[重賞回顧]同厩のライバルとトライアル連勝~2021年・アーリントンカップ~

アーリントンカップは、2018年からNHKマイルカップのトライアルレースとなり、3着馬までに優先出走権が与えられるようになった。施行時期も、同年に4月中旬へと移行された。

今年の出走頭数は、フルゲートの18頭。その中でも、人気は4頭に集まった。

1番人気に推されたのは、ホウオウアマゾン。
前走の朝日杯フューチュリティステークスでは3番人気に推されたものの、結果は9着。ただ、それ以前には、デイリー杯2歳ステークス2着や、オープンの野路菊ステークスを勝利するなど、今回は明らかに実績上位。
絶好調の川田騎手が騎乗することでも注目を集めていた。

2番人気に続いたのは、メンバーのなかで唯一、重賞を勝っているピクシーナイト。
その前走は、1勝クラスの身ながらシンザン記念を逃げ切り快勝。そこで2、3着に下したルークズネストとバスラットレオンも、後に重賞を制している。そうしたハイレベルの一戦を勝利したことが、評価された。

3番人気は、ジャスティンカフェ。
こちらは、前走1勝クラスのアルメリア賞で2着となり、ここまで2戦1勝の成績。今回は格上挑戦となるが、前走敗れたオヌールは、先日、阪神牝馬ステークスを快勝したデゼルの全妹。この後、権利を取る必要があるものの、オークスのダークホース的存在である。そのオヌールと接戦を演じたことも、上位人気に推される要素となった。

4番人気となったのは、ショウリュウレーヴ。
こちらは、前走4ヶ月ぶりのレースとなった1勝クラスを勝利して2連勝中。母ショウリュウムーンは重賞3勝馬で、チューリップ賞を勝利した舞台が重馬場の阪神1600mと、この日と全く同じ舞台。ノーザンファーム生産の良血馬ということもあり、注目を集めた。

レース概況

横一線のスタートから、前走の再現を狙うピクシーナイトが先手を切って1馬身半のリードを取る。2番手は、バクシン、ホウオウアマゾン、ワールドバローズ、ショウリュウレーヴの4頭が横並びの状態。さらにそこへ、リッケンバッカー、レイモンドバローズが加わり、先行集団は7頭となった。

第2集団は、5番人気のジュリオをはじめとする4頭が横並びとなり、ジャスティンカフェは、中団やや後ろの12番手を追走していた。

3コーナーに入ると、4頭ずつが横並びだった隊列は崩れ、先頭から最後方まではおよそ20馬身の差。前半3ハロン通過は34秒7で、馬場を考えれば平均ペースだったが、ここからは少しペースダウンする。
それでも、800m通過は47秒0、1000m通過が59秒2と、極端に遅いペースとなることはなかった。

4コーナーで隊列は少し縮まったものの、各馬ポジションはほぼ変わらず。
依然として、ピクシーナイトが2番手のホウオウアマゾンに1馬身半のリードを保ったまま17頭を引き連れ、レースは最後の直線へと向いた。

直線に入ると、内回りとの合流点でホウオウアマゾンが先頭に並びかけ、早くも人気馬2頭のマッチレースとなった。しかし、残り150mを切ったところで、ホウオウアマゾンが1馬身のリードを取って完全に抜け出す。突き放されたピクシーナイトは懸命に粘ろうとするが、そこへレイモンドバローズ、さらにリッケンバッカーの2頭が襲いかかる。

しかし、それら3頭の2着争いを尻目に、1馬身4分の1差をつけてホウオウアマゾンが1着でゴールイン。2着争いを制したのはリッケンバッカーで、3着にはレイモンドバローズが入り、この3頭がNHKマイルカップへの優先出走権を獲得した。

重馬場の勝ちタイムは、1分34秒2。

前走から巻き返したホウオウアマゾンが、3勝目を見事に重賞初制覇で飾った。また、管理する矢作調教師は、史上55人目、現役9人目となるJRA通算700勝を達成した。

各馬短評

1着 ホウオウアマゾン

前走後はかなり跛行していたそうだが、見事に立て直し、4ヶ月ぶりの休み明け初戦を見事に勝利。1週間前にニュージーランドトロフィーを制したバスラットレオンに続き、矢作調教師の管理馬が、2週連続でNHKマイルカップのトライアルレースを制した。

父のキングカメハメハは、現4歳世代が昨年の3歳GⅠで不振だったものの、現3歳世代は巻き返している。重賞は、これが世代初制覇ではあるが、他に、アールドヴィーヴルやククナが重賞で2着し、桜花賞でも上位に入線。エルフィンステークスを勝利したサルファーコスモスが故障で離脱したことは痛いが、ホウオウアマゾンにはNHKマイルカップでの親仔制覇への挑戦権がある。

また、川田騎手はこれで4週連続重賞制覇となり、今年はやくも重賞9勝目。勢いが止まる気配がまるでない。

2着 リッケンバッカー

こちらはロードカナロア産駒で、キングカメハメハの孫にあたる。

前走で未勝利を脱出したばかりだが、重賞でもいきなり連対を果たした。とはいえ、それまでに接戦を演じていたのが、後にファルコンステークスを勝ったルークズネストや、前述のサルファーコスモス。通用する下地は十分にあった。

本番でも即通用するとは言い切れないが、少なくとも、東京の芝1600mがこの馬のパフォーマンスを落とす舞台になるというのは、まず考えられない。

3着 レイモンドバローズ

未勝利脱出までに4戦を要したが、1勝クラスを昇級初戦で突破し、重賞でも3着に好走した。

父ヴィクトワールピサがトルコに輸出されたが、こちらも現3歳世代が盛り返し、オパールムーンとアサマノイタズラが、重賞で2着に入っている。多少であれば距離が伸びてもこなせるはずで、産駒が得意とする東京芝1800mに出走してきた際は狙ってみたい。

レース総評

前半800mが47秒0、後半800mは47秒2とほぼ同じタイム。1000m~1200mの区間が11秒5、続く1ハロンも11秒2と、4コーナーから直線坂下あたりまでのタイムが早かったため、後方に控えた馬にとっては厳しい展開となってしまった。

16番手から6着に追い込んだノースザワールドや、最後方から7着に追い込んだサトノラムセスは、今回と同じ直線の長いコースに出走してきたとき、直線の長いコースの1800m以上で狙えるのではないだろうか。

また、NHKマイルカップも、現状は混戦模様。そのため、出走してきた場合はホウオウアマゾンも有力馬であることは間違いない。極端な差し・追込みの展開にならなければ、本番での好走があっても驚けず、同厩のバスラットレオンとともに期待が高まる。

写真:俺ん家゛

あなたにおすすめの記事