[牝系図鑑]成長力と持続性能が自慢。伝説のエリザベス女王杯の立役者テイエムプリキュアを輩出したデリケートアイス牝系。

古馬になって才能開花! 持ち前の持続力で大波乱を演出

代表馬
・テイエムプリキュア(05年阪神JF、09年日経新春杯、09年エリザベス女王杯2着)
・トーセンスーリヤ(20年新潟大賞典、21年函館記念)

デリケートアイス

米国で生産されたデリケートアイス。デリケートアイスは現役時ブラックアイドスーザンS(G2・ダート8.5F)を勝利した実績馬だ。その実績を買ってか青森県の扶桑牧場で繁殖牝馬として導入される。直仔からは活躍馬は出せなかったが、アメリカにいたころの子供ユキグニの産駒たちが競走馬として、ないしは繁殖牝馬として活躍する。
ユキグニはその名前とは裏腹に米国産馬。こちらは早田牧場が導入した繁殖牝馬だから、デリケートアイスではなくこちらを牝祖としても良かったのだが、デリケートアイスも日本で繁殖牝馬として過ごした時間があったから、デリケートアイスを牝祖としておこう。

このファミリーに多く見られる特徴は二点。

一点目は持続性能の高さ。
エムアイブランはダート馬ながらこのファミリーでは瞬発力のある馬だったが、それでも一気にピッチを上げるタイプというよりは吹かしながらギアを上げていくタイプだった。テイエムプリキュアやトーセンスーリヤをイメージするのがわかりやすくて、決して速い脚を使うことはできないが止まらないのが持ち味だ。
スピード性能の高さはユキグニの父であるCaroの影響が強いと考えられるが、底力はステートリードンゆずり。
フェリアードの産駒たちも主流とは言えない配合の馬が多いが、持ち前の持続性能の高さを活かして、芝中距離戦線でサンデーサイレンスの後継種牡馬の産駒たちと互角に渡り合えた。

二点目は成長力の高さ。
ヨーロッパの晩成血統を豊富に持つ馬が多いため、古馬になってから本格化する馬が多い。
テイエムプリキュアは2歳時に早々と2歳女王のタイトル、阪神JFを勝利したが、その後3歳シーズンは低迷。
長く活躍できない時期があったが6歳シーズンに再ブレイク。ただの早熟馬ではなかったことを証明して見せた。
トーセンスーリヤに関しても初重賞制覇は5歳シーズン、エムアイブランもこばになってから強くなったタイプだけに、本質的には晩成傾向の強いファミリーなのだ。

米国産ユキグニの躍進

牝系図

①ユキグニ

ユキグニ

デリケートアイス牝系は前述の通り米国で生産されたユキグニを根幹とするファミリーが日本で広がっている。
ユキグニは繁殖牝馬として優秀で直仔からは武蔵野S連覇など重賞4勝、99年フェブラリーS2着のエムアイブラン(父ブライアンズタイム)を輩出。

エムアイブラン

その他にもさらに牝系を伸ばすこととなったフェリアード(父ステートリードン)を輩出し、自身のDNAが優秀であることを示した。

①-1 フェリアード
フェリアード

エムアイブランの存在だけで終わっていればこの連載で取り上げることもなく、ただの優秀な繁殖牝馬として終わっていたデリケートアイス→ユキグニ牝系だが、フェリアードの存在が名牝系としての地位確立に大きな役割を果たした。
フェリアードは競走馬としては芝10Fと12Fで2勝した条件戦レベルの馬だったが、繁殖牝馬としては母ユキグニを凌駕する成績を残す。
まずは何と言ってもテイエムプリキュアの存在だ。テイエムプリキュアはデビューから新馬戦、かえで賞、阪神JFと3連勝で2歳女王となった馬だが、3歳になって以来長く勝てない時期が続いた。
4勝目を挙げたのはなんと6歳時の日経新春杯。いくら2歳女王とはいえ二桁着順も少なくなかった馬がずっと現役を続けていたことにも驚きだが、なによりもそれに応えたプリキュアの成長力には驚かされる。
その後クィーンスプマンテと仲良く二人旅で名牝ブエナビスタに土をつけたエリザベス女王杯は語り草だ。

テイエムプリキュア

プリキュア以外にもテイエムハリアー(父ニューイングランド)が障害重賞3勝、マイネルフィエスタ(シンボリクリスエス)が障害重賞1勝と障害競走でもフェリアードの産駒たちは一流の実績を残した。
つけられている種牡馬やフェリアード自身の血統構成を考えても決して主流血統とは言えない配合の馬ばかりなだけに、この活躍は牝系の優秀さを表していると言えるのではないだろうか。

その後プリキュア、ハリアーの半妹にあたり、マイネルフィエスタの半姉にあたるトーセンガラシャ(父デュランダル)が繁殖牝馬として芝中距離重賞2勝のトーセンスーリヤを輩出。

トーセンスーリヤ

トーセンスーリもまたローエングリン産駒であり、ここにきても決して主流とはいえない血統構成で重賞を2勝もしているのだからこのファミリーは配合次第で更なる活躍が望めるだろう。

現代の種牡馬に持っていないものを持っている一族の今後

テイエムプリキュアは繁殖牝馬としては中央未勝利で活躍馬を輩出できないでいるのが現状だ。
ここまでくるとさすがにサンデーサイレンスを持つ種牡馬がつけられてきているが、それでも主流からは外れた血統構成の馬が多い。
プリキュアも繁殖牝馬としては高齢の部類だが、JRAで勝利できる馬の登場が望まれる。
トーセンスーリヤを輩出したトーセンガラシャが早くに繁殖牝馬を引退してしまっているためここからの枝の発展が望めないことは残念だが、マイネウェリナ(父キングカメハメハ)やテイエムブリランテ(父ディープブリランテ)などがフェリアード直仔の繁殖牝馬として枝を繋いでいることは今後の楽しみだろう。
まだまだフェリアードにキングカメハメハ、ディープブリランテという配合で、まだまだスピード性能を添加すれば変わり身を見せてくれそうな2頭なだけに、今後の配合次第では芝中距離で十分戦えるチャンスがあるだろう。
逆説的に言えばこれだけ主流血統を持たないファミリーだけに現代の芝中距離種牡馬に不足している底力や持続性能、成長力といった要素を兼ね備えている一族であり、上手く種牡馬を選定すれば、種牡馬のアシストができる牝系とも言えるだろう。

写真:かぼす、かず、Horse Memorys

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