イナリワン、メジロマックイーン、マヤノトップガン、サクラローレル、ゴールドシップ、キタサンブラック……。
これまで、本当に様々な「名ステイヤー」が日本競馬界を賑わせてきました。

そこで今回は「あなたの好きなステイヤーは?」をテーマに、4人の競馬ファンに各自の想いを語っていただきました!
あなたの好きな馬は語られているでしょうか?
それとも意外なあの馬が?

どうぞお楽しみください!


愛すべき生粋のステイヤー マイネルキッツ

まだ僕が札幌に住んでいた頃。

「アルナスラインって馬がすごいカッコいいから!見て、損はないから!」
などと言いながら──半ば強引に──友人を、WINSに連れていったのを、今でも鮮明に覚えている。

2009年の天皇賞春は、非常に厚いメンバー構成だった。

536キロの雄大な馬体を誇るモンテクリスエス。
菊花賞馬・アサクサキングス。
ジャパンカップ馬・スクリーンヒーロー。
復調気配の2歳王者・ドリームジャーニー。
そして実力未知数な、ジャガーメイルとヒカルカザブエ。
ベテランからはコスモバルクやデルタブルース・ポップロックらが。
トウカイトリックはその頃「まだ」7歳で、普通のベテランといった位置づけだった。

どの馬も本当に好きな馬で、どの馬にも注目していた……つもりだった。

重賞未勝利での天皇賞・春制覇。
マイネルキッツ。

僕らはWINSで良い席も取れず、パドック中継の大画面を見ながら、友達に講釈をたれていた。
「アルナスラインが良い馬なんだ」
「アルナスラインの前走がすごかったんだ」と。

その前哨戦で7番人気ながら2着に食い込んだ馬には、言及もしていなかった。
そしてそのままレースは始まり、最終直線。僕らはアルナスラインが追込みをかけるのを、ただひたすら見上げていた。

「ほら、言ってた通り、強いでしょ?」と自慢する準備をしていた。

しかし内から抜け出した1頭の馬、12番人気・マイネルキッツを、アルナスラインがとらえることはなかった。
結局、クビ差での戴冠を果たしたのは、マイネルキッツだった。
重賞未勝利馬が天皇賞・春を制覇するのは1980年のニチドウタロー以来29年ぶりの快挙だったという。

気に入っていたアルナスラインがG1タイトルをあと一歩で逃すところを、ずっと口を開きながら目撃した……そんな間抜けなポーズをとっていた僕に湧いた感情は、思いもよらぬ「マイネルキッツも、カッコいい」というものだった。

12番人気で勝利したマイネルキッツは、それから引退まで20戦以上したが、1度も1番人気に推される事がなかった。
戴冠後も、多くの人がレース前にその存在を思わず「見逃し」て、レース後に彼が「真のステイヤー」だったことを思い出させられた。

2010年天皇賞・春(5番人気)での2着。
そして日経賞(6番人気)・ステイヤーズS(4番人気)での勝利。

──どれも、偶然の快走ではなかった。

2009年天皇賞・春の段階では、自分自身も完全に見逃していたうちの1人だったのに、僕はその後、彼が好走する度に「ほら、見た事か」と、まるで自分の事かのように得意げに、ニヤッと笑わせてもらった。
10歳で引退するときもちゃんとステイヤーズSで締めくくってくれた、本当に生粋のステイヤーだった。
だから僕は今でも自信をもって言う。

マイネルキッツが、僕の大好きなステイヤーだ。

文:北の匿名太郎

長距離でこそ、魅力のロングスパートに心震えた ディープインパクト

好きなステイヤーは?という問いに、様々な馬が脳裏をよぎります。
あぁ、私は競馬が好きなんだなぁと、改めて考えさせられます。
こんなにも、色々な馬に想いを馳せるのが楽しいなんて。

「ステイヤー」というのは、長距離だけで強い馬ではなく、長距離でも強い馬だと考えます。
それはつまり、私が選ぶ馬が「長距離専門家」ではない事を意味するのです。

他の距離で負けながらも長距離で真価を見出したような馬にも情緒を感じつつ……私が選んだ馬は、無敗の三冠馬。2000mでも2400mでも、まるで無敵かのような衝撃的な走りが出来る、あの馬です。

……もうお判りでしょうか?
そう、ディープインパクトです。

初年度産駒がマルセリーナ(桜花賞馬)、リアルインパクト(安田記念)、トーセンラー(マイルCS)、ダノンシャーク(マイルCS)で、それからもスピード感溢れる「ディープ産駒」が次々と登場したことで、多くの人にとってディープインパクトの適正距離は2000m前後のイメージかもしれません。

実際、ディープインパクト産駒が八大競走を次々と制覇していく中で、最後に残ったのは菊花賞(2016年・サトノダイヤモンドが制覇)と天皇賞春(2019年・フィエールマンが制覇)だった事からも、そのイメージが強いのも頷けます。(2019年に八大競走完全制覇をするまでの9年間に5頭もの桜花賞馬をだしているのですから!)

しかし私は、ディープインパクトは、長距離こそ強さを発揮してきた馬だと思っています。

単勝1.0倍の圧倒的な支持を得て、逃げ粘るアドマイヤジャパン・横山典騎手を差し切った菊花賞。
3歳年末の有馬記念における敗北後をうけ、早めの仕掛けでデルタブルース・アイポッパーらを完封した阪神大賞典。
最終コーナーでは既に先頭に立ち、圧倒的な力を見せつけた天皇賞春。
この3レースこそ、ディープインパクトの凄まじい真価が見えたレースだと思うのです。

あのロングスパートに、本当に心が震わされた。
ずっと忘れられない、脳裏に焼きついた末脚でした。

マイル路線はこの馬、中距離路線はこの馬、長距離路線はこの馬……。今ではディープインパクト産駒だけでも、各馬が息を合わせたようにレース選択がされていきます。
スペシャリストが育ち、馬同士のレース分担・役割分担も明確化されてきた現代の日本競馬界。
でも実は、ディープインパクト自身は様々な距離を勝ち続けた「隠れ名ステイヤー」だったのだと、改めてここに記させていただきました。

文:葵ゆう子

「ジャイアントキリング」を実現した馬 ライスシャワー

僕が1番好きな考え方や生き方に「ジャイアントキリング」という言葉があります。
意味としてはそのままで「強大な敵を倒す」。

そんな僕が1番好きなステイヤーは、ライスシャワーです。

これから先、多くの名ステイヤーが誕生するでしょうが、この馬の存在は絶対に忘れられないです。
小さな身体で、誰よりも強くなる為に鍛え上げたその姿、そして生き様に心を打たれたのを幼少期ながら覚えています。
彼が事故で亡くなったのは、僕自身が産まれて1ヶ月弱後のこと。それから育った僕が、ライスシャワーを「名ステイヤー」として心に刻むのもまた、必然だったのかもしれないなと感じています。

ライスシャワーの生き方も正に「ジャイアントキリング」そのものでした。
無敗の三冠目前を潰えた菊花賞。
王者の3連覇を阻止した天皇賞春。
そして、怪我から復活しながらも、評価は高くなかった2度目の天皇賞春。
どのG1も、1番人気で制してはいませんでした。

ライスシャワーは負けるだろうと──間違った評価を下されていました。

そして最期のレースは1番人気に支持され、苦難を乗り越え掴んだヒーローになったのです。
実は僕自身も、まだ社会人としてスタートを切ったばかり。ステイヤーとしてのライスシャワーの生き様を見習いながら、自分の夢を追いかけ続けていきたいと思う、今日この頃です。

文:KOBA

長距離重賞の常連 ホットシークレット

メジロマックイーンも好きだし、トウカイトリックも捨て難い。

──しかし私の中で「好きだったステイヤー」と言われて思い起こすのは、あの馬だ。

G1を勝っているわけでもない。
一般的には「名馬」とは言えないのかもしれない。
けれど、たまらなく私の心を掴んで、離さない。

ホットシークレット。

2000年阪神大賞典(勝ち馬テイエムオペラオー)の大逃げを見て、私の心は一瞬にして奪われた。
ホットシークレットは「ステイヤー」の名を冠しているステイヤーズステークスを、2勝している。
他にも2001年阪神大賞典3着、宝塚記念3着、2002年日経新春杯2着、2003年ダイヤモンドステークス4着など。
「長距離重賞戦線にこの名あり」と、当時、絶妙な存在感を放っていた。
どうしても逃げ、先行のイメージが強いホットシークレットだが、2001年目黒記念を勝利した時には中団から追い込み、2着マックロウに3馬身半差をつける圧勝。
「この子、こんなレースも出来るのか……!」と驚愕した覚えがある。

せん馬ということで繁殖にはあがれなかったが、引退後はノーザンホースパークにて乗馬として活躍。
2005年に亡くなる前に会いに行くことが出来たのは、今となっては本当に良かったと思う。

黒いメンコから覗く愛嬌のある瞳も。
果敢に前へ取り付く力強い姿勢も。
今でも、はっきりと思い出せる。

いわゆる絶対的な「名馬」ではないかもしれないが、いつまで経っても、ホットシークレットは私のオンリーワンステイヤーである。

文:笠原小百合


さて、皆さまのお気に入りのステイヤーはいましたでしょうか?
意外な名前や、懐かしい名前もあったかもしれません。

長距離戦を戦い抜く魅力的なステイヤーたち。
さらなる名ステイヤーの誕生を、楽しみに待ちましょう!

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編集:緒方きしん
写真・Horse Memorys

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