[今週の注目]「元祖・ベリベリホース」主権防衛へ!ダノンデサイルの天皇賞(秋)

菊花賞が幕を閉じた。ゴーイントゥスカイを勝利に導いた武豊騎手の手綱さばきは、卓越したものだった。一瞬の判断と一完歩ごとの積み重ねが、3000mの頂を切り開いた。一方、春に二冠を制したロブチェンの走りには、歴代の名馬と比べても三冠馬となる資質が十分に感じられた。しかし、三冠という特別な称号を手にするには、当日の馬場、レース展開、位置取り、さらには運まで味方につける必要があるのだろう。どれほど強い馬、優れた騎手であっても、三冠は必然ではなく、奇跡に近い偉業である。三冠馬となることの偉大さと難しさを、改めて認識させられた2026年の菊花賞だった。

今週、GⅠの舞台は府中へ移り、天皇賞(秋)が行われる。今年も好メンバーがそろい、見応えのある一戦となることは間違いない。注目は、昨年の日本ダービー馬で今春二つのGⅠを制したクロワデュノールと、その日本ダービーでは2着だったものの、同年の天皇賞(秋)を制したマスカレードボールの対決である。両馬はこれまで4度対戦し、クロワデュノールが3勝1敗。ただし、昨年のジャパンカップではマスカレードボールが2着に入り、4着のクロワデュノールに先着している。

クロワデュノールが同一年の天皇賞春秋連覇を達成するのか、それともマスカレードボールが天皇賞(秋)連覇を果たすのか。そんな「二強ムード」が漂う中で、私はひっそりと、しかし堂々と、一昨年の日本ダービー馬を応援したいと思っている。

■「元祖・ベリベリホース」は私だ!

2024年の日本ダービーを制したのはダノンデサイルである。その後も着実に実績を重ね、昨年は戸崎圭太騎手とのコンビでドバイシーマクラシックを制覇した。そして何より、ダノンデサイルを超有名馬に押し上げたのが、あの勝利インタビューで戸崎騎手が放った「Very very horse」である。

この一言が競馬界の流行語となり、Tシャツ・キャップ・タオルなど「ベリベリホースグッズ」が大量発生。競馬ファンの間では、戸崎騎手=ベリベリホースという図式が完全に定着してしまった。

その「元祖・ベリベリホース」こそダノンデサイルなのだが、秋華賞でモンローウォークが勝った際のインタビューで、戸崎騎手が最後に「ベリベリユアホース!」と叫んだ瞬間、全国のダノンデサイルファンが「えっ、主権移譲?」とザワついたのは言うまでもない。

このままでは、無敗の女王に「ベリベリホース」の称号が奪われてしまう。ここは元祖として、天皇賞(秋)でビシッと勝利し、戸崎騎手に再び「ベリベリホース!」と叫んでもらわねばならない。

ダノンデサイルは美しい栗毛馬である。日没が早まるこの季節、夕日に最も映える毛色の一つといえる。府中競馬場の1コーナーから夕日を背にウイニングランする姿を見たいと願うファンは、決して私だけではないだろう。

ダノンデサイルは2歳秋にデビューし、2戦目で初勝利を挙げた。3歳初戦の京成杯では、追いすがるアーバンシックを抑えて優勝。皐月賞は出馬表に名を連ねたものの、出走直前に右前肢ハ行を発症し、競走除外となる不運に見舞われた。それでも日本ダービーでは好位につけ、直線で最内から抜け出すと、外から迫るジャスティンミラノの追撃を封じ、91頭目の日本ダービー優勝馬となった。

ダノンデサイルの強さを改めて認識したのは、4歳になってからである。初戦のアメリカジョッキーCCを制覇。日本ダービー馬による同競走の優勝は、1999年のスペシャルウィーク以来26年ぶりだった。続くドバイシーマクラシックではカランダカンの猛追をしのぎ、二つ目のGⅠタイトルを獲得した。

その後、4歳秋のジャパンカップと有馬記念、5歳となってからの大阪杯と宝塚記念まで、4戦連続で3着が続いている。

■ダノンデサイルの「ベリベリホース」復権はなるか?

そして迎える天皇賞(秋)。当面のライバルとなるクロワデュノールには1勝2敗、マスカレードボールには昨秋のジャパンカップで先着を許している。充実期にある4歳馬2頭との対戦は、決して容易ではない。しかし、ダノンデサイルの戦績を振り返ると、活路となり得る一つの条件が浮かび上がる。

それは「左回り」のコースである。ダノンデサイルが制したGⅠはいずれも左回りで行われた。右回りではゴール前で鋭く追い込むものの、直近3走はいずれも差し切れない競馬が続いている。一方、3戦した左回りの府中では、新馬戦は4着だったものの日本ダービー1着、ジャパンC3着の実績がある。勢いのある4歳馬2頭を破る可能性は十分にある。

ダノンデサイルの父はエピファネイア。エピファネイア産駒には、ある時期を境に成績が急落する傾向があるのでは…と囁かれることもある。しかし、ダノンデサイルにはその俗説を覆してほしい。大きな故障なく歩みを進めてきたうえ、5歳春の走りを見る限りダノンデサイルに成長の上積みが少ないと考えるファンはほとんどいないのではないだろうか。

勝負の5歳秋、その初戦となる天皇賞(秋)で、ダノンデサイルと戸崎騎手が4歳馬2頭を従えて先頭でゴールする場面を期待したい。

「ベリベリホース!」

日曜日の府中競馬場のウイナーズサークルで、戸崎騎手がその言葉を高らかに叫ぶ場面を思い描いている。ダノンデサイルが「元祖・ベリベリホース」であることを、競馬ファンに改めて印象づけるためにも、天皇賞馬の称号を手にしてほしい。

もちろんダノンデサイルは、私にとっても大好きな「ベリベリホース」である。

Photo by I.Natsume

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