[ウマ娘]理想を追い求めるウマ娘! ウマ娘エアグルーヴと、史実馬エアグルーヴ。

「鍛え、育て、そして先導する! 敬愛する母の如く」

女帝──この2文字がトレセン学園で一番似合うウマ娘、エアグルーヴ。
彼女はある理想を追い求めて、日々副会長としての職務と、トレーニングに励んでいます。

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母は数々の偉業を成し遂げたウマ娘で、後進をも育成し、理想を示してくれた存在。その薫陶を受け、自分も母のような存在になりたいと考えているキャラクターです。

エアグルーヴが追い求める理想とは……。
今回はそんなエアグルーヴについて、史実の生い立ち、レースを基に解説させて頂きます。(※馬齢は現在表記といたします)

ジュニア級メイクデビューに出走

1993年4月6日。父トニービン、母ダイナカールの間に産まれました。

父トニービンはアイルランド生まれで、競走馬としては凱旋門賞を制した名馬。父としても、オークスを制したベガとレディパステル、さらに安田記念・マイルチャンピオンシップを制したノースフライトや、ジャングルポケット・ウイニングチケットと2頭のダービー馬をターフに送り出す、超のつく一流種牡馬です。

その一流の父を持つ彼女は、冠名の”エア”と「わくわくさせる」という意味の”グルーヴ”を合わせて「エアグルーヴ」と命名されました。

誕生当時から期待されていた彼女は、産まれた当初から「凄い馬になるから覚えておいてくださいよ」とトレーナーに言わせるほど魅力的な競走馬で、メイクデビューでも堂々の1番人気に支持されました。しかしそのデビュー戦、エアグルーヴは7番手から競馬を進めて残り600mを最速の36.6秒を駆け抜けるも、先行したマイネルランサムに届かず2着に敗れました。

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この敗戦にトレーナーはとても悔しがる.....ということもありませんでした。実はエアグルーヴの担当トレーナーである伊藤雄二調教師が「競馬は苦しくないものだということを教える必要があった」と語っているように、新馬戦ではエアグルーヴのリズムに任せていたのです。これは伊藤調教師が彼女の能力を信じていた、そして「彼女が全力を出すべきところはまだ先」という考えがあったからこそです。

そして彼女は伊藤調教師の期待に応えるように、2戦目の新馬戦(1995年当時は複数回新馬戦に出走できました)で先頭から押し切る見事なレースセンスを見せ2着に0.8秒差の圧勝。女帝としての片鱗を見せつけました。

阪神JFで5着以内

見事に勝ち上がったエアグルーヴは、オープン特別のいちょうステークスにコマを進めます。前走での圧勝劇もあり圧倒的1番人気に支持されましたが、思わぬアクシデントに見舞われます。レースでは前目に付け徐々に上がっていく競馬で、多くのファンがエアグルーヴの勝利を確信していました。そして最後の直線で内ラチ沿いから先頭に立とうとしたその時、ラブシックガイが内にヨレてしまったことで、鞍上の武豊騎手が立ち上がる程の大きな不利を受けます。

スピードも落ちてしまい並の牝馬であればここでレースをやめてしまうのですが、エアグルーヴは違いました。並外れた勝負根性を見せもう一度加速すると、今度は外側からラブシックガイを交わし一気に先頭に。往年の競馬ファンからは伝説のいちょうステークスと呼ばれています。

映像をお見せできないのが残念ですが、もし皆さんの担当ウマ娘が同じことをしたら、開いた口が塞がらないと思います。それほどの勝負根性とレースセンスを彼女は見せつけました。伊藤調教師も「普通はあそこから勝てない。これはただの牝馬じゃない、男馬にも勝てる牝馬だと確信したのは、あの時です」とおっしゃるほどでした。

アニメでエアグルーヴが、ゴール役をしっかりとしていないヒシアマゾンに怒るシーンがあるのですが、普段から「タイマンだー!」といっているヒシアマゾンが逃げてしまう程なので、エアグルーヴの勝負根性はもしかしたら学園で1番なのかもしれませんね。

さて、いちょうステークスでの勝利から約1か月。満を持して初GⅠの阪神3歳牝馬ステークス(現:阪神ジュベナイルフィリーズ)に参戦します。前走の熱い走りもあって1番人気……ではなく、意外にも評価は3番人気。1番人気と2番人気は共に無敗でコマを進めてきたイブキパーシヴとゴールデンカラーズでした。レースで鞍上を務めたキネーン騎手も周りから「イブキパーシヴに気を付けろ」と言われていたようで、レースでも終始イブキパーシヴをマークするレース運びとなりました。

レースは意外にもスローペースに進み、前半1000mが61秒。このスローペースの中しっかりとイブキパーシヴを抑えきったエアグルーヴが抜け出すか……! と思いきや、その前に1頭の馬が粘り強く先頭を走っていました。その名は、ビワハイジ。後にエアグルーヴと共に名牝と呼ばれるようになった競走馬です。ビワハイジは上位人気の3頭が牽制しあっている中楽に先行し、2歳女王の称号を手にしました。

敗因は色々と語られていますが、伊藤調教師は「勝てたのに、勝たせてあげられなかった」と述べています。トレーナーの皆さんもデビュー前から能力を感じ、いざ初めて迎えたGⅠの舞台で、何度か同じ思いをされていたのではないでしょうか。実は伊藤調教師はエアグルーヴが生まれた次の日に牧場に駆け付けるほど彼女に思い入れがあり、勝てる能力があるのに勝たせてあげられなかったという気持ちは勿論ですが、デビュー前から目にかけていた馬だけに非常に悔しかったのだと思います。

その悔しさを、伊藤調教師とエアグルーヴは翌年、クラシックの年にぶつけます。

桜花賞で5着以内

年を越し3歳になったエアグルーヴは桜花賞へのステップレースとしてチューリップ賞を選択し、阪神JFで後塵を拝したビワハイジに0.8秒差を付ける圧勝劇を披露。桜花賞制覇へ視界良好……と思いきや、神様の悪戯なのか、未来の女帝への試練なのか。エアグルーヴは熱発を発症し、桜花賞を回避しています。

エアグルーヴにとっての理想とは何か……。

冒頭で”彼女はある理想を追い求めて”いるキャラクターだと紹介しましたが、彼女にとっての理想とはいったい何なのでしょうか。それには、彼女の母であるダイナカールの存在に触れる必要があります。

ダイナカールもエアグルーヴと同じように、父ノーザンテーストという偉大な父のもとに生まれました。そしてエアグルーヴと同じように多くの関係者から期待され、オークスを制覇し、見事その期待に応えた名牝でした。

ウマ娘の世界でもエアグルーヴにとって母は偉大な存在であり、理想を示してくれました。ウマ娘のエアグルーヴが母に憧れたように、現実の世界でもエアグルーヴ陣営はダイナカールのような名牝になって欲しいと願っていたはずです。

オークスで5着以内

いよいよ迎えたオークス。阪神JFと違い堂々の1番人気。
陣営は勿論ですがファンも親子制覇を期待していました。

エアグルーヴのライバルと目されていたのは、2200mで実績のあるエリモシック、サンスポ牝馬4歳ステークスで2着であったナナヨーストームなど。そして、桜花賞馬ファイトガリバーも出走します。

迎えたレース。ゲートでまたされて少しイライラしつつも、無難なスタートを決めたエアグルーヴ。外目の15番枠ということもあり、外を回る競馬にはなりますが先行策を選びました。3歳の牝馬にとってはただでさえ酷な2400m戦で外を回るというのは大きなハンデにもなりかねませんが、この選択がエアグルーヴに取って吉と出ます。

選択がプラスに働いた理由のひとつが、このレースが超スローペースで進んだということ。スローペースになればなるほど、先行している馬達は脚を残し最後の直線に備えることができます。もし外を回るのを嫌い、後方からのレースになっていれば、最後の直線で末脚を爆発させたとしても、先行勢も脚を溜めているのでそう簡単には追いつくことは出来なかったかもしれません。

また最後の直線、逃げたノースサンデーが内から外、そしてまた内へと斜行し、何頭かの馬が不利を受けました。しかし終始外を回り、最後の直線で馬場の真ん中から追い込んでいたエアグルーヴは不利を受けることなく、一気に馬群を置き去りにします。最後方から驚異の末脚を見せたファイトガリバーの猛追を振り切り、エアグルーヴは見事オークス親子制覇の偉業を成し遂げました。

エアグルーヴが最後の直線で見せた末脚は、まさに母ダイナカールが13年前のオークスで見せた末脚そのものでした。オークス制覇後、休養を挟み秋華賞に挑戦しますが、伊藤調教師が「人間に、ここは負けられないという気持ちが強すぎた」というほど仕上げすぎたことが原因で体調が万全でなく、また有名なパドックでのフラッシュ事件の影響で過度に入れ込み、レースで全力を出し切ることが出来ず10着に。レース後に骨折も判明し長い休養に入りました。

秋華賞こそ残念な結果に終わりましたが、彼女が後に女帝と呼ばれる片鱗を見せた1年だったと言えるでしょう。

札幌記念で1着

アプリでは秋華賞の後に大阪杯、宝塚記念と続くのですが、4歳になったエアグルーヴは復帰戦のマーメイドSを勝利した後、札幌記念に向かっています。大阪杯と宝塚記念は5歳になってからの挑戦になりました。

マーメイドSを勝利したエアグルーヴは、天皇賞(秋)の試金石として札幌記念を選択。合宿中のレースということもあり他のウマ娘ではなかなか出走させることがないレースですが、夏に開催される重賞の中でも、出走馬のレベルが高くなるレースです。

大目標の天皇賞前のレースということもあって、6,7割の仕上げで挑んだこのレース。陣営は皐月賞とマイルCSを制したジェニュイン相手にどこまでの競馬ができるかで、天皇賞(秋)で通用できるかを測っていました。

2頭の対決を観に、札幌競馬場には多くのファンが駆けつけました。
レースではいつも通り中団から進め、他馬を突き放す競馬を披露します。

この勝利で伊藤調教師は「天皇賞(秋)で勝てる」と確信したそうです。

いよいよエアグルーヴが女帝になる時を迎えました。

天皇賞(秋)で1着

1997年10月26日、晴天の東京競馬場。大観衆がエアグルーヴを迎えました。

前年の天皇賞秋の覇者で、単勝オッズ1.5倍の圧倒的支持を受けたバブルガムフェローの2番人気となりますが、「この時初めてピークに持っていけました」と振り返るほど最高な仕上がりでレースを迎えることができました。

スタートを決めたエアグルーヴは6番手の位置からレースを進めました。バブルガムフェローを前に捉えながらレースを進め、3コーナーから徐々に進出し、残り200mで完全にエアグルーヴとバブルガムフェローのマッチレース。競馬史に残る激しい叩き合いを、その持ち前の勝負根性で制したのは、"女帝"エアグルーヴでした。初めての混合GⅠ制覇と共にプリティキャスト以来17年ぶりの牝馬の天皇賞(秋)の制覇となりました。

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このレース、1頭の栗毛の馬が大逃げを披露しました。

直線まで大きくリードを保っていましたが、最後の直線で失速。
そう、サイレンススズカです。サイレンススズカは本格化前で、当時はまだ重賞未勝利でしたが、ここでは目立つ走りを披露。才能の片鱗を見せました。

レース前から騎手に「こりゃ無理だ」と言わせてしまうほど気性の荒い馬で、当時はとてもエアグルーヴに敵う相手だとは思われていなかったようです。

その後のエアグルーヴ

エアグルーヴは本来4歳(シニア級)で引退する予定でしたが、馬主さんや伊藤調教師の要望もあり、もう1年延長することになりました。エアグルーヴは年明け1戦目に大阪杯を選択し、ここを快勝(当時はG2)。




続く鳴尾記念で、は悪天候の影響でぬかるんだ馬場に持ち前のスピードが殺されてしまい2着となりました。

それでも前年の活躍、そして安定感が増した走りをファンは評価し宝塚記念のファン投票では牝馬として史上初めての1位を獲得しました。しかしレース本番では勿論1番人気……ではなく、まさかの3番人気でした。

2番人気は春の天皇賞を含む重賞4連勝中のメジロブライト。

そして1番人気は、昨年の天皇賞(秋)で約5馬身(1秒差)突き放した栗毛の競走馬、サイレンススズカでした。

サイレンススズカは、前年の香港で、運命的な出会いを果たしていました。それは、エアグルーヴの主戦騎手でもある武豊騎手。彼に大逃げの才能を見出されたサイレンススズカは、香港から帰国後その実力をいかんなく発揮しました。レコード2回を含む4連勝を達成。その印象的な走りからもこの大舞台でサイレンススズカが1番人気に支持されました。

レースは大方の予想通りサイレンススズカが楽にハナに立つと、最終コーナーまで先頭を維持。ステイゴールド、そしてエアグルーヴが満を持して追込みにかかるも、その差はなかなか縮まりません。ステイゴールドもエアグルーヴも伸びていましたが、それ以上にサイレンススズカの粘りが驚異的だったのです。エアグルーヴはこのレースで3着に敗れました。

しかしこの敗戦を受けてもなお、エアグルーヴの勝負根性は衰えていませんでした。

2回目の札幌記念では牝馬には重い58キロの斤量を背負いながらも、2着のサイレントハンターに3馬身差をつける圧勝。もう一度女帝としての力を知らしめるために、まずは牝馬限定戦のエリザベス女王杯に挑みます。

札幌記念での圧勝劇もあり、エアグルーヴは1番人気に支持されました。

「久しぶりのGⅠを取りに行こう!」という所に、悲報が舞い込みました。主戦である武豊騎手が騎乗停止という報せです。この影響によって本来の力を発揮できなかったのか、メジロドーベル、そして驚異的な末脚を見せたランフォザドリームに敗れ3着。その後もジャパンカップ、有馬記念に出走しますが、ジャパンカップでは怪鳥エルコンドルパサーに敗れて2着、そして最後の有馬記念ではレース中の落鉄が影響し5着に──。

エアグルーヴはこの有馬記念を最後に、全19戦の競走馬としてのキャリアに幕を閉じました。

最後に

エアグルーヴは引退後、生まれ故郷の北海道で、母として第二の馬生を歩み始めました。多くのファンがエアグルーヴの産駒達に期待しました。それこそエアグルーヴの母ダイナカールのように……です。そして彼女は競走馬としてのセンスと同等──いやそれ以上に、母としての才能を発揮。多くの名馬たちをターフに送り出しました。

エリザベス女王杯を制したアドマイヤグルーヴ、そして香港GⅠのクリーンエリザベス2世カップを制したルーラーシップ。この2頭のほかにも多くの重賞馬を送り出しました。競走馬として才能を見せる馬、母として多くの名馬を送り出す馬は数多くいますが、両立させる馬はそうそういません。ダイナカールから受け継がれたポテンシャルは勿論ですが、彼女の勝負根性あってこそなのかもしれません。

2013年4月23日、エアグルーヴは11番目の産駒であるショパンをこの世に送り出した後、天馬になり旅立っていきました。競走馬としては勿論ですが、母として多くの競走馬をターフに送り出したエアグルーヴは、理想の母であったダイナカールと同じ存在になれたのではないかと、私は思います。

ウマ娘のエアグルーヴは、まだまだ皆さんと一緒に偉大な母に近づけるように毎日トレセン学園での副会長としての職務、そしてウマ娘としてトレーニングに励んでいます。そんなエアグルーヴを伊藤調教師のように優しく見守ってあげてください。そして一生懸命頑張る彼女が少しでも理想の姿になれるよう、支えてあげてください。

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