脚勝負が出来るレース展開なら常に後方から突っ込んできますので、前に行く馬が多い時には後方からの末脚に注目です。

4着 ノボバカラ

今年の参戦メンバー中最年長の9歳世代、昨年の春のさきたま杯で久々の重賞制覇があり、今回は57キロでの参戦でした。かつては上り3ハロン36秒台の強烈な末脚で勝負していた馬ですが、加齢に伴い切れ味は無くなっています。

とはいえ、今日のレースでも向こう正面から追い通してしぶとく最後まで末脚を伸ばしており、まだまだ闘志は枯れていないようです。この数年のローテーションならば次走はかきつばた記念や、連覇を狙うさきたま杯あたりになるかと思いますので、ベテランの頑張りも応援したいところです。

レース総評

冠名にもある「竜の」ような好調の勢いそのままに重賞も駆け抜けたリュウノユキナ。2着に敗れた3走前の相手は先日ドバイゴールデンシャヒーンで2着したレッドルゼルですし、今回負かした相手もダートグレード競走で活躍する馬たち。次戦以降も、レースの上手さを武器に勝ち負けできると思います。

南関東の大将であるサブノジュニアや、重賞好走のキャンドルグラスも各々の実力を発揮。実力伯仲の熱戦を繰り広げてくれました。

地方競馬所属のメンバーも中央の馬と変わらないレベルの強豪が年々増加していますので、ゴール寸前まで目の離せない熱戦に今後も期待しましょう!

写真:三木俊幸

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