[地方レース回顧]勝利への熱望が叶うとき~2021年・JBCスプリント~

JBCデーの2レース目はJBCスプリント。レディスクラシックより100m短い1400m戦に、牝馬2頭を含めた12頭が参戦しました。
地方交流重賞で鎬を削ったメンバーが顔を揃える中、エアスピネルの回避により補欠一番手だったリュウノユキナの出走が叶いました。また、芝の高松宮記念勝馬モズスーパーフレアが昨年に続きこのレースに参戦、ダートでも逃げ切りを狙います。

地方勢も中央勢相手に互角の勝負を続けるモジアナフレイバーが黒船賞以来の1400m戦に参戦。今年の東京ダービー馬アランバローズも得意の短距離戦を目標にここを目指し、昨年のチャンピオンサブノジュニアや東海地区の強豪ニュータウンガールも短距離王の座を狙ってこのレースに挑みました。

天候は曇りから晴れに回復し、秋の日差しを浴びてのレースとなりました。

レース概況

モズスーパーフレアがいつも通りダッシュ良く先頭に立ち、ベストマッチョが2番手に。3番手争いにサクセスエナジー、アランバローズ、レッドルゼルが並んで、モジアナフレイバーはその後ろで中団に構えます。

1コーナー入り口ではインをぴったり回ってモズスーパーフレアが先頭で入り、ベストマッチョが追いかけて2番手。内ではリュウノユキナが躓きましたが立てなおし、外にサクセスエナジー、更に外にレッドルゼルが続きます。逃げを打てなかったアランバローズは掛かりながらも先行集団についていきます。

向こう正面でモズスーパーフレアがベストマッチョを2馬身離して先頭をキープ。サクセスエナジーは外から促されて3番手、リュウノユキナは4番手に控えます。レッドルゼルが5番手、アランバローズはレッドルゼルの外に出して6番手、インではモジアナフレイバーに鞭が入ります。
その後ろはクリノフウジン、サンライズノヴァ、サブノジュニア、ニュータウンガールが横並び、フランシスコダイゴが殿で3コーナーへ向かいますが、ここでニュータウンガールが故障、競走を中止しました。

モズスーパーフレアのスピードについていけなくなったベストマッチョとサクセスエナジーが脱落する中、リュウノユキナが抜け出しを狙ってモズスーパーフレアの外から追い出します。
しかし、コーナーで最内に進路を取ったレッドルゼルが直線で一気に抜け出します。粘るモズスーパーフレアをリュウノユキナが追いかけますが、最内に進路を切り替えたサンライズノヴァと外から追ってきたモジアナフレイバーに交わされてゴール。

レッドルゼルは2着以降の争いを尻目に1.24.6のレコードタイムで勝利、最後に追込みを見せたサンライズノヴァを3馬身離しての快勝でした。モズスーパーフレアはモジアナフレイバーをハナ差凌いで3着、ここまで長らく連対を続けていたリュウノユキナは久しぶりの5着敗戦、昨年のチャンピオンサブノジュニアは最後方から追っての6着でレースを終えました。

各馬短評

1着 レッドルゼル

東京盃のレース回顧で「出遅れた分の3着で、1周コースに対応できれば今度こそ」と評したレッドルゼル。大外枠から好スタートを決めたことで、中段への位置取りがスムーズに行えました。

また、モズスーパーフレアを追いかけた先行各馬の脚色が鈍ったことで、4コーナーの時点で交わせる見込みが立ち、進路をどこに取るか気にしながらレースを見ていましたが、川田騎手の解答は「迷いなく最内」でした。

後方から迫ってきたサンライズノヴァが最初は外に出そうとして、直線で内に切り替えたところを見ると、この瞬時の判断が着差を決定的にしたと言ってよいでしょう。東京盃での課題を見事に克服して、待望のJpn1競争優勝を果たすことが出来ました。
来シーズンも国内外問わず、末脚を繰り出せれば勝ち負けに加わることでしょう。

2着 サンライズノヴァ

前走不発だった末脚はエンジン全開、レッドルゼルと同じく上り3ハロン35.2の末脚を繰り出して2着に入ったサンライズノヴァ。出遅れが惜しまれますが、末脚健在をアピールできました。

南部杯で勝利を共にした吉原騎手と久しぶりのコンビでした。コースを熟知した当地ナンバーワン騎手に導かれ、向こう正面まで最後方にいましたが、コーナーで押し上げると直線ではレッドルゼルが通った最内に進路を切り替えて一気に伸びてモズスーパーフレアをとらえました。

インコースは力の要る馬場のようでしたが、もともと530キロ以上ある筋骨隆々の馬体の持ち主なので、最内も苦にせずパワフルに抜け出しています。

中1週で武蔵野ステークスには参戦しないと思われますので、次走は距離延長のチャンピオンズカップに向かうのではないでしょうか。例年は武蔵野ステークスからの参戦で敗れていますが、今年は少しレース間隔が開いて変わり身があるか、注目です。

3着 モズスーパーフレア

スピード能力の高さが自慢のモズスーパーフレア。3年以上走っていない1400m戦でも最後まで粘っていた姿に、能力の高さが伺えます。

高松宮記念では繰り上がりの優勝でした。今度は自力でG1級競走を勝つべく、主戦の松若騎手と芝でもダートでも抜群のスタートから逃げまくります。

父Speightstownの産駒はダート1200m戦で世界を駆け回るマテラスカイ、全日本2歳優駿を優勝しNHKマイルカップでも2着に入ったリエノテソーロ等、芝ダート問わずスピード能力を活かして勝負する米国血統。坂路調教でも実際のレースでも屈指のスピードで走る姿は、この血統がなせる業でしょう。

おそらく芝1200mがベストの馬ですから、残り200mまで先頭を守り抜き、ラスト200mも踏ん張っての3着は大健闘と言って良いはずです。

4着 モジアナフレイバー

地方馬最先着を果たしたモジアナフレイバー。長年主戦を勤めた繁田騎手は調教師になり、以降は真島大輔騎手とのコンビでレースに出走しています。

南関重賞での成績もさることながら、2019年の東京大賞典3着、2020年フェブラリーステークス6着&マイルチャンピオンシップ南部杯3着と、JRAのメンバー相手でも互角に戦える実力の持ち主ですから、今回の結果も納得です。

今年は1400m戦に初めて挑戦し、南関のフジノウェーブ記念ではなく高知競馬場の黒船賞に遠征して3着、この時の勝馬テイエムサウスダンは今秋のテレ玉杯オーバルスプリントを勝ち、2着スリーグランドもその後中央のオープン戦で2着2回の結果を残しています。

勝ちに行くならばレッドルゼルより前に行きたいレースでしたが、アランバローズ、ベストマッチョがモズスーパーフレアについていけなかったことを考えれば、差しに回って直線までインコースでロスなく運び、3着にハナ差まで追い詰めた真島騎手の手腕は見事でした。

5着 リュウノユキナ 

ここまで長く連対を維持してきたリュウノユキナ、今回は残念ながら5着に敗れました。
主戦の柴田善臣騎手が「集中してなかった」とインタビューで話した通り、コーナー入り口で躓く姿に一瞬ヒヤッとしましたが、それでも立て直していつも通りの先行抜け出し狙いのレースをすることが出来たのは豊かな経験のなせる業でしょう。

これまでの戦績を振り返っても1400m戦では成績を落としてしまっていただけに、モズスーパーフレアを捉え切れず、後方から来た2頭に差し切られてしまったのも仕方ないでしょう。直前まで参戦できない可能性もありましたが、今年の交流重賞を盛り上げた存在として、不得意な条件でも掲示板に残したことを評価したいです。

ワンターンの1200m戦でこその馬なので、スプリントとしては長い1400mの今回から距離短縮になるカペラSあたりで見直したいですね。

レース総評

昨年に続いてモズスーパーフレアが飛ばす展開になったことで、現役屈指の実力馬が上位を争う一戦になりました。
特に上位争いに加わったサンライズノヴァ、モジアナフレイバー、そして6着のサブノジュニアも最後の末脚で差しての決着でしたから、先行した馬たちには相当厳しい展開になったことでしょう。

その中でも3着に粘ったモズスーパーフレア、連対圏を外したものの5着入線のリュウノユキナはどちらもベストとは言えないコース条件での逃げ・先行でしたから、敗れはしましたが実力は評価されるべき結果と言えます。

レッドルゼルの名前の由来は「冠名のレッド+フランス語で熱望」だそうです。
今回の勝利で名前の通り期待された大一番を勝つことができ、G1ホースの仲間入りを果たしました。
JBCレディスクラシックに続き、この馬の鞍上も川田騎手。今年参戦したJBC競走はレディスクラシックに続き2戦2勝の成績で、アメリカへ向かいます。現地での好勝負にも期待しましょう!

川田騎手、安田隆行調教師、関係者の皆様、優勝おめでとうございます!

写真:はねひろ(@hanehiro_deep)

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