レディバグ号と「ミラキュラス レディバグ&シャノワール」の不思議な関係 盛岡編

3連休の最終日、10月9日盛岡競馬場最終レースは第36回マイルチャンピオンシップ南部杯。秋の日はつるべ落とし。発走時刻18時15分、競馬場の空は黒く、薄暮というよりナイターに近い。日中の太陽に照らされて輝くサラブレッドはアスリートらしい健康的な眩さに満ちているが、闇夜のなか、カクテル光線が映し出す馬体はどこか神秘的で、観る側が魔法にかけられたかのように幻想的に感じる。

ベストマイラー決定戦に挑むレディバグ号

ダートのベストマイラー決定戦は牡馬12頭に対し、牝馬はたった2頭しか出走しない。2年連続出走する地元のゴールデンヒーラーとJRAのレディバグ。アニメ『ミラキュラス レディバグ&シャノワール』のヒロインが変身した姿のスーパーヒーロー、レディバグと同名だったことでコラボレーションが実現し、7月スパーキングレディーカップを勝ち、SNS上で話題になった。

8月末の佐賀の交流重賞サマーチャンピオン出走前には、東映アニメーションがレディバグ号とコラボしたクオカードをプレゼントするキャンペーンを実施し、当サイトでも取材を行い、レディバグ号と「ミラキュラス レディバグ&シャノワール」の不思議な関係という記事を掲載した。

レディバグ号はサマーチャンピオン3着からGⅠ南部杯へ向かった。勝負服と同じデザインのメンコに白いシャドーロール、カクテル光線を浴びた青鹿毛の馬体は複雑に輝く宝石のように映えた。相手はJRAのGⅠフェブラリーSを勝ったレモンポップ、カフェファラオ、皐月賞馬ジオグリフに兵庫を、いや地方競馬を代表するイグナイターとベストマイラー決定戦にふさわしい錚々たる顔ぶれが並ぶ。3カ月前に牝馬限定の交流重賞をはじめて勝ったレディバグ号が気おくれしてもおかしくない、それほどの強じんな牡馬たちと同じレースを走ることになった。ダート界は芝ほど性別の住み分けが進んでいない。JRAも上級クラスになると、牝馬限定戦はほぼ組まれず、ダートの頂上を目指すには、とにかく牡馬と互角に渡り合い、賞金を加算していくよりほかに道はない。地方交流の牝馬限定重賞だけではなく、ときには南部杯のような大レースにもチャレンジしていく。レディバグ号はダート界を生き抜く牝馬としての逞しさを経験によって積む道を選んだのだ。

闘志に火がついた、最後の攻防

レモンポップがスタート直後のダッシュ力の違いで先頭に立つと、すぐ近くにいたレディバグ号は2、3頭後ろのポジションをとった。外から進出するイグナイターやカフェファラオ、ジオグリフの内に入る形になり、プレッシャーを受けたレディバグ号は3、4コーナーでついていけなくなりそうになり、鞍上のステッキも入った。正直、手応えとしてはよくなかった。さすがに牡馬相手のGⅠ、それも速い時計が出やすい盛岡で、レモンポップが演出する流れとあっては厳しいか。そんな思いを抱いた。

前を行くレモンポップはイグナイターらの追撃を颯爽と振り払い、直線に入って早々に独走態勢に入っていく。あの圧倒的な走りから2秒近く遅れた地点で、レディバグ号は懸命に挽回しようとしていた。直線に入り、馬群がばらけ、少し外に導かれ、牡馬たちのプレッシャーが和らぐと、レディバグ号は再び闘志に火がついたかのように走りが変わった。イグナイターに並びかけようと歯を食いしばる姿に、もはや性別は関係なかった。後ろからは、その昔、名前だけで牝馬と勘違いしたことがあるタガノビューティーが追撃してくる。前を行くイグナイター、後ろからくるタガノビューティー、どちらも500キロ超の雄大な馬体の持ち主ではあるが、もはやそれも関係ない。盛岡の直線を必死で駆けるレディバグ号がイグナイターをとらえんとしたとき、ゴール板がやってきた。結果は半馬身差の3着。レモンポップには大きな差をつけられるも、イグナイターまではあと一歩だった。

大一番で圧倒的な強さを見せつけたレモンポップも、2着を最後まで譲らなかったイグナイターも素晴らしかった。そして、レディバグ号も大健闘といっていい。確実にダート界での存在感を示した結果だ。今年もマイルチャンピオンシップ南部杯はGⅠにふさわしい内容の濃い競馬になった。その一角をレディバグ号が担ったことは、いずれ歴史として語りつがれると信じている。

このマイルチャンピオンシップ南部杯に合わせるように、レディバグとレディバグ号の新たなコラボ商品ミニ色紙が発売された。以前、取材で東映アニメーションの担当者が語ったように、アニメのグッズというより、レディバグ号のことを多くの方に知ってほしいというコンセプト通り、一人と一頭が眩しい眼差しをこちらに向けるデザインは、力強く、それぞれが自分の信じる世界を生きるエネルギーに満ちている。アニメも競馬もみんなに愛される存在として、そして、どうしても生きているうちにできてしまう無力さという隙間を埋める存在として、いつまでも輝いていてほしい。

写真:青狸、東映AG

あなたにおすすめの記事