絶対王者に食らいつく、ハナ差のマッチレース。スマートファルコンvsワンダーアキュートが火花を散らした2011年東京大賞典を振り返る。

2011年は、競馬の世界においても、記憶に残る出来事が多かったように思う。

3月のドバイワールドカップでは日本代表のヴィクトワールピサとトランセンドがワンツーを決め、そして秋にはオルフェーヴルが史上7頭目となるクラシック三冠を達成し、日本中に勇気と感動を与えてくれたこの年。

年内最後のG1レースとなる東京大賞典においても、2頭の馬が熱いマッチレースを繰り広げてくれた。

ウマ娘でもお馴染みのダートの名馬、スマートファルコンとワンダーアキュートである。

スマートファルコンは前年の東京大賞典も優勝しており、2011年はディフェンディングチャンピオンとしての出走となっていた。

その2010年の東京大賞典も凄いレースであったことを覚えている方も多いであろう。スマートファルコンが果敢に飛ばしていって、最初の1,000m通過タイムはなんと58秒9。芝のレースでもハイペースに分類される程のスピードでレースが展開されていった。4コーナーを回って直線に入ってもスマートファルコンの手応えは抜群で、バてるどころか後続を寄せ付けずに、2分0秒4という驚異的なレコードタイムでゴール版を駆け抜けていった。

当時のダート2,000mの日本レコードは、ワンダースピードが2001年ペテルギウスステークスで記録した2分1秒0であったが、そのレコードを0.6も更新。大井競馬場に限っては、アジュディミツオーの記録していた2分2秒1というタイムを1秒7も更新する超絶タイムであった。

武豊騎手はスマートファルコンを「砂のサイレンススズカ」と評していたが、そう言ってしまうのも頷ける、説得力のあるパフォーマンスであった。

その後、2011年は連戦連勝の負け知らずだったスマートファルコン。年間を通じての絶対王者として東京大賞典へと駒を進めた彼の単勝オッズは、元返しの1.0倍となっていた。

G1レースでの単勝1.0倍といえば、2005年に無敗のクラシック三冠馬となったディープインパクトの菊花賞を思い出す。その際も、鞍上は武豊騎手だった。つまりはそれほどに、競馬ファンたちはスマートファルコンの勝利(しかも圧勝)を信じてやまなかったのである。

一方のワンダーアキュートは、2010年の東京大賞典に出走していたものの、この時は見せ場なく10着に敗れてしまっていた。

ただし2011年になると中央の重賞戦線で安定した成績を残しつつ、徐々に力もつけていき、当時12月の阪神競馬場で行われていたジャパンカップダートで2着に入線。ドバイワールドカップで2着となったトランセンドには敗れてしまったものの、2009年ジャパンカップダート覇者のエスポワールシチーに先着できるまでの成長を遂げていたのだった。

ただ、それでも多くのファンはスマートファルコンにはまだまだ及ばないと感じていなかったようぇ、2011年の東京大賞典では単勝オッズ10.4倍の3番人気という評価に甘んじていた。

──そして迎えた、2011年の東京大賞典。

スタートが切られると、内から4番のワンダーアキュートが手綱を押して先頭に立とうとするも、そうはさせまいと大外12番枠に入ったスマートファルコンが先頭を奪っていく。

最初の1,000mは、前年ほどではないにしても、それでも59秒5という速い流れでスマートファルコンが軽快に飛ばしていった。ワンダーアキュートはその後ろで虎視眈々とスマートファルコンをマークする形でレースは進んでいく。

最後の直線に入り、さぁここからスマートファルコンが後続を突き放していくぞ──と思いきや、なかなか差を広げることができない。

ワンダーアキュートが和田竜二騎手のムチに応えて必死にスマートファルコンに食らいついていく。

残り200m地点でスマートファルコンまで2馬身、100m地点で1馬身、絶対王者相手にジリジリとその差を詰め、迫っていくワンダーアキュート。

残り50mで半馬身、とうとう追いついて2頭の馬体がピッタリ並んだところでゴールイン。

最後はどちらが勝ったのか肉眼ではまったく分からなかったが、結果はハナ差でスマートファルコンが王者の座を守り切ったのだった。

それにしても、この時のワンダーアキュートの走りには鬼気迫るものがあったように思う。

まさに、前年に兄ワンダースピードが持つレコードを更新されたその借りを、オレが絶対返してやるんだと言わんばかりに。

実際にそんな思いがあったかどうかは知る由もないのだが、そういうドラマを感じさせる競馬はやっぱり面白い。

だからこそ東京大賞典は、1年の締めくくりに各馬がどんなレースを見せてくれるのか、とても楽しみなレースなのである。

はっちい( @fuegum_keiba )

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