クラシックへの登竜門となっているきさらぎ賞は、創設当初は中京競馬場で行われていた。京都競馬場の改修工事のため、2021年のきさらぎ賞は、里帰り開催のような格好で、35年ぶりに中京競馬場で行われることとなった。

例年の出走馬の傾向として、年末の2歳GⅠを連対したような馬は、1週間後に行われる共同通信杯に出走することが多いが、その後のクラシックでの成績は、きさらぎ賞組も決して引けを取っていない。

今年の出走頭数は11頭。4頭が単勝10倍を切り、さらにその内の3頭が人気を分け合う形となったが、その中で1番人気に推されたのは、ランドオブリバティだった。

新馬戦、芙蓉ステークスと連勝して臨んだ、前走のGⅠホープフルステークス。道中、快調に逃げているように見えたレースは、一転。4コーナーを回りきれず逸走してしまい、無念の競走中止となってしまった。ただ、勝負所の手応えはよかったように見え、無事にコーナーを回っていれば、上位争いも可能だったのでは、と思える内容だったため、調教再審査明けだったものの、上位人気に推された。

2番人気に続いたのはヨーホーレイク。
ランドオブリバティと同じディープインパクト産駒のこの馬も、前走、2戦2勝のキャリアでホープフルステークスに出走した。しかし、こちらはゲート内で駐立が悪く出遅れて、上がり最速の末脚で追い込むも3着に惜敗。この中間は、ゲート練習も取り入れながら調整され、重賞初制覇の期待が高まっていた。

一方、3番人気となったのはラーゴム。
前走のGⅢ・ラジオNIKKEI杯京都2歳ステークスでは、ゴール寸前でワンダフルタウンに差されたものの、0秒1差の2着という上々の内容だった。今回のメンバーには、重賞で連対実績のある馬が他にいなかったことから、その点も評価された。

以下、4番人気には、11月の阪神芝1800mの新馬戦を勝利し、キャリア1戦1勝で出走してきたダノンジェネラルが続き、レースはスタートを迎えた。

レース概況

ゲートが開くと、外の4頭がごちゃつき、その影響を受けて挟まれたランドオブリバティが、後方からの競馬を余儀なくされてしまう。

先手を取ったのはタガノカイで、そこからショウナンアレス、ラーゴム、アクセル、ジャンカルド、ダノンジェネラルの6頭が、ほぼ半馬身差の等間隔で続き、1コーナーから2コーナーを回り、向正面へと入った。

その後ろには、8枠の同じ勝負服の2頭、ドゥラモンドとアランデルが併走し、そこから2馬身差でヨーホーレイク。さらに、4馬身離れてランドオブリバティが追走し、最後方にトーセンクライマーという隊列になった。

先頭から最後方まではおよそ15馬身差と、少頭数にしては縦長の隊列となったが、前半1000mの通過は1分1秒2のスロー。3番人気のラーゴムは、このペースによって引っかかり、騎乗する北村友一騎手が終始抑えながらの追走となった。

中盤を過ぎて3コーナーに入ってからは、他のレースと同じように、後方に位置していた馬達もペースを上げ、前との差が段々と詰まり始めた。さらに、4コーナーでは、離れた最後方を追走していたトーセンクライマー以外の10頭が、5~6馬身ほどの一団となり、レースは最後の直線へと入った。

迎えた直線。ラーゴムがタガノカイに並びかけ、坂を登り切るあたりで先頭に立ち、ジリジリと差を広げ始める。それを追ってきたのは、道中、後方に構えていた2頭で、馬場状態が幾分いい大外を通ったヨーホーレイクと、馬場の中央に進路を取ったランドオブリバティだった。

そして、残り100mを切ってからは、優勝争いは完全にラーゴムとヨーホーレイクの2頭に絞られ、最後はラーゴムがクビ差粘りきって1着でゴールイン。2着にヨーホーレイク、そこから3馬身半差の3着に、ランドオブリバティが入った。

良馬場の勝ちタイムは、2分1秒0。デビューからの3戦、いずれも安定した取り口を見せていたラーゴムが、今回は折り合いを欠きながらも重賞初制覇を飾った。

各馬短評

1着 ラーゴム

終始引っかかっていたものの、最後は押し切って重賞初制覇。

ただ、今回の勝利を、折り合いを欠きながらも勝てたので強いとみるか──逆に、もし折り合いが付いていたとして、道中、中団あたりに控えていたら果たして勝っていたのかどうか……と見るか。判断するのは難しいが、折り合いが付いた上で先行して流れに乗り、直線抜け出すというのが、今後戦っていく上で、最良のレース運びになるだろう。

ちなみに、前走も同じ距離で、前半1000mは、今回と同じ1分1秒5とほぼ変わらないペースだったが、折り合いを欠くようなシーンはあまり見られなかった。気性面での変化には注目しておきたい。

2着 ヨーホーレイク

そこそこのスタートから、後方に控える競馬に徹し、今回もメンバー最速の上がりで追い込むも、最後はクビ差届かず2着惜敗。しかし、全く悲観する内容でなかった。

父ディープインパクトに、母の父フレンチデピュティという組み合わせは、広く知られているとおり、ニックスといっても良いほど多数の活躍馬が誕生している組み合わせ。過去に、ショウナンパンドラやマカヒキといったGⅠ馬が出ており、マカヒキ、メイショウテンゲン、カデナ、そしてヨーホーレイクの全兄のカミノタサハラの4頭が、弥生賞を勝っている。

この組み合わせは、ディープインパクト産駒にしては珍しく、瞬発力勝負というよりは、どちらかというと、締まった流れの持久力勝負や、多少時計のかかる馬場に強い傾向がある。

3着 ランドオブリバティ

間違いなく、スタートで挟まれた影響は大きかったが、左回りと右回りの違いがあるにせよ、まずは1周無事に走ってきたことが、陣営にとって一番の収穫だったのではないだろうか。

スローペースを後方から追い込んでおり、改めて、能力の高さを示す内容だった。

レース総評

スローペースを後方から追い込んだヨーホーレイクとランドオブリバティにとっては、収穫のあるレースだったのではないだろうか。また、ラーゴムも、道中はかなり引っかかる面がありながらも押し切っていて、必ずしも、スローの展開に恵まれたとは言い切れない部分がある。

ラーゴムは、今後クラシックを戦っていく上で、自分との戦いにも勝利しなければならない。
ただ、斉藤崇史調教師と北村友一騎手の組み合わせといえば、2020年、クロノジェネシスを牝馬ながら春秋グランプリ制覇へと導いた黄金タッグ。この時期の同馬もまた、レースでは多少いきたがる素振りを見せ、2歳GⅠや春のクラシックでは惜敗が続いたが、秋華賞以降に本格化し、いまや歴史的名牝といってもよい存在となっている。

ところで、今回のラーゴムのように、オルフェーヴル産駒で牡馬クラシックを制した馬といえば、2018年の皐月賞馬エポカドーロを思い出す。ラッキーライラックも含め、この3頭は母系にフォーティナイナーを持っていて、この組み合わせもまた、ニックスといえる相性の良い配合だ。

気性面が課題となるが、エポカドーロが勝った皐月賞と同じように、今年の皐月賞も、道中締まった流れとなり、なおかつ時計のかかる馬場になれば、ラーゴムが上位争いを演じることも十分に可能と見ている。

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