ゴールデンウィーク開催の大一番、JpnIかしわ記念。
昨年は中央6頭の参戦に対し地方勢はナンヨーオボロヅキ1頭のみという寂しいメンバー構成でしたが、今年は川崎記念を勝ったカジノフォンテン、得意の左回りなら牡馬にも負けない実力を持つサルサディオーネ、羽田杯勝馬ミューチャリーら強豪が参戦しました。
さらに中央からも昨年の勝馬ワイドファラオをはじめ、フェブラリーステークスを勝ってG1馬になったカフェファラオ、2019年のフェブラリーステークス勝馬インティ、南部杯勝馬でマイルが得意なサンライズノヴァ、ホープフルステークス以来のG1を狙うタイムフライヤー、G1馬たちと差のないレースをしてきたソリストサンダーの6頭が参戦。
そうした豪華な顔ぶれがそろった中でも、前走の勢いからカフェファラオが1番人気、地方の大将格であるカジノフォンテンが2番人気に。さらに、鞍上の川田ジョッキーが好調であったことも後押ししたか、タイムフライヤーが3番人気に推されました。
朝から悪天候の船橋競馬場。
レースが近づくにつれ雨風が強まる中、稍重馬場でスタートしました。
レース概況
内枠から抜群のスタートを決めたサルサディオーネがハナに行き、ワークアンドラブも出鞭を入れて2番手、カジノフォンテンはその2頭を見ながら3番手で直線に入ります。
出たなりに前に行けたワイドファラオが4番手、今日は出遅れなかったサンライズノヴァが先行勢を見る位置につけて、ソリストサンダーは中段で追いかける形。
カフェファラオは内外から包まれて前に行けず、タイムフライヤーは行きっぷりがよくなく後方へ。その後ろに出遅れたインティと追い込みにかけるミューチャリーが構えます。さらにインティの隣にドーヴァー、メイショウオオゼキが殿で向こう正面へ。
いつも通り軽快に逃げを打つサルサディオーネ。残り1000mのハロン棒を過ぎたあたりでカジノフォンテンがサルサディオーネをつかまえるべく進出開始、さらにその真後ろでマークしていたサンライズノヴァも同時に上がっていきます。後方にいたソリストサンダーと内にいたカフェファラオも、追いつくべく外からペースアップ。
前にいたサルサディオーネ、ワークアンドラブ、ワイドファラオは苦しくなり、後方からくる馬たちにも鞭が入る中、カジノフォンテンだけは持ったままの手ごたえで最終コーナーへ。
コーナーを抜けたところでいよいよカジノフォンテンが仕掛けてラストスパートに入ります。逃げ先行勢がつぶれる中、中段にいたソリストサンダーが追いかけ、大外から唸る手ごたえでインティも上がってきました。
ゴール番まで残り200m、カジノフォンテンにはまだ2馬身ほどのリードがありましたが、ソリストサンダーが一完歩ずつ追い詰めます。張田ジョッキーの左鞭に応え、追いすがるソリストサンダーを鼻差凌いだところがゴール、2頭の1馬身1/2差で追い込んだインティが3着、ワイドファラオが4着、人気のカフェファラオは5着でした。
各馬短評
1着 カジノフォンテン
川崎記念で逃げ切り待望のG1級競走を初制覇。そして、このレースに向けて使った前哨戦の京成杯グランドマイラーズでも58キロをものともせずこのコースで勝利。
今回は逃げに行きたい馬が多く参戦していたので、どの位置取りでレースをするのかに注目していました。
スタートが上手なサルサディオーネを前に置きながら、自分のペースで仕掛けると他の先行勢の手ごたえが一杯になる中ただ1頭抜け出しての勝利。最後はソリストサンダーに詰められましたが、自らのスタイルで他馬を捻るレースぶりに鳥肌が立ちました。
インタビューの中で、次走は帝王賞に向かいオメガパフュームと再度決戦に挑む方針を表明。
古馬になって力をつけた地方の大将が、さらなる強豪たちに挑みます。
2着 ソリストサンダー
秋の重賞武蔵野ステークスではサンライズノヴァに0.1秒差まで迫り、前走フェブラリーステークスではG1初参戦ながら5番人気に推されました。結果は伴いませんでしたが、得意の小回り1週コースになる今回は見事に2着に善戦しました。
鞍上は10年前、当時の地方総大将フリオーソの背に乗っていた戸崎ジョッキー。2歳時に一度乗って以来のコンビ復活でしたが、中央勢で唯一G1タイトルが無かったこの馬を2着に導いた技術は流石、元南関トップジョッキーです。
得意の1周コースであればこのメンバー相手に戦えることを証明できたので、この秋のJBCクラシックやチャンピオンズカップへの参戦にも期待できるのではないでしょうか。
3着 インティ
武豊ジョッキーとのコンビで逃げて2019年のフェブラリーステークスを勝ったインティ。気難しいところがあり、2019年のかしわ記念で2着に敗れて以降は、勝てない日々が続いています。
前走フェブラリーステークスでは大きく出遅れてしまい、後方からの競馬となりましたが、上り2位の末脚で追い込んで6着と新味を見せました。今回もゲートで横を向いている間に扉が開いてしまい大きく出遅れましたが、前走の経験があったので武豊ジョッキーも焦らずに乗っていたはずです。
向こう正面まで最後方にいながら、最後の直線では大外から先行各馬に追いつく走りっぷりを見ると、気持ちさえ乗れば能力はまだ衰えていないように見えます。
次戦は逃げるか追い込むか、名手の手綱さばきに注目です。
4着 ワイドファラオ
今回はスタートで躓いてしまい、スタートの出が今一つになってしまいました。ワンペースで走るタイプの馬なので、後半の決め手比べでは分が悪く、できる限りセーフティーリードを取らないと勝ちきれないところがあるのでしょう。
逃げたサルサディオーネや早めに仕掛けたサンライズノヴァが止まる中、マイペースで進めて4着と、自分のレースが出来ているだけに、スタートの失敗が悔やまれます。
勝ちきるのは難しい馬ですが、マイペースでしぶとく走れるので、スピード能力だけで決まらない地方のダート競馬は向いていると思います。また、開催後半のタフネス比べであれば、再度芝のレースに挑んでも良いかもしれません。
5着 カフェファラオ
この馬の成績は極端で、勝つか飛ぶかの2択。フェブラリーステークスは得意の府中1600mでのレースで強い勝ち方でしたが、今回は先行馬に前をふさがれ横にはソリストサンダー、後方にはタイムフライヤーがいて身動きが取れずの5着敗戦でした。戸崎ジョッキーが1コーナーの入りでカフェファラオの位置を確認していて、前にカジノフォンテンを見ながらカフェファラオをブロックするという好騎乗に阻まれてしまいました。
広いコースで囲まれずにのびのび走れないと良さが活きない馬なので、地方競馬だとワンターンのマイル戦でスピード決着になりやすい秋の南部杯が狙いどころになりそうです。前走のフェブラリーステークスを高速タイムで勝っているようにスピード能力は高いのですが、加速を邪魔されてしまうと脆さが出る難しい馬でもあります。
距離に関しては中京1900m開催のシリウスステークスを勝利していますから、その時のように外枠からのレースになれば巻き返せるかもしれません。次走以降、枠順にも注目です。
レース総評
地方競馬の大将として挑んだカジノフォンテンが圧巻のレースで勝ち切った今年のかしわ記念。
川崎記念に続いてのG1級競走2勝目となり、実力が本物であることを改めて証明してくれました。レース後のインタビューでも少し触れていましたが、次走は夏のチャンピオン決定戦である帝王賞に進みそうです。
今回のレースで競った相手に加え、大井2000mを最も得意とするオメガパフュームや、ドバイワールドカップで2着に入ったチュウワウィザードなど、更に強い相手が待ち受けていますが、フリオーソ以来となる地方競馬の大将としての走りを応援したいです。
対する中央勢も、ソリストサンダーやインティの追い上げでカジノフォンテンをあと一歩のところまで追い詰めていますので、逆転勝利を目指す各馬の戦術にも注目です。