ダイヤモンドステークスは、今年で71回目を迎えた伝統の長距離重賞。
3000m以上の平地競走は年間で6レースしか行われない特殊な条件であり、ダイヤモンドステークスは、ステイヤーズステークスに次ぎ、国内で2番目に距離が長いレースである。

今年の出走頭数はフルゲートの16頭。その中で、最終的に単勝オッズ10倍を切ったのは3頭だったが、その内の2頭の人気が抜けていた。

僅差の1番人気に推されたオーソリティは、前走の有馬記念で古馬の一線級に跳ね返される結果となってしまったが、青葉賞・アルゼンチン共和国杯と、東京の長距離GⅡを2勝している実績の持ち主。その実績は今回のメンバーでは明らかに上位で、ハンデも56キロに落ち着き、改めて期待が高まった。

一方、2番人気に推されたのは6歳牝馬のポンデザール。前走のステイヤーズステークスでは、1番人気に推されながら3着に敗れたものの、今回も、長距離戦にめっぽう強いルメール騎手が騎乗するため、初の重賞制覇が期待されていた。

少し離れた3番人気となったヒュミドールは、重賞初挑戦ながら、前走のステイヤーズステークスで5着に健闘した馬。昨夏、本格的に芝へ転向して以降は4戦2勝と成長著しく、この馬も重賞初制覇が期待されていた。

レース概況

ゲートが開くと、メイショウテンゲンが出遅れ、後方からのレースを余儀なくされる。

ハナを切ったのはブラックマジックで、ジャコマルが2番手。さらに、3番手をヒュミドールとオーソリティ、タイセイトレイルの3頭が併走し、16頭は4コーナーを回り、1周目のスタンド前へと出た。

他の上位人気馬では、ポンデザールが中団より後ろの11番手。前走で3000mの万葉ステークスを勝利した、5番人気のナムラドノヴァンは後ろから4頭目を進んでいる。

坂の途中で迎える最初の1000m通過は、1分3秒8のスロー。古馬の重賞とはいえ、さすがにこのペースでは、いきたがるような素振りを見せる馬もいた。

続くゴール板を通過するあたりで、今度は、出遅れたメイショウテンゲンが外からポジションを押し上げ、3番手へと進出。このあたりで、先頭から最後方までは10馬身ちょっとの差だったが、最後方を進むサトノガーネットとミスマンマミーアの牝馬2頭以外は、ほぼ一団となり、レースは1コーナーから2コーナーへと進む。

その後、ペースが上がらないままレースは淡々と流れ、2000m通過は2分7秒5。1000m毎のタイムでいえば、最初の1000mとほぼ同じタイムだった。

そして、残り1000mの標識を通過してから、各馬がスパートをかけ始めて、ようやくペースが上がる。3~4コーナー中間で、ジャコマルとタイセイトレイルが先頭のブラックマジックに並びかけた。さらに石川騎手が手綱を激しく動かしてアイスバブルを鼓舞、さらには左鞭を2発、3発と入れ、レースは最後の直線コースへと入った。

迎えた直線。まず、先頭に立ったのはジャコマルだったが、残り400mを切ったところで、今度は外からオーソリティが先頭に立ち、坂の上りで後続との差を広げはじめる。

追ってくる馬の中では、グロンディオーズの伸びが目立ち、次いでヒュミドール、ポンデザール、ナムラドノヴァンの順で前を追うも、残り200mを切ったところで、オーソリティとグロンディオーズが後続との差を広げ、優勝争いは完全にこの2頭に絞られた。

そこからは、逃げるオーソリティ、追うグロンディオーズの構図となったが、ジリジリと脚を伸ばしたグロンディオーズが、ゴール寸前でオーソリティを捕らえて1着でゴールイン。オーソリティはクビ差の2着で、5馬身離された3着にポンデザールが入った。

良馬場の勝ち時計は、3分31秒2。かつては、菊花賞に出走したこともある6歳馬のグロンディオーズが、ここで念願の重賞タイトルを手にした。

各馬短評

1着 グロンディオーズ

3歳夏に、2勝クラスの信濃川特別を快勝。続いて菊花賞に出走したが、勝ったフィエールマンから1秒8離れた13着に大敗していた。さらにその翌週、左前脚に屈腱炎を発症していることが判明し、1年8ヶ月の休養を挟み、昨年6月ようやく戦列に復帰した。

そこから5戦目での重賞制覇となったが、6歳にして、まだこれがキャリア10戦目。
前走の中日新聞杯から大幅な距離延長となったものの、それを苦にしないあたりが、いかにもルーラーシップ産駒といったところだ。

2着 オーソリティ

人気馬ゆえ、早め先頭から勝ちにいったところを差された今回の内容は、責められない。前走の有馬記念は古馬一線級の前に敗れてしまったが、それでも、今回は十分な実力を持っているところを、改めて見せつける内容だった。

ただ、この馬に関しては、どちらかというと、天皇賞春よりは目黒記念や宝塚記念で狙ってみたいと思わせる部分も多い。

3着 ポンデザール

長距離戦は、本来牡馬が圧倒的に強く、6歳牝馬ということを考えれば、十分に善戦したといえる内容。ただ、少し反応が遅いところがあり、前回同様、4コーナーを回ってこれからというところで、やや置いていかれてしまったのが痛かった。

クラブの馬だけに、これがラストランとなるのか、それともあと1走するのか。動向が注目される。

総評

不治の病といわれる屈腱炎を克服し、6歳にして初の重賞タイトルを手にしたグロンディオーズ。陣営の努力には、本当に頭が下がる。

また、3000m以上の長距離路線の古馬の最高峰といえば天皇賞春だが、今年は、阪神コースで行われるため、例年以上にバテ比べとなる可能性が高い。グロンディオーズは、おそらく持久力勝負・バテ比べに強いタイプのはずで、このまま本番に直行すれば、上位進出があっても不思議ではない。

また、東京コースはこれで5戦4勝となり、敗れた1戦も、1年8ヶ月ぶりとなった昨年の復帰戦で、ノーカウントといえる内容。半兄のムスカテールが制した目黒記念に出走した際も、ぜひ狙ってみたい1頭だ。

あなたにおすすめの記事