[種牡馬・血統紹介]史上最多の『砂の冠』コパノリッキー

2014年、2月23日。
東京競馬場で行われたG1レース・フェブラリーステークスで「最低人気馬のG1勝利」というサプライズが起きた。

JRAの長い競馬史の中でもたった4頭しか成し遂げられなかった快挙を達成したその馬の名は、コパノリッキー。

このレースでの勝利を境にダートチャンピオンとなり、長らくその王座を守り続けるこの馬は、やがて重ね続けた勝利の末に「歴代最多G1/Jpn1レース勝利馬」という、最高の名誉を手にすることとなった。

突如砂上の主役として現れ、中央・地方のTOPレースを最も多く勝利したコパノリッキー。
その現役時代の功績を振り返り、今後の種牡馬としての活躍を予想していきたい。

コパノリッキー
- 2010年 日本産まれ

血統的な背景

父は数多のダートの名馬を輩出したゴールドアリュール。
母コパノニキータはその父のティンバーカントリーからダート適性を受け継いで、決して一流の成績を残した競走馬では無かったが、6歳まで活躍して22戦。JRAのダートレースで3勝を上げた。

コパノリッキーが長年に渡り王座を守り続けたのは、この母から受け継いだタフさが一因と考えられる。

※実際にコパノリッキーの弟妹もかなりのレース数に出走している、丈夫な馬が多くいる。

現役時代

馬主は「Dr.コパ」の愛称でおなじみの小林祥晃氏である。

コパノリッキーは、2歳の12月に阪神ダート1800mの新馬戦でデビュー。
しかしこのレースでは8番人気8着という苦い結果に終わる。
明けて3歳1月の京都ダート1800m未勝利戦に出走し、この時も8番人気という低評価ながら、今度は見事に初勝利を果たす。
この時すでに、2着に0.8秒差を着ける楽勝ぶりで、素質の片鱗を示していた。

次いでコパノリッキーは東京ダート1400m戦500万下で勝利。
このレースでは一番人気の評価で、2着馬には0.9秒という大きな差をつけて勝っている。
ちなみにこのレースの2着馬は、後に何度もG1の舞台で対戦する事になるサウンドトゥルーだった。

コパノリッキーは、続く3歳のOP戦で3着、1着という戦績を上げて、重賞初挑戦となる園田競馬場のダート1870mのG2・兵庫チャンピオンシップでは2着馬に1秒差をつけて勝利。

このレースの勝利後に、芝の3歳戦最高峰のレースである日本ダービーへの出走が検討されたコパノリッキーだったが、前脚の骨折によって休養を余儀なくされてしまう。

そうして彼は、運命の分岐点となるフェブラリーステークスの3ヶ月前──3歳の11月にOP戦の霜月ステークスで復帰を果たすものの、そこでは1番人気ながら10着と大敗してしまう。さらにその1ヶ月後のフェアウェルステークスでも3番人気に推されながら、9着に敗れた。

奇跡を起こす事になる次走フェブラリーステークスから、わずか2ヶ月前の出来事である。

そして、運命のフェブラリーステークスの日。
良く晴れた空の広がる日だった。

このレースの1番人気は前年に3連勝でジャパンカップダートを制していて、この時最も勢いのあったベルシャザール(C.デムーロ騎手)。2番人気で一歳上のダート王ホッコータルマエ(幸騎手)は、この時すでにダートG1(Jpn1)で5勝という圧倒的な実績を誇っていた。

コパノリッキーは骨折からの復帰後のOP戦を2連敗中。
自身はG1初出走で、鞍上の田辺騎手は、当時G1未勝利のジョッキー。

G1レースでは最低人気の評価もやむなしといった状況だった。

ただし、スタート後に芝コースの部分を長く走れる東京競馬場のダート1600mのコース。そこで比較的有利とされる外目の枠13番を引き、管理するのはダートの名門である栗東の村山厩舎。

そして──このレースで、コパノリッキーの素質は、完全に開花した。

3歳の前半の頃に見せていた強さは、コパノリッキーの体内に眠っている素質のほんの一部に過ぎなかった。

大胆なレースぶりを持ち味にする鞍上とともに、G1の大舞台でも臆することなく好位の2番手につけたコパノリッキーは、抜群の手応えで直線を向いて早々に先頭に立つ。
迫ってくるホッコータルマエやベルシャザールをついに寄せ付けることなく、先頭に立ったままゴール板を駆け抜けたのだ。

単勝オッズは272倍。
2着に2番人気の強豪ホッコータルマエ、3着に1番人気のベルシャザールが入線したにもかかわらず、馬連は843倍、3連単は9,491倍という凄まじい配当となった。

ここからコパノリッキーは、およそ4年にわたりダートチャンピオンの座に君臨し続けることとなる。
フェブラリーステークスやかしわ記念、JBCクラシック、マイルCS南部杯という中央・地方の最高峰のダート競走連覇。そして帝王賞を勝利し、残る東京大賞典も引退レースとなった2017年の末に、初めての王座にともに上った田辺騎手を背に勝利した。

一度は3着に入りながらついに勝てなかったチャンピオンズカップのタイトルが、コパノリッキーの唯一の忘れ物だったのかもしれない。

しかし、一つくらい忘れ物をしてくれていたほうが良い、と思う。

それくらい現役時代のコパノリッキーは強すぎたし、産駒に託す夢があった方がファンとしても楽しみが残るというものだ。

種牡馬としてのコパノリッキー

コパノリッキーは、ダートの名種牡馬ゴールドアリュールの後継である。
先に種牡馬入りしているスマートファルコンやエスポワールシチーらよりも先に、G1馬の輩出を目指したいところだろう。そして偉大な競走馬でサイアーであった、父ゴールドアリュールの血を是非つなげてほしい。

種牡馬のコパノリッキーに、大いに期待を寄せたい点がある。

それはコパノリッキー自身の血統が

「ゴールドアリュール×ティンバーカントリー×トニービン×リアルシャダイ」

という、日本競馬で非常に優れた実績を上げてきたサイアーの掛け合わせである点である。

また、上述したように非常にタフな産駒を輩出する母の血を宿していて、5代内アウトブリードで非常に健康的な血統背景を持っている点も期待したい。

コパノリッキーは現役時代大井や盛岡競馬場の2000m戦であるG1(Jpn1)競走を4勝しているが、マイルのフェブラリーステークス・かしわ記念・マイルCS南部杯を連覇していて、7歳時には1200m戦のJBCスプリントでも2着に好走している。

これはコパノリッキーが母方から受け継いだ一流のスタミナに加えて、スプリントやマイルの頂点を争うレースでも非常に優秀なスピードを発揮していたという事で、スマートファルコンやエスポワールシチー以上の距離適性の幅とスピード能力を感じさせる。
種牡馬として必須となる『スピード能力』を有しているのは大きい。
ぜひ産駒にもそれを受け継いでいってもらいたい。

突如手にする事になった王座を守り続けるだけでなく、勝利を重ねて「日本競馬史上もっとも頂点に立った馬」となったコパノリッキー。

その産駒に課された使命は、彼の忘れ物を取りにいくことだけでなく、偉大な彼の功績を塗り替えることにあるのかもしれない。

写真:s.taka

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