3歳馬によるダートの重賞はJRAに2つ、地方競馬との交流重賞は3つ設定されている。5月の兵庫チャンピオンシップから始まり、7月にはジャパンダートダービーで世代の頂点が決まる。しかし世代の頂点が決まっても優駿の戦いは続き、1か月後には新潟競馬場で「レパードステークス」が行われる。このレパードステークスは所謂「出世レース」として知られている。
過去の優勝馬を見るとトランセンドやホッコータルマエといった日本競馬を席捲させた砂の王者が勝利を収めている。
次世代のダート王者に向けた戦いの中、今回は2014年に開催された「異色」のレパードステークスを振り返る。
2014年の3歳ダート界は、地方大井競馬所属のハッピースプリントに中央馬が挑む構図となっていた。その中でカゼノコがジャパンダートダービーを制し、3歳世代ダート界の頂点を奪取。逆襲を目指すダートの素質馬たちは、思い思いの夏を迎えていた。
激闘のジャパンダートダービーから1か月。曇り空の新潟競馬場で、第6回のレパードステークスが行われた。このレースのメンバーは一足先にタイトルを獲得したカゼノコを追いかけて、ステップアップを目指す各馬が集結していた。
レパードステークスというと時期の都合上、ジャパンダートダービーには出走していない組の馬が集って秋のG1を目指すという趣きが強い。そのため、いわゆるビッグレースを勝利した実績馬などはそへほど出走しない傾向にある。しかし、この2014年は違った。1番人気に支持されたのは、すでにビッグタイトルを獲得し世代ナンバーワンの称号も得たことのある優駿だったのである。
その馬の名前は、アジアエクスプレス。
2013年の朝日杯フューチュリティステークスを制して2歳王者になったG1馬だ。
元々ダートが主戦場の同馬は、2歳時にダートで連勝を上げると、初の芝挑戦だった朝日杯フューチュリティステークスを制覇。その年の最優秀2歳牡馬にも選ばれた。
3歳になって皐月賞に挑戦するも敗戦し、改めて主戦場のダートに帰ることに。しかし、ダート復帰戦のユニコーンステークスは、レッドアルヴィスの前にまさかの惨敗。今回はユニコーンステークスのリベンジも含め、今後のアジアエクスプレスの動向を占う上でも重要な一戦と言えた。対するライバルもユニコーンステークスを勝ったレッドアルヴィスを筆頭に、勢いある砂の若武者たちが揃う。
2歳王者のプライドを賭け、どのような走りが見られるかが注目を集めた。
曇り空で、やや重の馬場となった新潟競馬場。
スタンド前でのゲートインが終わり、レーススタート。15頭揃ったスタートを切った。直線を使っての先行争いはまさに団子状態。5頭6頭が広がった状態で繰り広げられ、その一角にアジアエクスプレスも取り付いた。結果的にはクライスマイルがハナを奪って先行、その番手にノースショアビーチとアジアエクスプレスが控える格好となった。
ユニコーンステークス勝ち馬のレッドアルヴィスも早め4番手、さらに3番人気のアスカノロマンも5番手外並走と人気各馬が先団でレースをする流れに。3コーナー付近から縦長だった馬群が徐々に凝縮していく。クライスマイル、ノースショアビーチ、アジアエクスプレス、アスカノロマンの4頭が横並びになって、いざ直線へ。
逃げて後続の突き放しにかかったクライスマイルだったが、一気に外からアジアエクスプレスが並びかける。
──残り150m付近。
アジアエクスプレスが先頭へと変わった。そこへ粘り腰のクライスマイルが食らいつき、馬場の内を突いてランウェイワルツが2番手争いに食い込むも、アジアエクスプレスには関係なし。堂々と3馬身半の差をつけて快勝のゴールインとなった。芝とダートの両重賞を3歳で制したのである。
わずか7戦のキャリアで、芝とダートの重賞を制覇したアジアエクスプレス。レパードステークス後はダート戦線で奮闘する。勝ちにこそ恵まれなかったものの重賞戦線をにぎわせた。
芝での王道路線からダートに再チャレンジしての重賞制覇。そこには王者のプライドと併せてチャレンジャーの魂を感じられる走りがあった。