[種牡馬・血統紹介]社台に来た韋駄天、ドレフォン

大種牡馬ノーザンダンサーの後継として、かつて北米で大きな嵐を巻き起こしたストームバード、ストームキャットの親子。
そして彼らから代を経て、アメリカの短距離界に嵐を起こす韋駄天が誕生した。

その名はドレフォン。

アメリカの短距離ダート界に現れた稀代の韋駄天は、そのレースぶりさながらのスピードで競走生活を駆け抜け、日本で第二の生活を送ることになっている。

日本の生産界に今後大きな影響を与える事が予想される彼は、いったいどんなサラブレッドなのか──。
まずはその現役時代の軌跡を振り返りながら、彼の種牡馬としてのこれからを予想していきたいと思う。

ドレフォン
- 2013年 アメリカ産まれ

血統的な背景

父は、いわゆる「ストームキャット系」の競走馬・種牡馬であるジオポンティ。ジオポンティはアメリカ生まれのアメリカ育ちながら、芝やオールウェザーを得意舞台とし、マイル〜クラシックディスタンスで29戦12勝(うちG1は7勝)という優れた成績をおさめた馬で、2009年と2010年のエクリプス賞古牡馬チャンピオンに選出されている。

母父はデピュティミニスター系の競走馬・種牡馬であるゴーストザッパー。ダートの中距離戦で11戦9勝(うちG1を4勝)という、こちらもアメリカ生まれアメリカ育ちの名馬である。

母母父は凱旋門賞を制しているトランポリノという血統なので、ドレフォンのチャンピオンスプリンターたる快速ぶりは、曽祖父である大種牡馬ストームキャットの再来と言っても良いのかもしれない。

現役時代

ドレフォンは、とにかく速かった。

デビュー初戦こそ5着に敗れたものの、2戦目のダート6Fの未勝利戦では圧倒的な速さでハナに立つと、その差を更に直線で広げて堂々の逃げ切り勝ち(勝ちタイム1:09.17)。

そこからは一度の落馬による競走中止を除くと、怒涛の6連勝で、一気にアメリカのチャンピオンスプリンターの座に君臨した。

3歳時のキングスビショップS(G1、ダート7F)でも抜群のスタートから直線を楽な手応えで迎え、そこから後続を突き放して逃げ切り勝ち(勝ちタイム1:21.25)。

さらにブリーダーズカップスプリント(G1、ダート6F)では、終始1番人気の馬にマークされる苦しい展開になったがそれでも直線2頭で後続を突き放すと、最後はドレフォンが抜け出したところがゴール板だった(勝ちタイム1:08.79)。

その後4歳初戦のビングクロスビーS(G1)は落馬で競走中止となってしまったが、直後のフォアゴーS(G1、ダート7F)では再び抜群のダッシュ力でハナを奪うと、逃げ切って6勝目(G1は3勝目)をマークした(勝ちタイム1:21.12)。

引退レースは、連覇のかかったブリーダーズカップスプリント。

しかしそのレースで、スタート直後に異変が起こった。
──逃げられない。
今までの戦法とはかけ離れたレース展開となった。
主戦であった鞍上のM.スミス騎手が押しても、逃げられない。

最内の中段でレースを進め、直線は外に持ち出して追い上げを狙うも……そこにいつものドレフォンの強さは見られず、後続馬にも差されて無念の6着となり、このレースを最後に競走生活を退くこととなった。

種牡馬としてのドレフォン

ドレフォンは引退後、その類まれなるスピードを見込んだ社台グループによって購入され、日本で種牡馬として第2の馬生を送ることとなった。

2021年に初年度産駒がデビュー予定で、

  • 2018年:207頭
  • 2019年:204頭
  • 2020年:186頭

と多くの牝馬に種付けを行っていることからも、非常に多くの産駒を競馬場で見ることが出来ることになる。

では、その産駒たちは、どんな舞台で活躍をするのか?
そしてPOGや一口馬主で出資をする際は、どんな馬に期待できそうなのか?

他のストームキャット系種牡馬の産駒が、日本でどのように活躍してきたかをサンプルに、ドレフォン産駒の活躍ぶりを占ってみたいと思う。

POINT① 牡馬の産駒

同じストームキャット系の種牡馬で、

日本で重賞馬を輩出しているのは以下の馬たちである。

●ヘネシー系
  • サンライズバッカス(フェブラリーS、武蔵野S)
  • ヨハネスブルグ→ホウライアキコ-f(小倉2歳S、デイリー杯2歳S)、ネロ(京阪杯)、エイティーンガール-f(キーンランドC)
    ↳スキャットダディ→ミスターメロディ(ファルコンS、高松宮記念)
  • ヘニーヒューズ→ヘニーハウンド(ファルコンS)、アジアエクスプレス(朝日杯FS、レパードS)、ケイアイレオーネ(シリウスS)、モーニン(根岸S、フェブラリーS)、ワイドファラオ(NZT、ユニコーンS)

●フォレストリー系
  • ディスクリートキャット→エアハリファ(根岸S)

●ジャイアンツコーズウェイ系
  • スズカコーズウェイ(京王杯SC)
  • エーシンジーライン(小倉大賞典)
  • エイシンアポロン(京王杯2歳S、富士S、マイルCS)
  • アスターペガサス(函館2歳S)
  • シャマルダル→ライトオンキュー(京阪杯)

●テイルオブザキャット系
  • エーシントップ(京王杯2歳S、シンザン記念、NZT)
  • ジオポンティ
    ↳ドレフォン

上記の通り、ヨハネスブルグの産駒であるホウライアキコとエイティーンガールを例外に、重賞級の活躍馬は極端なほど牡馬に偏っている。

ドレフォン産駒がよほど異なる性質を示さない限り、やはり活躍馬は牡馬に多く出るのでは無いか……と考えるのが無難だろう。

POINT② 芝、ダートのスプリント〜マイル戦

牡馬牝馬の活躍の偏りに加えて、距離などにも顕著な傾向が出ている。やはり北米的なスピードとパワーを最大の武器にしているストームキャット系の馬たちは、活躍の舞台が短距離路線ということが多い。

ストームキャットはノーザンダンサー系の種牡馬ながら、母方のボールドルーラー系の特徴を強く産駒にも伝える傾向にあるようで、いわゆる「溜めて直線で弾ける」ようなレースは苦手としている。

その分、スピードとその持続力で押し切れる舞台が活躍舞台であると考えられる。
そしてその点は、牡馬に活躍馬が偏っていることにも通じるだろう。
牡馬以上に鋭い切れ味を武器に戦う馬が多い牝馬に取って、ストームキャットの血がその妨げになってしまっているような見方もできるからだ。

ドレフォンは血統的に考えても、芝でもダートでも活躍する馬を輩出出来る可能性が高い種牡馬だと思う。
アメリカダートのスプリントで頂点に立った韋駄天が、日本のスプリントチャンピオンを生み出す日が楽しみである。

写真:s.taka

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