[Rewind the race]直千逃走~2013年・アイビスサマーダッシュ~

ローカル開催が主役となる夏競馬。
翌年のクラシックに向けた2歳馬戦や、3歳馬が古馬に挑む条件戦など、特徴的な注目点も多い。
そんな夏競馬の中でも一際注目度の高いレースが、新潟競馬場で行われるアイビスサマーダッシュだ。
日本の中央競馬では唯一として新潟競馬場に設置されている一直線のコース。その直線コース行われるこのレースは、重賞の中で最も短い距離で行われるレースとして親しまれている。
今回はそんなアイビスサマーダッシュの中から、ハクサンムーンが制した2013年のレースを振り返る。

2013年のスプリント路線は、絶対王者・ロードカナロアへの対抗馬を決める戦いがひとつのテーマだった。
その意味では、G1レースに直結するサマーシリーズも決して侮れるものではなく、普段からG1で結果を残してきたような馬も多く出走する。
2013年のアイビスサマーダッシュで主役となったのは、ハクサンムーンであった。
前年の京阪杯で重賞初制覇を果たしたハクサンムーンは、この年の高松宮記念でロードカナロアの3着に粘り波乱を演じた。
秋のスプリンターズステークスでリベンジするためにも、このサマーシリーズではよりパワーアップした姿を見せつけたいところであった。
前走のCBC賞では2着となったものの、パフォーマンスは安定しているため、新潟直線での逃走劇に注目が集まった。
レース当日は天候にも恵まれ、馬場状態は良馬場で行われた。
開幕週の新潟競馬場には多くのファンが詰めかけ、4コーナー奥にあるゲートに注目していた。
ハクサンムーンは1番人気。外枠が有利とされている新潟直線コースの中で、7枠を引けたのも好材料であった。

瞬き厳禁の電撃戦。
18頭が揃い、レースの火ぶたが切られた。
ズラッと広がった馬群からまず飛び出したのは、フォーエバーマーク。先頭に立とうとするところに、ハクサンムーンが外から並ぶ。続いてパドトロワらが前団につけた。
レースはあっという間に残り400m地点。
3番手以降は横一線になっているのを尻目にフォーエバーマークとハクサンムーンは完全に抜け出してトップ争いを繰り広げる。
逃げ馬2頭の競り合い──軍配は、外ラチ沿いを進んだハクサンムーンに挙がった。

最後は、体半分差。
終始余裕を見せながらレースを進めたハクサンムーン。重賞2勝目と共に、地元新潟出身の酒井学騎手にタイトルをプレゼントした。
ハクサンムーンはこの後セントウルステークスでロードカナロアに勝利し、無事リベンジを果たした。
G1の舞台ではロードカナロアに勝利することは叶わなかったが、それでもサマーシリーズチャンピオンの力は伊達ではなかった。
本馬場入場の際に旋回するなど、どこかお茶目なところも見せていたハクサンムーン。間違いなくスプリント路線を盛り上げた名馬の1頭だ。

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