今年のプロキオンSには新興勢力・ベテラン勢力問わず、魅力溢れるメンバーが揃っていた。
ダート重賞プロキオンSといえば、過去にマテラスカイやアルクトス、ベストウォーリアといったダートの名馬たちが4歳で制覇。そこから大きく羽ばたきダートG1戦線へと挑戦していくことになった。

2020年のプロキオンSにも、楽しみな4歳馬が登場。
中でもロードカナロア産駒・レッドルゼルは抜群の安定感を誇る走りを見せてきて、ここで重賞初挑戦となった。勝って「ここはあくまで通過点」としたいところ。他にもラプタスやトップウイナー、デュープロセスといった4歳の新進気鋭が揃った。同期の星・クリソベリルが帝王賞で古馬を撃破して間もないタイミング。これ以上差をつけられたくない思いも、少なくなかっただろう。

一方でベテラン勢は実績がありながらもオッズ上は厳しい評価が並ぶ。
昨年の南部杯以来となる白星を目指すサンライズノヴァは、トップハンデが嫌われたか5番人気。
昨年JBCレディスクラシックを制覇したヤマニンアンプリメは前走8着ということもあり、混合戦の今回は9番人気。
そして一年ぶりの出走、初ダート、2017年以来勝ち星なしというエアスピネルは8番人気。

各陣営、様々な想いを抱いての出走となった。

レース概況

スタートが切られると、芝コースを勢いよく4歳馬が駆けていく。
先頭はラプタス、続いてトップウィナー。

初ダートのエアスピネルは果敢に馬群の中央にポジションをとった。
最後方はデュープロセスで、そこから2馬身ほど前をサンライズノヴァ。
人気のレッドルゼルは先行集団にとりつき、内側でロスのない競馬を目指す。3枠5番からの競馬を、鞍上の川田騎手はどう組み立てるか。
ベテランのカフジテイクは内側で走りにくそうに首を振る。

後方のサンライズノヴァ・松若騎手は先行集団を睨みながらも泰然とした競馬。
トップハンデでも、そこから届く見積もりなのか、それともここはあくまで試走なのか。

一度は縦長になりかかった隊列も、すぐに3,4コーナーに差し掛かってまた一団となる。
1400m戦ならではの、緊迫感。各馬が直線に差し掛かり、ムチが入った。

先頭は以前としてラプタスとトップウィナー。そこに内からレッドルゼルが、外からJBCレディスクラシック馬・ヤマニンアンプリメが襲いかかる。4頭横並びの叩き合いだ。
最内のレッドルゼルが勢いに勝りそうな雰囲気を出す。一方でヤマニンアンプリメもレースを引っ張ってきた2頭を抜き去ろうとしていた。

そこで、5番手から勢いよく脚を伸ばしてきた馬がいた。
初ダートへの挑戦、エアスピネルだ。
「この馬で決まりか?」と驚かせたのもつかの間、さらに後方から良い脚を使うサンライズノヴァが猛然と追い込んできた。

最後は上位陣をまとめてかわしたサンライズノヴァが2馬身ちかい差をつけて快勝。
2着争いはエアスピネルが根気強く追い込み続けて制した。

松若騎手の会心の騎乗。
ゴール後に相棒を何度も撫でる姿からも、その喜びが伝わってきた。

各馬短評

1着 サンライズノヴァ 松若風馬騎手

終わってみれば、昨年の南部杯勝ち馬がそのまま実力を見せつけた結果となった。

マイル戦を使われてきたことで、1400m戦は昨年のプロキオンS以来。
そのギャップからか、序盤では後方のポジショニングとなったものの、3コーナーから早めに仕掛けたことが功を奏した。

序盤のポジションどりに慌てず、一方で大胆にコーナーから捲る競馬。
昨年のプロキオンS以来となる1年ぶりのコンビ再結成だったが、今年はしっかり勝ちきった。
次もこのコンビで見てみたいと思わせる好騎乗だった。

2着 エアスピネル 鮫島克駿騎手

初ダートをはじめ様々な逆風を乗り越えて、復活の狼煙をあげる2着。
7歳と、気がつけばもう大ベテランだが、ダートでまた楽しみになる走りだった。

それにしても、2歳で朝日杯2着、3歳で菊花賞3着、4歳でマイルチャンピオンシップ4着の馬が、7歳でダート重賞2着とは恐れ入る。
種牡馬としてもポテンシャルは十分なはずなので、日本でなくとも活躍のできるステージがあれば面白いのだが。

鞍上の鮫島克駿騎手の、我慢の競馬も光った。
デビュー6年目となった今年は、カデナとのコンビで小倉大賞典を制覇。
ブレイクが期待される1人だろう。

3着 ヤマニンアンプリメ 武豊騎手

前走の大井重賞・東京スプリント競走では8着と負けすぎたが、ここでしっかりと立て直した。
先行勢のなかでは最先着と、1400m戦での強さを見せつけた。

牝馬ダート戦に出れば信頼度はさらに高まりそう。
特に、ここ数戦は末脚勝負だったのが、ここにきて先行力を久々に見せつけられたのも大きい。
中央でのレースは昨年2月のオープン競走・大和S以来だったが、このペースを乗り切って3着にくるあたり、能力は十分高いだろう。

4着は斎藤騎手など若手の躍進が目立つ中で、ベテランの武豊騎手が変わらず存在感を見せつけた。

総評

レース前は4歳馬たちに「新しい力」を見せつけてくれることを期待したが、結果的にはジョッキーたちの「新しい力」を見せつけられた。
松若騎手はすでに新興勢力といっては失礼なレベルに達しているが、2着4着に食い込んだ若手騎手の今後も楽しみだ。

また、4歳馬からも、レースを引っ張る1頭だったトップウイナーは見所十分な競馬だった。次走以降の成長に期待したい。

驚かされたのはエアスピネルの激走。
3歳4歳のころからダート適性を有していたのか、ベテランになってダート適性が伸びたのか。
早くも「たら・れば」を口にしてしまいそうになるが、次が試金石。この走りが本物であることを証明してほしい。

上位各馬は秋のG1級競走でも楽しみな存在として頑張ってくれそうだ。

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