[インタビュー]良血馬とクワイトファインの配合が実現。生産牧場の代表が語る、種牡馬クワイトファインを選んだ理由とは。

トウカイテイオー後継種牡馬プロジェクトとして、2019年〜2020年にクラウドファンディングにより種牡馬となったトウカイテイオー産駒、クワイトファイン。
クワイトファインは2022年に、3月22日に母ママテイオーノユメの牝馬、4月11日に母バトルクウの牝馬を送り出し、ファンからの熱い視線を集めている。そんな中、今年、新たに種付けをする牧場が現れた。それはクワイトファインのプロジェクト関係者からの働きかけによるものではなく、外部からの申し込みだったという。
今回はその生産牧場であるトラストスリーファームの代表である岡崎さんに、クワイトファイン種付けへの想いを伺ってきた。

超良血馬とトウカイテイオー後継種牡馬、夢の配合が実現

「今回の種付けにあたって多くの反響があり、嬉しいお言葉をかけていただくこともありました。商売としてやっている限り、趣味趣向で種付けすることはありません。良い結果が出る可能性のある配合だと思っています」

岡崎さんは、今回の配合についてそう振り返る。
今回、クワイトファインの配合相手に選ばれた繁殖牝馬は、ガレットデロワ。父エピファネイア、母父ディープインパクト、母母ブロードアピールという血統馬であり、従兄弟にはダービー馬ワグネリアンもいる。そんな超良血馬が、父トウカイテイオー、母父ミスターシービー、母母父シンザンという血統のクワイトファインと配合されるということに、大きなロマンを感じたファンは多いだろう。

「クワイトファインが候補として浮上したのは、私のアイディアではありません。元々は父がやっていた牧場なんですが、それを引き継いだ際、馬主である西本資史オーナーの協力を得られることになりました。さらに西本オーナーのお知り合いの馬主である篁真一郎さんも加わってくださった。自分も血統論は好きですし勉強もしていたんですが、勉強しても追いつけないほどに詳しいんです。そこで、配合についても相談するようになったんですが、今年のガレットデロワの種付けについて話が出た際に『父トウカイテイオーの種牡馬がいるんだよ』と。それまでクワイトファインのことは知らなかったんですが、聞いた時には"面白いな、興味深いな"と感じました」

「ファンに応援されて種牡馬となった馬がいるんだな、という驚きもありました」

岡崎さんと西本オーナーは同世代の45歳。紹介されてすぐ、意気投合した。気負わずに相談できる仲となり、トラストスリーファームにとって大きい意味を持つ巡り合いとなった。福島宝山グループ株式会社ウエストブックステーブルの設立に至った。
種付けの検討をする際は、血統に詳しい馬主である篁さんからの提案・紹介を中心にしつつ、統計などを見比べつつ「じゃあどれを種付けするか」というのを考えていくスタイル。なかには「こんな馬を種付けしたら売るの大変でしょ」というアイディアが飛び出してくることもある。クワイトファインはそうした様々な案のなかで、ピンとくる1頭だった。

「ファンに応援されて種牡馬となった馬がいるんだな、という驚きもありました。馬に想いを乗せているファンの多さと情熱を感じます。牡馬が産まれることにより、トウカイテイオーやクワイトファインのファンの方々からも応援していただけるのかな、という気持ちもありました。クラウドファンディングが成功している時点で、そのパワーは本物ですから」

クワイトファインを種牡馬にするクラウドファンディングは、目標額6,000,000円に対し、総勢578人から7,883,000円もの額が集まるという、大きな反響があった。その熱量の大きさから、メディアなどでも取り上げられ、血統好きな競馬ファン・トウカイテイオーファン以外にも知られるほどのプロジェクトとなったと言える。

「興味を持ったきっかけは"話題性"でしたが、ガレットデロワはサンデーサイレンスの3×4クロスなどを持つ繁殖で配合も難しいですから、新たにクロスが発生しないクワイトファインの血に魅力を感じました。血統背景を調べても、父エピファネイアの繁殖牝馬との配合は悪くないのではないかな、と。最終決定をする際には、こうしたデータを土台として、あとはフィーリングになります。最後の最後は、巡り合わせですので。今回はこの馬に縁を感じました」

「"オーソドックス"は、みんなやっています。そのままだと勝てないんです」

「父に相談すると『なんだその馬は。どこにいるんだ』と言われました。周囲からも『ある程度、結果が出ている馬の方がいいんじゃないの? 競走馬としての成績も……』という意見があったのも事実です。どうしても商売として疑問符はつきますし、安定した実績を残しているベテラン種牡馬との配合をする方が堅実でオーソドックスな判断かとは思います。ただ、その"オーソドックス"は、みんなやっています。そのままだと勝てないんです」

種付けをするにあたり、コネクションもないのでインターネットで調べて連絡をいれたという岡崎さん。種付けしたいという電話をしたら「何かの繋がりですか」と驚かれた。そこからは、スムーズに種付けまで漕ぎ着けたという。

「種付けの日に見たら、クワイトファインは性格も良くて雰囲気のある馬でした。良い馬だと思います。受胎も確認できましたので、まずは無事に出産を目指します。8月〜9月ごろに状態を確認する予定です。ただ、無事に産まれてからも、ちゃんと育っていくまで何があるかはわかりません。ファンの方々にも、温かな目で見守っていいただけたらと思います。クワイトファインのファンの方々、そしてクラウドファンディングの発起人でもある原田さんの熱意があってこそ、今回の配合に繋がったと思っています。この馬が活躍したら良いドラマになると思いますし、大いに期待したいですね!」

父クワイトファイン×母ガレットデロワというロマン溢れる血を受け継いだ産駒は、無事にいけば2023年春に産まれる予定である。無事を祈りつつ、元気にデビューの日を迎えられることを期待したい。

写真:トラストスリーファーム

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