[JBC盛岡]溢れる岩手競馬愛!ふじポンさんに直撃インタビュー!

2022年、8年ぶりに盛岡競馬場にて開催される地方競馬の祭典JBC。
前回のJBC盛岡では、その応援団長を務め、それ以降も長年に渡って岩手競馬の魅力を発信してきたタレントのふじポンさん。今回は、ふじポンさんに岩手競馬の魅力やJBCに対する思いを伺ってきた。


「岩手競馬の魅力は多岐に渡ります。その中のひとつが、岩手競馬という一つの括りの中で、色々な競馬を楽しめるというところではないかなと思っています」

岩手競馬には盛岡と水沢の2つの競馬場が存在している。ワンターンで1600mのレースを行える地方競馬では広いといえる左回りの盛岡競馬場と小回りでいわゆる「THE 地方競馬」ともいえるような右回りの水沢競馬場。それぞれ真逆の性質を持つ競馬場が岩手県の中に存在しているというのが、大きな魅力だと言える。

また、盛岡競馬場といえば、地方競馬として唯一の芝コースが設置されていることもその魅力の一つだ。アメリカの競馬場を模範として設計された盛岡競馬場は、中央の競馬場とは違ってダートコースの内側に芝コースが設置されており、芝コースがとても小回りなトリッキーなコースになっている。

地方競馬ではもともと中央競馬で芝を得意としていた馬たちが走っていることも少なくないが、そんな馬たちがもう一花咲かせたり、地方生え抜きの馬たちが新しい一面を見せたりと、さまざまな可能性を試すことができる点は馬券を購入するファンにとっても、より競馬を楽しめるポイントだ。

「岩手って1月上旬まで競馬を開催するので、雪も結構降ったりして日本で一番過酷な競馬場だなって思うんですね。関係者の皆さんが一生懸命馬場整備をして、ジョッキーの皆さんも馬たちも少し怖い中で頑張ってくれて、皆さんの努力の上でレースが行われているんです」

そんな岩手競馬で、ふじポンさんが注目する騎手を聞いてみると「みんな大好きなんですけど…」と悩みながら兄弟騎手である山本政聡騎手、山本聡哉騎手の名前を挙げてくれた。兄・政聡騎手の結婚式の司会を務めるなど、コロナ禍以前は家族ぐるみで仲良くしているという2人のことを「水沢と盛岡のように正反対な2人」だと例えてくれた。

「もちろんどちらも考えて競馬をしてるとは思うけど、聡哉くんはどちらかと言うと頭で考える理論的な感じで、政聡くんは勘じゃないけど身体で感じる感覚的な感じがします(笑)」

インタビューでも聡哉騎手はスラスラっと話すが、政聡騎手はマイペースな語り口で、2人一緒にインタビューを受ける際には聡哉騎手が政聡騎手の主張を要約してくれるような光景も見ることができるそうだ。そんな正反対な2人の共通していること、それは「馬の将来を考えて乗っている」ということなのだという。

「その時その時のレースだけじゃなく、『このレースを勝てれば種牡馬として残れるかもしれない』、『繁殖牝馬としてこの先長く繋養してもらえるかもしれない』という気持ちを持って騎乗しているというのを聞いて。それってすごく素敵なことだなって思って応援してます」

他にも村上忍騎手、阿部英俊騎手、関本淳騎手らの名前を挙げて、「全員の名前を挙げて、全員の特徴を言いたいくらい」ともったいなさそうにほほ笑むふじポンさん。

また、岩手唯一の女性騎手である関本玲花騎手についても少しだけ語ってくれた。

小さかった頃に現在は水沢の調教師である父・浩司さんに連れられ飲み会に来て、みんなにいたずらして回っていたという。ふじポンさんは、そんな彼女について「まさか騎手になるなんて…」と感慨深そうにしつつ、かつて岩手競馬に所属していた皆川麻由美元騎手や鈴木麻優元騎手のような“元気いっぱい”だった先輩たちと比較すると、“クールビューティー”で静かなる闘志のようなものを感じるという。さらに、玲花騎手の積極的なレースぶりやその勝負強さに、大きな舞台でもっと花開く姿を期待しているという。

騎手のお話を聞けたところで、続けて馬に話を向けて「ふじポンさんにとって岩手競馬といえばこの馬という馬を一頭だけ挙げるとしたら?」と、そんなことを問いかけてみた。

「それもうずっと決まってて、マツリダワルツって言う馬が大好きで……」

マツリダワルツは、2006〜09年にかけて岩手競馬で活躍した栗毛の牝馬だ。ふじポンさんは続ける。

「3歳の時だったと思うんですけど、毛布みたいにモフモフな状態でパドックを歩いていたのにその後のレースで勝ってて『なにこの馬!?』って、それから気になっちゃって」

一般的に毛が長くなってモフモフになる冬毛は見た目は可愛いが、馬自身が冬の準備をしている状態とされており、競走馬のコンディションとして決して“良い状態”とは言えない。しかし、そんな状態でも勝ち切ったマツリダワルツに興味が湧いて、取材などをさせてもらう中で、暴れん坊なところや集中する時の集中力の高さなどに「上手く説明できないけど自分もすごく通じる部分」を感じ、それ以来ずっと追いかけるようになったという。マツリダワルツは3歳秋にダービーグランプリにも出走。この年、流行した馬インフルエンザの影響で岩手所属馬限定として開催される中、2番人気に支持されて4着に入る。

「当時、ダービーグランプリはまだ中央との交流戦で、だいたい中央の馬が勝っていくようなレースでした。ただこの年は中央の馬が来られなくなったので、ある意味で大チャンスで『勝っちゃうかも…!』って思ってたんですけど負けちゃって、雨の中、切ない気持ちで帰ったっていう思い出もあるんですよ。とにかく何着でも良くて、ずっとずっと応援していました」

そんな思い出の馬マツリダワルツの子どもであるロードクエストが中央で新馬勝ちしたり、重賞を勝つような馬になったことはとても嬉しかったという。中央競馬で重賞3勝を含む41戦を走ったロードクエストは現在、大井競馬所属として現役を続けており、つい先日も芝のレースを求めて盛岡競馬場に遠征して来た。大好きだった馬の子どもが再び盛岡の舞台で走ってくれることには特別な感情が湧く。

「私は競馬を始めたのは2004年で、正直に言えば岩手競馬が潰れそうみたいな時期だった。パドックに行っても、おじちゃん達が『あの時は良かったよな』みたいな話ばかりしていたのが悔しくて、昔のことばかり話していないで、これからもまた頑張ろうよって思っていました」

そんな困難な時代を乗り越えて、科学技術の向上や情勢の変化もあって新しい時代を迎えた岩手競馬。今では第1レースからパドック解説があって、日本全国どこにいても岩手競馬の馬券を買うことができるようになった他、2018年からはナイターに対応できる設備も搭載され、薄暮開催も可能になったことで、馬券を楽しむファンとしては以前よりも楽しめる環境が整った。その一方で競馬が近年、娯楽・レジャーとして注目を受ける機会も増えていることもあって、若い世代や子ども連れも楽しめるような環境も整いつつある。奥の方には公園もあって、パドック近くの芝生のゾーンではシートを敷いてピクニック気分も味わえる。

「盛岡競馬ってパドックから馬場に出る時もすごい近くで見られるんですね。馬をびっくりさせるといけないから大きな声を出したりオーバーアクションはできないけど、子どもたちがそこに立って『がんばれ〜!』って声援を送っていたりする。そういうのを考えると応援しやすい競馬場だなって思います」

特にパドックとコースとスタンドがそれぞれ近い距離にまとまっている盛岡競馬場では、パドックで馬をじっくり見て、返し馬を見ても、しっかり馬券を買うことができる。スタンドからは岩手山を望み、そこに沈む夕陽の中に馬がいるという光景はとても幻想的だ。今はナイター競馬に合わせてライトアップなども行われ、いわゆる“映える”写真を撮影するのにももってこいのフォトジェニックスポットともいえる。それに加えて、盛岡競馬場名物のジャンボ焼き鳥などのグルメが食欲をそそり、マイルCS南部杯やJBCにあたっては地元の美味しいものを集めたキッチンカーの出店もあって競馬場に来たファンにもう一つの楽しみをもたらしてくれる。生で馬を見ながら、地元の美味しいものを食べるというのが最高なのだ。ちなみに、ふじポンさんのオススメはジャンボ焼き鳥のタバスコ味だそうだ。

「岩手って馬産地でもあるし、馬文化もたくさんあるから、もしかしたらウマ娘とかみなさんが応援してる馬たちの中にも、血統を辿ってみたら岩手に深い関係がある馬がいるかもしれないから、調べてみるのも面白いかもしれない」

確かに岩手は昔からの馬産地で、小岩井農場が明治時代から多くの繁殖牝馬を輸入して日本競馬の土台を作ったともいえる。さらに時代を遡れば、日本在来の南部馬の産地としても知られ、馬に関連した観光地もたくさんある。

「私も以前、お友達を馬巡りツアーに連れて行ったことがあるんです。旧盛岡競馬場が公園になってたり、馬っこパーク・いわてのような場所もあって馬文化に触れられるような場所って盛岡近辺に結構あるんです。チャグチャグ馬コも時期さえ合えば見られますしね。つなぎ温泉っていう温泉もあるので宿泊したり、宿泊が無理なら日帰り温泉でも、足湯だけでも楽しめると思います」

余談だが、つなぎ温泉の近くには「つなぎ石」というそこに馬を繋いだという逸話がある岩が残っていて、それが由来になってつなぎ温泉というそうだ。ふじポンさんの言う通り、せっかく岩手に来たのであれば、県内に散りばめられた馬文化をなぞって散策してみるというのも、競馬ファンとしての楽しみ方の一つなのかもしれない。インタビューの最後に、8年ぶりに盛岡に帰ってきたJBCについての思いと期待を聞いてみた。

「前回のJBC盛岡は応援団長をさせていただいて、PRのために全国を回らせていただいたんですが、どこの競馬場に行っても皆さんが温かい言葉をかけてくれたんです。当日は夢みたいな時間があっという間に終わってしまって、感動の嵐みたいな感じでした」

そう当時のことを振り返るふじポンさん。“地方競馬の祭典”と称されるJBCが三度、盛岡競馬で開催されることへの思いを噛み締め、岩手の人たちはたくさんの人たちが岩手にやってくるのを歓迎して、ファンの人たちはぜひとも盛岡の競馬を楽しみに競馬場に来てほしいという。

「岩手競馬は大変なこともあったけど、誰かのためというのではなく、見ている人みんなが『楽しかったな』って心の底から思える1日に、来た人みんなが幸せになるJBCになれば良いなと思います」

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