[重賞回顧]雪辱に燃えるイルーシヴパンサーが、年明けから好発進!~2023年・京都金杯~

中山金杯とともに、中央競馬の開幕を告げる京都金杯。京都競馬場で改修工事が行なわれているため、2023年も中京競馬場での開催となった。

「一年の計は金杯にあり」という格言のとおり、関係者はもちろんのこと、競馬ファンにとっても重要な意味を持つレース。とりわけ、馬券ファンにとっては年明け最初の重賞ということもあり、GI並みに力が入るレースといっても過言ではない。ただ、中京で行なわれた過去2年は波乱の決着。一筋縄ではいかないレースとなっている。

そんな京都金杯に、今年もフルゲートの16頭が出走。そのうち8頭が重賞勝ち馬で、それ以外の7頭もリステッドを勝利した実績がある。また、世代別でみても4歳から9歳まで実に6世代が集結。バラエティー豊かなメンバー構成となった。

ただ、前走3着内に好走した馬が1頭もいない混戦で、最終的に単勝10倍を切ったのは5頭。その中で、1番人気に推されたのはマテンロウオリオンだった。

1年前、同じコースで行なわれたシンザン記念を快勝。その後、NHKマイルCでも勝ち馬とタイム差なしの2着に好走した実績がある。秋は2戦して7、10着と敗れたものの、GIの連対実績はメンバー中唯一で、デビュー2戦目からコンビを組む横山典弘騎手と、2つ目の重賞タイトルを狙っていた。

これに続いたのが、同じく4歳馬のプレサージュリフト。重賞勝ち実績はクイーンCだけとはいえ、その一戦で後の二冠牝馬スターズオンアースを差し切っている。また、オークスでも5着に好走した実績があり、前走の秋華賞は9着に敗れたものの、勝ち馬から0秒6差と大きく負けておらず、初コンビのイーガン騎手とともに、2つ目のタイトル獲得が期待されていた。

わずかの差で3番人気となったのがピースワンパラディ。中京芝1600mは5戦2勝2着3回と得意にしており、21年の当レースでも2着に好走している。また、これまで大敗がない安定した取り口も魅力で、長期休養明けから3戦目となる今回、待望の重賞制覇が懸かっていた。

票数の差で4番人気となったのがエアロロノア。こちらもピースワンパラディと同じく重賞勝ち実績はないものの、安定感が魅力。7着に終わったとはいえ、前走のマイルCSも勝ち馬と0秒4差の接戦だった。今回は、2月末で引退が決まっている福永祐一騎手と久々のコンビ。1番人気で6着に敗れた前年の雪辱を果たすかにも、注目が集まっていた。

そして、5番人気に推されたのがイルーシヴパンサーで、2走前の安田記念では1番人気に推されたほどの逸材。そのレースでは8着に敗れたものの、やや出負けした上にスローの展開にも泣いた格好で、それでも勝ち馬から0秒2差と大きくは負けていない。今回、初コンビとなる岩田望来騎手とともに2つ目の重賞タイトルをかけ、出走していた。

レース概況

ゲートが開くとタイムトゥヘヴンが出遅れ、プレサージュリフトとマテンロウオリオンもあおるようなスタートとなった。

対して、前はアルサトワが逃げようとするところ、内からベレヌスがかわし先頭へ。しかし、残り1200mの標識を過ぎたところで、この争いにダイワキャグニーが加わり、結局3頭でレースを引っ張る展開に。その後ろには、早くも巻き返したプレサージュリフトとピースワンパラディ、ヴィクティファルス、エントシャイデンの4頭が横一線となり、そこから1馬身半差の8番手にエアロロノア。さらに1馬身半差の11番手にイルーシヴパンサーが控えていた。

一方、1番人気のマテンロウオリオンは、15番手のミッキーブリランテから10馬身ほど離れた最後方を追走。カメラがその姿を映し出すと、場内からは大きなどよめきがあがる。

前半600m通過は34秒7で、同800mが46秒0の平均ペース。マテンロウオリオン以外の15頭は12馬身ほどの隊列となり、レースは後半戦へと突入した。

ここで、前はベレヌスの単騎逃げに変わり、ダイワキャグニーがこれをピッタリとマーク。その後ろにアルサトワ、プレサージュリフトと続き、ヴィクティファルスは早くも手応えが怪しくなったか、団野騎手が手綱を激しく動かす。さらに、続く4コーナーでアルサトワとシュリが仕掛けたのを合図に各馬も仕掛けはじめ、馬群が10馬身ほどに凝縮する中、レースは最後の直線勝負を迎えた。

直線に向くと、ダイワキャグニーが早くも前に並びかけベレヌスは失速。かわってプレサージュリフトが2番手に上がり、坂上で先頭へと躍り出た。

ところが、それも束の間。エアロロノアとイルーシヴパンサーがこれに襲いかかると、残り150mからはこれら2頭のマッチレースとなり、瞬発力でまさったイルーシヴパンサーが、最後は体半分リードして1着ゴールイン。エアロロノアがこれに続き、4分の3馬身差の3着にプレサージュリフトが入った。

良馬場の勝ちタイムは1分32秒7。5ヶ月ぶりの実戦をものともしなかったイルーシヴパンサーが復活し、2つ目の重賞タイトルを獲得。混戦の古馬マイル路線に、再び名乗りを上げた。

各馬短評

1着 イルーシヴパンサー

道中は、中団やや後ろのインに待機し末脚温存。その後、直線でも鞍上がインにこだわって内ラチ沿いを鋭く伸びると、着差以上の完勝で2つ目の重賞タイトルを手にした。

鞍上の岩田望来騎手は、前走の関屋記念で初コンビを組むはずだったが、前日に落馬負傷してしまい乗り替わりに。今回、改めてのコンビ結成となったが、一発回答してみせた。

春は安田記念を目標とし、その間に一走はさみたいとのこと。1番人気で敗れた前年の雪辱を晴らせるのか、注目が集まる。

2着 エアロロノア

五分のスタートから、先行集団を前に見て絶好位をキープ。直線、坂の途中で進路が詰まりかけるも、前が開くとしぶとく脚を伸ばしたが、勝ち馬にはキレ負けしてしまった。

今後も安定した走りを見せてくれそうだが、瞬発力で劣る分、勝ちきれないレースも多そう。キングカメハメハ産駒ということで、ダートでの走りも見てみたい。

3着 プレサージュリフト

出遅れを挽回した分、最後は捕まるも、後の二冠牝馬を差し切った実力は本物だった。

左回りは、これで4戦2勝3着1回と間違いなく得意。次回も、左回りのコース。特に、東京競馬場のレースに間隔を開けて出走してきた際は注目したい。

レース総評

前半800m通過は46秒0で、同後半が46秒7のほぼイーブンペース=1分32秒7。最初の1ハロン以外はすべて11秒台のラップで、息の入らない流れとなった。結果、4コーナーを3番手以内で回った馬は、14着~16着に大敗。5番手に位置していたヴィクティファルスも12着に敗れ、中団に位置していた馬が上位を占めた。

それだけに、出遅れを挽回して4コーナーを3番手でまわり、結果3着に粘ったプレサージュリフトは、勝ち馬と同じくらいの評価が必要ではないだろうか。

上位入線馬の血統を見ると、キングカメハメハ産駒が2年連続で連対。今回を含めた直近の10回でも[1-3-1-4/9]と、大活躍している。

同様に、キングカメハメハを父に持つロードカナロアの産駒も[1-1-1-5/8]と活躍。今回出走した2頭は4着以下に敗れたものの、カイザーミノルが15番人気ながら5着と健闘した。

一方、京都金杯では、ハーツクライの産駒や、その母父であるトニービンを持つ馬の好走も目立つ。来年から京都競馬場に開催が戻り、1年も先のことで忘れてしまいそうだが、出馬表が出たら、真っ先にキングカメハメハとトニービンの名前を探したい。

写真:セントサイモン

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