![[重賞回顧]葦毛のステイヤー・アドマイヤテラと武豊騎手が春の盾へ好発進~2026年・阪神大賞典~](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/03/202603231-1-scaled.jpeg)
春のG1シーズン開幕まであと1週。ソメイヨシノの開花も間近に迫る阪神競馬場では、天皇賞(春)へ向けた西の前哨戦、阪神大賞典が行われた。
今年は2月の長距離重賞・ダイヤモンドステークスからの続戦馬はおらず、10頭立ての少頭数での一戦となった。
1番人気に推されたのはアドマイヤテラ。昨年は阪神2600mの大阪-ハンブルクカップ、東京2500mのG2目黒記念を連勝し、確実に賞金を加算して古馬G1戦線に挑んだ。秋は結果が出なかったものの、今年はここから天皇賞(春)を目指す。
2番人気は4歳馬ダノンシーマ。2歳夏にデビューしながら、3歳時はクラシック路線を使わず条件戦で力を蓄えた。4歳初戦の白富士ステークスでは上がり32秒台の末脚を披露。重賞初挑戦で3000m戦も未経験だが、ここまで3着以下なしの安定感を誇り、阪神2400m戦を3度経験している点も強みだ。
同じく4歳のレッドバンデが3番人気。菊花賞5着の後、2勝クラスを勝ち上がっての格上挑戦となるが、その内容は侮れない。菊花賞4着馬ゲルチュタールは日経新春杯を制し、2着だったエリキングも京都記念で2着と、上位馬たちが年明けに好走している点は見逃せない。
この他にも、昨年の日経賞を制して天皇賞(春)に挑んだマイネルエンペラー、牝馬ながら3000mの万葉ステークスを勝利したアクアヴァーナル、中長距離G2を2勝している古豪シュヴァリエローズらが顔を揃えた。
薫風の淀を目指す各馬は、向こう正面のスタート地点へと駆け出していった。
レース概況
各馬揃ったスタート。外からサンライズソレイユ、内からアクアヴァーナルがハナを主張して前へ出していく。最内のアドマイヤテラは前に馬を行かせ、武豊騎手が軽く手綱を抑えながらも無理なく折り合う。一方、ダノンシーマは大外のダンディズムが前へ行ったところでやや行きたがるそぶりを見せたが、川田将雅騎手がしっかり抑えて最初のコーナーへ入った。
先頭はサンライズソレイユ。2番手にダンディズム、3番手のインにアクアヴァーナル、その後ろにダノンシーマが続く。中団にはマイネルエンペラー、レッドバンデ、アドマイヤテラが3頭横並び。その後ろにファミリータイム、さらにシュヴァリエローズの黒い馬体が後方をゆったりと進み、数馬身離れた最後方をメイショウブレゲが追走して正面スタンド前を通過した。
前ではサンライズソレイユが主導権を握り、外のダンディズムを壁にしながらアクアヴァーナルが控える形。その一方で、前走は逃げたファミリータイムが後方から押し上げて2番手まで進出し、1コーナーへ入っていく。
向こう正面でもサンライズソレイユがマイペースで逃げ、外からファミリータイムがこれを追う。その後ろではマイネルエンペラーがいつでも動ける位置を確保。ダノンシーマ、アドマイヤテラは仕掛けどころを待つが、残り1000m過ぎで佐々木大輔騎手が仕掛けてレッドバンデが捲りを敢行する。これに応戦する形でアクアヴァーナル、マイネルエンペラーも進出を開始。ここで一杯になったファミリータイム、さらにその直後にいたダンディズムが後退し、その内外を通って各馬の終盤戦が始まった。
4コーナー出口で逃げるサンライズソレイユをアクアヴァーナルが交わして先頭へ。しかしその真後ろからアドマイヤテラが持ったまま進路を外へ切り替えると、武豊騎手のアクションに応えて一気にスパート。残り200mで先頭が入れ替わると、そのままゴール前まで脚色は衰えず、3馬身差をつけて突き抜けた。
勝ち時計は3分2秒0。アスクビクターモアのコースレコードを0.4秒更新する走りだった。アクアヴァーナルは最後に交わされながらも2着に粘り込み、3着にダノンシーマ。4着は最内から脚を伸ばしたシュヴァリエローズ、外を回ったマイネルエンペラーが5着に入った。
各馬短評
1着 アドマイヤテラ 武豊騎手
3歳時の菊花賞で3着、4歳で目黒記念を制し、5歳初戦のここで重賞2勝目を挙げた。
1枠1番を生かしてインで折り合い、常にアクアヴァーナルを前に置きながら追走。直線で進路が空くとすぐに外へ切り替え、一気に脚を伸ばして後続を引き離した。これで40年連続重賞勝利となった武豊騎手の手綱さばきはもちろん見事だが、その指示に素直に応えて動けるアドマイヤテラ自身のレースセンスの高さも光った。葦毛の馬体に浮かぶ銭形斑点から、状態の良さも十分にうかがえる。

有馬記念では枠順や展開の不運もあり、マイネルエンペラーやシュヴァリエローズに後れを取ったが、今回は前半のスローペースからレコード決着となる後半勝負にしっかり対応してみせた。目黒記念制覇から間もなく1年。次に目指すのは、いよいよG1のタイトルだ。
2着 アクアヴァーナル 坂井瑠星騎手
坂井瑠星騎手に促されて前へ行っても折り合いを欠かず、終盤にアドマイヤテラに交わされても後続の牡馬たちには差を詰めさせなかったアクアヴァーナル。
スタミナと持続力を改めて示すステイヤー色の濃いレース内容だった。
母エイプリルミストは中山2500mの1勝クラスを勝ち、おじのリアムはダート長距離、芝長距離、障害戦で3勝を挙げている。今回見せた豊富なスタミナは、母方から受け継いだものだろう。
万葉ステークスで京都の長距離戦も経験しており、牝馬としてはデニムアンドルビー以来の阪神大賞典2着好走で賞金加算にも成功。このコンビも天皇賞(春)で面白い存在になりそうだ。
3着 ダノンシーマ 川田将雅騎手
2歳冬の時点で初勝利を挙げながら、レース間隔を空けて一歩ずつクラスを上げてきたダノンシーマ。
クラシックには縁がなかったものの、ここまで8戦5勝、3着以下なしという安定した戦績でここへ駒を進めてきた。
前走は2000m戦で1分57秒0の決着を上がり32.7秒で差し切っただけに、一気に1000m距離が延びた今回は最序盤に折り合いを欠く場面も見られた。それでも体力を消耗しながら最後に馬群から抜け出し、3着まで追い上げた走りには能力の高さが表れている。
明け4歳2戦目で初重賞。勝ったアドマイヤテラのようにじっくり歩を進めるのであれば、次は天皇賞(春)よりも2500mの目黒記念が合うかもしれない。折り合いさえつけば鋭い決め手があるだけに、重賞制覇はそう遠くないはずだ。
4着 シュヴァリエローズ 北村友一騎手
8歳を迎えたシュヴァリエローズ。6歳時には目黒記念2着から京都大賞典で重賞初制覇、さらにステイヤーズステークスも勝ってG2連勝を飾った。
一方で7歳時は着順に大きな数字が並んだが、その内実は天皇賞(春)、宝塚記念、メルボルンカップ、有馬記念と中長距離G1に4度挑んだものでもあった。
今回は前半の位置取り争いに加わらず後方で脚を温存。レッドバンデが動き、ファミリータイムとダンディズムが下がってきた場面でも、最内を切り抜けるだけの余力を残していた。ダノンシーマが後から仕掛けた分で着差はついたが、自身も上がり3位の末脚を繰り出して4着まで追い上げてきた内容は、長距離戦で元気に走れる証明にもなった。
同厩舎のマイネルエンペラーとともに、天皇賞(春)でスタミナ勝負になれば前年以上の着順を狙えるかもしれない。
5着 マイネルエンペラー 丹内祐次騎手
マイネプリテンダーの牝系に父ゴールドシップ、母父ロージズインメイ。ビッグレッドファームに繋養された種牡馬が並ぶ、まさに“岡田総帥の結晶”とも言えるマイネルエンペラーだ。オークス馬ユーバーレーベンの全弟でもあり、昨年は日経賞を勝って重賞馬の仲間入りを果たした。
その後は天皇賞(春)でG1初参戦ながら自らレースを引っ張って5着に健闘。しかしその後に左第1指骨剥離骨折が判明し、有馬記念で復帰。ここが復帰後3戦目の舞台だ。
前走のAJCCでは出遅れて先行勢の流れに乗れなかったため、不完全燃焼のレースだった。
今回は出負けしないよう丹内祐次騎手が序盤からある程度促し、いつでも動ける外を回る形に。その分ロスはあったが、それでも粘って5着を確保した内容から、やはり長距離戦の適性は高い。
斤量別定戦でアドマイヤテラと同じ58キロを背負っていたことを思えば、斤量差のなくなる本番での巻き返しも十分に期待できそうだ。
レース総評
今年の阪神大賞典は、少頭数の長距離戦らしく道中の駆け引きと仕掛けどころが大きく結果を左右する一戦となった。淀みなく流れたわけではないが、各馬が早めに動ける態勢を整えながら進んだことで、最後は単なる消耗戦ではなく、長距離適性に加えて加速力と反応の良さも問われる競馬になった印象だ。
その中でアドマイヤテラが見せたのは、菊花賞3着、目黒記念勝利で培ってきたスタミナだけではない。勝負どころでの自在性、進路が開いた瞬間に動ける機動力、そして最後まで脚勢を保つ総合力だった。阪神3000mのコースレコード更新は、単に時計が速かったというだけでなく、この馬が長距離戦線の主役候補へ名乗りを上げた証でもある。
そして鞍上の武豊騎手にとっても、この勝利は大きな意味を持つ。
今年の重賞初制覇であり、阪神大賞典9勝目。さらにデビューから40年連続JRA重賞勝利という記録もつながった。長距離戦で幾度も名勝負を演じてきた名手が、最も得意とする”春の盾”へ有力馬とともに向かう構図は、それだけで大きな見どころになる。
天皇賞(春)は、距離だけでなく、道中の折り合い、仕掛けどころでの対応力、末脚の持続力、そして枠順の運も問われる舞台だ。さらに今年は、同じ友道厩舎からダイヤモンドステークスを制したスティンガーグラスという同世代の存在もいて、春の長距離路線は厩舎内のライバル関係も含めて興味深い。
阪神大賞典を経て、それぞれが課題と収穫を手にした各馬が、次は淀の長い直線でどんな答えを見せるのか。春の盾へ向け、今年もまた楽しみなメンバーが揃ってきた。

写真:INONECO
