[重賞回顧]エピファネイア産駒から、また一頭名牝候補が誕生~2021年・アルテミスS~

牝馬限定重賞の中でも、屈指の出世レースとなっているアルテミスS。2021年が10回目とその歴史は浅いものの、これまでの出走馬から後のGI馬が7頭も誕生し、そのうちの3頭は、直近5年の勝ち馬。2020年に至っては、9着に敗れたユーバーレーベンもオークスを勝利した。

そんな出世レースに今年エントリーしたのは11頭で、単勝10倍を切ったのは4頭。その中で、1番人気に推されたのはフォラブリューテだった。

父はエピファネイア、母は2008年のマイルCSを勝ったブルーメンブラットという超良血の同馬。前走、新潟芝1600mの新馬戦で、2着に4馬身差をつけて完勝し、およそ3ヶ月の休養を経て出走してきた。乗り替わりとなるものの、騎乗するのはルメール騎手で、そこは懸念材料とならず。逸材揃いの一戦でも、単勝2.1倍とやや抜けた人気となっていた。

2番人気に推されたのはベルクレスタ。こちらは初戦で2着と敗れたものの、相手はその後、重賞の新潟2歳Sも勝利したセリフォス。ベルクレスタも、前走は2着に3馬身半差をつけ完勝しており、戦ってきた相手から、ここでも引けを取らないだろうという評価だった。

やや離れた3番人気となったのがロムネヤ。戸崎騎手に国枝厩舎。そして、金子オーナーが所有するディープインパクト産駒という点は、先日秋華賞を制したアカイトリノムスメと同じ。前走は中山芝1600mの新馬戦に勝利し、そこから中5週と、こちらも余裕のあるローテーションで出走していた。

そして、4番人気となったのがシンシアウィッシュ。こちらは、父キズナに生産がノースヒルズ。そして騎乗するのは、キズナでダービーを制した武豊騎手と、やはり縁のある人馬。前走、新潟芝1800mの新馬戦では、スローからの瞬発力勝負となったものの、2着に3馬身差をつける完勝で、ここでも大きな注目を集めていた。

レース概況

ほぼ出遅れのないきれいなスタートから、シゲルイワイザケが先手を切ろうとするところ、ベルクレスタとボンクラージュも追いかけて先団は3頭に。その後ベルクレスタが引いて、ボンクラージュが逃げる展開となった。

3番手のベルクレスタから3馬身差の4番手にシンティレーションが続き、シンシアウィッシュ、サークルオブライフ、ミント、トーセンシュシュまでが、1馬身間隔で追走。その半馬身後ろに、やや口を割りながらフォラブリューテが続き、同じく半馬身差でヴァンルーラー。そして、前走逃げ切ったロムネヤは最後方からのレースとなった。

前半600mが35秒2、800mは47秒2と平均ペース。その地点で、逃げるボンクラージュのリードは5馬身。シゲルイワイザケに大きな差をつけて4コーナーを回り、その後リードは3馬身に縮まって、レースは最後の直線勝負を迎えた。

直線に入っても、しばらく先頭をキープしていたボンクラージュだったが、坂の途中でシゲルイワイザケが捉えて先頭へ。追ってきたのはベルクレスタで、2頭は馬体を併せ、残り200mからは叩き合いとなり、その後、ベルクレスタが体半分リードし、大勢は決したかに思われた。

ところが、中団から追い込んできたサークルオブライフが、前の2頭との差を徐々に詰めると、残り50mで一気に末脚を加速させ、ゴール寸前でベルクレスタをかわし1着でゴールイン。クビ差の2着にベルクレスタ、さらに4分の3馬身差の3着にシゲルイワイザケが続いた。

良馬場の勝ちタイムは、1分34秒0。上がり3ハロン33秒5の豪脚を披露したサークルオブライフが、見事に出世レースを制した。

各馬短評

1着 サークルオブライフ

この馬もデビュー戦で敗れたものの、そのレースを勝利したのは、キタサンブラック産駒の中でも特に大物の呼び声高いイクイノックス。同馬は東スポ杯2歳Sを目指しているとのことで、サークルオブライフの勝ちっぷりから、イクイノックスも良いレースが期待できそう。

一方のサークルオブライフは、引き続きデムーロ騎手とのコンビで、阪神ジュベナイルフィリーズを目指す模様。気性面が心配なエピファネイア産駒だが、国枝調教師の管理馬で、そのあたりも問題なさそう。

やや反応が鈍い面があるとのことだが、そのぶん長い直線は味方しそうで、なおかつ阪神芝1600mはエピファネイア産駒の得意コース。次走も、期待できるのではないだろうか。

2着 ベルクレスタ

道中は問題なく追走し、直線も勝ちパターンだったものの、最後の最後、勝ち馬の決め手に屈してしまった。

とはいえ、この馬の評価も下がることは無い。こちらも次走阪神ジュベナイルフィリーズを目指すそうだが、十分、争覇圏内の一頭だろう。

3着 シゲルイワイザケ

出走馬中、唯一前走1勝クラスから参戦してきたのが本馬。サークルオブライフと同様にエピファネイア産駒だが、どちらかといえば、父に似た持久力で勝負し、長く良い脚を使うタイプだろうか。

前走敗れたウォーターナビレラは、今週のファンタジーSに出走予定。そのレース内容が、シゲルイワイザケの実力を図る物差しとなるかもしれない。

レース総評

前半800mが47秒2で、後半800mが46秒8とほぼイーブンペース。

逃げたボンクラージュは早々に失速してしまったものの、離れて追走していた先行2頭が2、3着に入った。その2頭を、中団から差し切ったサークルオブライフはかなりの強さを見せたといえ、十分、次走に繋がる内容だったといえる。

このレースに、4頭出走していたエピファネイア産駒。前述したとおり、気性面で難しさを見せる馬もおり、7着に敗れたミントは、かなりイレ込んだようなあとがあった。

日曜日に天皇賞・秋を勝った同産駒のエフフォーリアも、次走ジャパンCではなく、間隔を開けて有馬記念を目指すとのこと。疲労回復もあるとは思うが、気性面でスイッチが入らないようにしているのかもしれない。

そのぶん、エピファネイア産駒は芝の新馬戦にめっぽう強く、新馬戦であれば、本来得意ではない1200mでも強さを発揮する。

サークルオブライフが阪神ジュベナイルフィリーズに出走するとしたら、今回と同じ中5週。エピファネイア産駒にとって、関西への遠征はさほど良い材料にはならないものの、そこは度重なる関西遠征で実績を上げてきた国枝厩舎。問題なくクリアしてくるのではないだろうか。

写真:ぉりゅぅ

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