金沢競馬で行われる様々なレース。
その中で個人的に好きなレースがJRA交流競走だ。
JRA交流競走と言われると白山大賞典のようなオープン馬が中央の騎手と共に乗り込んでくるレースを思い浮かべるかもしれない。しかし、ここで言うJRA交流競走はそのようなハイレベルな競走ではなく、中央からの遠征馬は3歳未勝利や4歳以上1勝クラス。
そんな馬の背には中央の若手や中堅騎手が跨り、勝利を目指して金沢のダートを駆ける。
地元馬でなくとも応援をしてしまう交流競走である。
しかし、このJRA交流競走の遠征馬は地元金沢の騎手が跨る場合が多い。
なので出走馬のほとんどが乗り替わりな上に、乗り替わった金沢の騎手はその馬に実戦を乗るどころか調教でも乗った事のない完全なテン乗り。
こんな状態の馬が集まる競走なので非常に予想が難しく、そこも楽しさの一端となる。
では、そんなJRA交流競走を騎手はどう乗っているのか。また、JRAのレースはどう感じているのか。
昨年度初のリーディングに輝いた26歳、栗原大河騎手に聞いてみた。
ちなみに、栗原騎手は今年4月のJRA交流「加賀手取川賞」をJRAのアシャカブランで制している。
「厩務員さんや自分が装鞍できる時は調教師にどんな馬か、どんな作戦で行くかそう言う話を聞きますね」
騎乗馬の情報は直前までわからない状態。厩務員や調教師から馬の情報を得た上で、
「後は返し馬で大体掴んで。ある程度歩様や気配はそれでわかります。ただゲートは出してみないとわからないけど」
騎乗馬の情報を得て、わずかな返し馬の時間で情報の微調整や感覚を得る。
全部合わせても1時間にも満たないだろう時間の中でそのような事を掴んでJRA交流競走に出走しているのだ。
それで人気馬に騎乗してプレッシャーを感じたり大変だと思わないだろうか。
「乗りやすい馬ばかりでそこまで苦労した事はない」
と栗原騎手は言い切る。
9年目にして多くの騎乗を重ねてきた経験がテン乗りのJRA交流競走で生きていると言えるのだろう。
地方競馬ファンがJRA交流競走を見るもう一つの楽しみの一つが勝負服。
地方競馬の勝負服は騎手の騎手服であり、一方のJRAは馬主の馬主服である。
なのでJRAの馬に騎乗する際は普段と違う勝負服に袖を通してレースに挑むことになる。
ファンはいつもと違うその装いを見てこれは似合っている、これは……と思いながら見ているが、着ている本人達はどうか。
「勝負服が変わるのは新鮮。騎手の中でも似合う似合わないって言い合ってます」
やはり騎手も普段と違う勝負服の違いを楽しんでいるようだ。
ちなみに、栗原騎手は。
「大体似合わないと言われますね。いつも着ているのが見慣れているから」
と、笑う。
地方競馬の騎手と勝負服はまさに一体。普段と違うカラーの勝負服を着こなすのは難しそう。
しかし、あの人だけは例外みたいで。
「吉原さんはどんなの着ても似合う。(加賀手取川賞で着た)シルクの勝負服も似合っていたし」
いつもの勝負服のイメージが強い吉原騎手だが、中央の馬で大レースを制し続けるとその勝負服も似合って見える。
強さによって見え方も変わってくるのだ。
金沢のJRA交流競走で中央の馬に度々乗る栗原騎手だが、中央競馬では中山競馬場での騎乗経験はある。では、中央で乗ってみたい競馬場はというと。
「中央で乗ってみたいのは東京競馬場ですね。直線長いし迫力あるし」
騎手になる前に唯一観客として行った事のある競馬場との事。
乗ってみたいと言う思い入れもあるだろうが、別の側面も。
「左回りが学校の時は得意だったんです。しっくり来るなと思っていました」
そんな根拠もあった。
しかし、金沢は右回りなので今は右回りに慣れてしまい、川崎や船橋の左回りに騎乗すると違和感を覚えるという。
「経験不足だからもっと左回りの競馬場に乗りたい」
昨年度の南関東での期間限定騎乗では未勝利で終わった栗原騎手。
リーディングジョッキーで迎える今年度は南関東で、そして中央の舞台で活躍する姿を見たい。
金沢と言えば吉原、と言う現状だがそこに栗原もいるぞと全国に向かって叫ぶ年に今年はしてほしい。
栗原騎手のインタビュー記事は遊駿+最新号にも掲載中