京成杯と共に関東で行われるクラシックへの登竜門・共同通信杯。近年は、より一層、皐月賞との親和性が高いレースである。2012年~2016年には、このレースで連対を果たした10頭のうち、4頭が皐月賞へ直行し、それらすべてが本番を制した。そのため、連対馬が皐月賞へ直行すれば、引き続き本番でも注視する必要がある。

今年の出走馬は12頭で、最終的に単勝オッズ10倍を切ったのは5頭。
その中で、少し抜けた1番人気に推されたのはステラヴェローチェだった。
新馬戦と、GⅢサウジアラビアロイヤルカップを連勝して臨んだ、前走の朝日杯フューチュリティステークス。レコードで勝利したグレナディアガーズに届かず2着という結果だったが、その着差はわずか4分の3馬身と、実に惜しい内容だった。重賞勝ち・GⅠ連対は、どちらも今回のメンバーでは唯一の実績で、多くの支持を集めることとなった。

続く2、3番人気に推されたのは、キャリア1戦1勝のディープインパクト産駒2頭。
2番人気に推されたシャフリヤールは、全兄に、2017年の皐月賞馬アルアインがいる超良血馬。昨年10月。過去に幾多の名馬を輩出してきたことから、「伝説の新馬戦」として名高い菊花賞当日の新馬戦を快勝し、今回はそれ以来、およそ3ヶ月半ぶりのレースとなった。

対して、3番人気に推されたレフトゥバーズは、昨年11月の東京の新馬戦で、驚異的な瞬発力を発揮して圧勝。

土曜日のクイーンカップは除外されたものの、共同通信杯史上初となる牝馬による優勝を目指し、このレースに出走してきた。

4番人気に推されたのは、2戦2勝のエフフォーリア。こちらは、1勝クラスの百日草特別を勝利して以来、およそ3ヶ月半ぶりのレースとなる。その前走は、直線に向いてから前が塞がるロスに見舞われるも、前が開くと一瞬にして突き抜ける強い内容だった。今回の出走馬で2勝している馬は4頭しかおらず、ここまでの実績と内容は上位と言えた。

さらに5番人気に、こちらもキャリア1戦1勝で、父ロードカナロア・母が重賞3勝のディアデラノビアという良血馬のディオスバリエンテが続き、レースはスタートの時を迎えた。

レース概況

ゲートが開くと、最内のディオスバリエンテが、わずかに好スタートを切った。
ディープリッチが交わして先頭に立ち、タイソウが2番手、エフフォーリアが3番手に続き、中枠3頭が先行集団を形成。4番手に下げたディオスバリエンテは、やや引っかかり気味の追走となり、ステラヴェローチェはちょうど中団。キャリア1戦1勝のディープインパクト産駒2頭は、中団よりも後ろにポジションを取った。

最初の600m通過は37秒4とかなりのスローで、先頭から最後方までは、およそ8馬身差の一団。
ここで、ハートオブアシティに先頭が替わったものの、ペースは上がらず。その後の800m通過が49秒6、1000mも1分1秒9で通過し、流れは落ち着いたままだった。

残り800mを切り、わずかにペースが上がったが、外からヴィクティファルスが進出を開始した以外、その他の馬に大きな動きはなく、そのまま4コーナーを回り、直線コースへと向いた。

迎えた直線。逃げるハートオブアシティに、まず襲いかかったのがエフフォーリアだった。残り400mを過ぎた辺りで先頭に立ち、坂の上りでもスピードは衰えることなく、むしろ差を広げ、残り200m地点でその差は2馬身。

追う2番手は横一線となり、ヴィクティファルスとシャフリヤール、そして内から差を詰めるキングストンボーイの勢いが目立つが、その一方で、人気のステラヴェローチェはやや伸びを欠いている。

残り100mを切り、エフフォーリアは後続との差をさらに広げて独走態勢を築き、最後は2馬身半差をつけて1着でゴールイン。2着にヴィクティファルス、3着にアタマ差でシャフリヤールが入り、人気のステラヴェローチェは5着に終わった。

良馬場の勝ちタイムは1分47秒6。早めに抜け出し、坂を上がったところで勝負を決めたエフフォーリアが、クラシックへ向けて大きな弾みをつける勝利を飾った。

各馬短評

1着 エフフォーリア

勝ちタイムだけを見れば、同日の3歳未勝利戦よりも0秒9遅いタイムであり、手放しで評価するのは難しいものの、レース内容そのものは圧倒的だった。

横山武史騎手は、同じ位置からの瞬発力勝負となると、ディープインパクト産駒には及ばないという判断から前目につけたのだと思うが、結果は完勝。昨年、史上最年少で関東リーディングを獲得した実績は、伊達ではない。

2着 ヴィクティファルス

結果的に、3~4コーナーでポジションを押し上げた差で2着争いを制し、こちらも松山騎手の好騎乗が光った。

父がハーツクライで、母系はガリレオからサドラーズウェルズに遡る、ヨーロッパの重厚な血。おそらく、本格化はまだ先で、4歳夏を越えて強くなるのではないだろうか。2戦連続1800mで好走しているため、マイル戦に出走することは考えにくい。
しかし、同じハーツクライ産駒のジャスタウェイやリスグラシューが4歳秋を超えて一気に頂点に立ったのは、おそらく2歳~4歳前半にマイル戦の厳しい流れを経験していたことも要因の一つ。今後、そういったレースに出走して揉まれれば、来春から夏にかけて、一気に古馬中距離戦線のトップに立つポテンシャルは十分に秘めている。

3着 シャフリヤール

賞金を積み重ねられなかったのは痛いが、今回のメンバーで、キャリア1戦1勝ながら3着という結果は、2番人気ではあったものの、大健闘だったと言いたい。

9着に敗れたレフトゥバーズにもいえるが、父ディープインパクトに、母方にエーピーインディ系の組み合わせは、どちらかというと、中山や阪神のような、ゴール前に急坂があるコースで先行したときに強い。

全兄のアルアインが現役時に勝利した皐月賞や大阪杯、そして、同じ血統の組み合わせを持つグランアレグリアが勝った桜花賞は、まさにそのパターンだった。

レース総評

タイム面などを考慮すると、高レベルの一戦だったとは言えないが、勝ち馬に関しては、クラシックの主役へ堂々と名乗り出るような完勝だった。

シンザン記念、日経新春杯、きさらぎ賞と、先週まで行われていた中京の重賞も同様のパターンだったが、ロベルト系やステイゴールド系は、直線の坂で一気に後続を突き放し、早々に勝負を決定づけるのが必勝パターンとなっている。

また、デアリングタクトもそうだが、エピファネイア産駒に関しては、他のロベルト系やステイゴールド系のイメージと異なり、想像以上に瞬発力も兼ね備えている。

エフフォーリアも、このあとは皐月賞に直行のようで、もちろんそこでも好勝負が期待できるが、本当に楽しみなのは、日本ダービーかもしれない。

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