ファンタジーステークスは、12月に行われる2歳女王決定戦・阪神ジュベナイルフィリーズの前哨戦として位置づけられている。
過去10年で6回、延べ6頭がここをステップに本番で3着内に入っており、特に近2年はファンタジーステークスの勝ち馬が本番も連勝しているため、非常に注目度の高いレースとなっている。

2020年は、12頭がエントリー。
上位人気は拮抗したものの、ここまで無敗の3頭に人気が集まった。
その中で、1番人気に推されたのは前走小倉2歳ステークスを制したメイケイエールだった。
父は新種牡馬ミッキーアイル、母の母ユキチャンは前週のアルテミスステークスを制したソダシの母ブチコの姉という血統。メイケイエール自身は白毛ではないものの、この『白毛一族』は、今、最も活力のあるファミリーのひとつではないだろうか。

一方、2番人気に続いた『九州産の星』ヨカヨカは、3戦3勝でここに駒を進めてきた。
前走のひまわり賞では、九州産同士の対戦とはいえ2歳夏にして57kgの酷量を背負いながらも圧勝。
また、メイケイエールとヨカヨカには、過去にモントライゼを破ったという共通項があるが、そのモントライゼがファンタジーステークスの発走直前に行われた京王杯2歳ステークスを快勝したことも、2頭の実力を示す一つの要因となった。

3番人気は2戦2勝の戦績で臨んできたサルビアで、前走のりんどう賞は2着に5馬身差をつける圧巻のパフォーマンスを披露。ノーザンファーム生産のダイワメジャー産駒は、2019年の覇者レシステンシアと同じだった。

レース概況

ゲートが開くと、大きく出遅れる馬はいなかったものの、オパールムーンが少し遅れそのまま後方に控えた。内からフリードが逃げてサルビアが2番手、その後ろは3頭が固まったがラヴケリーが単独3番手となり、ヨカヨカはちょうど真ん中6番手を追走する。
1番人気のメイケイエールは、スタート直後こそ中団より後方に控えたがすぐに引っかかってしまい、武騎手が懸命になだめるも徐々に前を追う形に。前半400mを通過した辺りで4番手につけることとなった。

前半600m通過は34秒1の平均ペースで流れ、先頭から最後方まではおよそ10馬身差だったが、この後も11秒2-11秒3と全くペースは落ちず、先行馬にとってはかなり厳しい展開となった。勝負どころの4コーナーでは前3頭が横並びになっていたが、福永騎手はヨカヨカを外に出し、メイケイエールを含めた4頭をまとめて交わそうとしたところで直線に向いた。

直線に入ると、3頭の中からまずラヴケリーが抜け出したが、坂に差し掛かるところでメイケイエールが先頭に変わる。ハイペースを引っかかり気味に追ったせいか、一気に突き放すことはできないものの後続もなかなか差を詰めることができない。
そこへ、道中は離れた最後方で末脚を溜めていたオパールムーンが一気に外から飛んできた。

しかし、最後は4分の3馬身差でメイケイエールが押し切り勝ち。
続いて2着にオパールムーン、3着にラヴケリーが入線。
勝ちタイムの1分20秒1は、2006年に同じファンタジーステークスで武騎手騎乗のアストンマーチャンが記録した1分20秒3を更新する、2歳芝1400mのJRAレコードとなった。

各馬短評

1着 メイケイエール

武騎手がレース後インタビューで語ったように、道中引っかかりながらも押し切るあたり能力は相当に高いが、折り合いが今後の大きな課題となるだろう。

上述したように、以前に2歳芝1400mのJRAレコードを保持していたのはアストンマーチャンだが、小倉2歳ステークスとファンタジーステークスを連勝という戦績はメイケイエールと同じだった。その後の阪神ジュベナイルフィリーズで、同馬はウオッカのハナ差2着となり、3歳で道悪のスプリンターズステークスを制している。

メイケイエールの父ミッキーアイルも2着の実績があるレースだけに、少なくとも1年近く先の話ではあるが、条件が合えばその舞台での好走があるかもしれない。

2着 オパールムーン

口向きに難しいところがあり、それがスタートで少し出遅れる原因となったようだが、そのまま最後方に待機しゴール前あわやの場面を作った。ヨカヨカ同様、2020年のJRAブリーズアップセール出身馬で、新馬戦で破ったククナはアルテミスステークスでも2着と好走しているように、先行有利の中を差してきた本馬の能力は相当に高い。阪神ジュベナイルフィリーズは外回りコースを使用するため、出走すれば今回以上のパフォーマンスを披露できる可能性が十分にある。

父ヴィクトワールピサの産駒は芝の2歳新馬戦で単穴をあけることがあり、重賞勝ちは牡馬よりも牝馬に多い。特に、牝馬の東京芝1800m出走時に好走が多く、2019年は府中牝馬ステークスでスカーレットカラーが優勝、2020年もサムシングジャストが同レースで3着し、2月に3勝クラスを勝利したのもこの条件だった。

3着 ラヴケリー

あまり目立たなかったが、息の入らない展開の中2番手を追走し、1着から2馬身差の3着に粘った結果は強い内容だったといえるのではないだろうか。
勝ちきれないもののデビューから全て3着内に入っている堅実派で、現状は1勝クラスだがオープンに上がればおそらく上位人気にはならないタイプ。1600m以上では分からないが、1400m以下では今後も激走する可能性は十分にあるとみている。

レース総評

京都競馬場の改修工事によって7月以来の開催となり、午前中から好時計が頻発していたこの日の阪神競馬場の芝コースだったが、ファンタジーステークスは1、3着が先行馬でJRAレコードでの決着となった。

道中に折り合えるかがメイケイエールの課題ということは明確で、それが克服できれば本番で好走する可能性も高くなるだろう。
なにより同じ一族出身のソダシとの叩き合いを見てみたいファンもたくさんいるのではないだろうか。

また、2着のオパールムーンは、少なくともマイルまでなら距離が伸びて良いタイプで、阪神外回りコースではさらなるパフォーマンスの向上が見込める。 ファンタジーステークスは、2021年も引き続き阪神競馬場で開催されることが決まっており、本番の阪神ジュベナイルフィリーズとセットでその傾向を見守っていきたい。

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