[重賞回顧]現役屈指の阪神巧者が、6つ目の重賞タイトルを獲得~2021年・スワンS~

関西で行なわれるマイルチャンピオンシップの前哨戦、スワンS。
京都競馬場の改修工事の影響で、今年は27年ぶりに阪神競馬場での開催となった。

出走頭数は、フルゲートの18頭。別定戦ながらハンデ戦のように人気は割れ、単勝オッズ10倍を切ったのは5頭。その中で1番人気に推されたのは、5歳牝馬のダノンファンタジーだった。

阪神ジュベナイルフィリーズを勝つなど、マイル以上の距離でも実績はあるが、この1400mも3戦2勝で、その2勝はいずれも重賞。今回は、ヴィクトリアマイル以来5ヶ月半ぶりのレースとなるが、実績上位の存在で、阪神競馬場は重賞を4勝している得意コース。多くの支持を集めていた。

2番人気に続いたのは、3歳牡馬のルークズネスト。重賞勝利はファルコンSのみだが、常に安定した走りが魅力で、1600m以下は6戦2勝2着3回と好成績。モーリスの産駒は、他にもピクシーナイトなど、父が現役時に重賞勝ちのなかった1400m以下でも結果を残しており、ダノンファンタジー以外のGI馬よりも高い支持を集めていた。

3番人気に推されたのは、こちらも3歳馬のホウオウアマゾン。GI以外では5戦3勝2着2回と崩れておらず、そのうち4戦が阪神競馬場での実績。1400mと内回りコースは初めてとなるものの、脚質からも距離短縮はむしろ歓迎とされ、注目を集めていた。

4番人気に続いたのはクリノガウディー。昨年の高松宮記念で1位入線となったものの、進路妨害で降着。その後はスランプに陥ったが、今年5月にオープンを連勝し、ついに復活を果たした。秋は、休み明けのセントウルSで3着とし、スプリンターズSは8着。ただ、勝ち馬からは0秒9差と好走の範囲内で、念願の重賞初制覇を目指していた。

そして、5番人気となったのがサウンドキアラ。昨年の京都金杯から重賞を3連勝し、ヴィクトリアマイルでもアーモンドアイの2着と好走した実績の持ち主。こちらも、その後はややスランプに陥ったものの、阪神Cの4着や高松宮記念で6着と、短距離戦ではまずまずの成績。復活と、久々の重賞勝利が期待されていた。

レース概況

ゲートが開くと、5頭ほどがやや立ち後れ。中でも、アイラブテーラーとルークズネストが出遅れ気味のスタートとなった。前は、セイウンコウセイが逃げようとしたところに3頭ほどが並びかけ、最終的にホウオウアマゾンが先頭。2番手にマイスタイルとビッグクインバイオがつけ、最終的にセイウンコウセイは4番手からのレースとなった。

上位人気馬では、ダノンファンタジーとサウンドキアラが中団。その1馬身後ろにルークズネストがつけ、さらにその1馬身後ろを、岩田康誠騎手が懸命に抑えながらクリノガウディーが追走した。

前半の600mは、34秒1の平均ペース。先頭から最後方まではおよそ10馬身で、頭数を考えればほぼ一団。ただ、これにより、後方から巻き返しを図ったルークズネストは、道中で他馬と接触するようなシーンが2度ほどあった。

その後、3~4コーナー中間でさらに馬群は固まり、前はホウオウアマゾンとマイスタイルが並んだまま、レースは最後の直線勝負を迎えた。

直線に入るとホウオウアマゾンがリードを1馬身半に広げ、坂下で、マイスタイルが再び並びかけようと迫ってきた。その後ろは、ダノンファンタジーが3番手に上がり、さらにその外からはステルヴィオも迫ってきた。

その後、坂を上ったところで、今度はダノンファンタジーが先頭に立ち、後続との差を広げにかかる。後続では、進路を探しつつ内から伸びてきたサウンドキアラが、ゴール寸前でホウオウアマゾンをかわし2番手に上がるも先頭までは届かず。

結局、4分の3馬身差で押し切ったダノンファンタジーが1着でゴールイン。2着にサウンドキアラ、さらに半馬身差の3着に、ホウオウアマゾンが入った。

良馬場の勝ちタイムは1分20秒7。小差だったものの横綱相撲といえる内容で、ダノンファンタジーが6つ目の重賞タイトルを手にした。

各馬短評

1着 ダノンファンタジー

前走こそヴィクトリアマイルに出走したものの、その前の3走はすべて1400m以下のレースで、今回の結果を見てもやはり短距離のほうが良さそう。レース後のインタビューで、川田騎手は「ここを目標にして勝てたことが良かった」とコメントしており、今後の動向が注目される。

この後、阪神Cに直行すれば引き続き有力候補となるが、マイルチャンピオンシップからの出走だと厳しいローテーションとなるので注意が必要。また、今日は出遅れなかったものの、ゲート内の駐立がさほど良くない馬。レース前の精神状態も、しっかりと見極める必要がある。

2着 サウンドキアラ

近3走、すべてダノンファンタジーと同じレースに出走しており、こちらも短距離にシフトしつつある。この馬も、昨年4着に好走した阪神Cへ直行すれば、引き続き有力候補となるのではないだろうか。

近走は2桁着順も多いが、昨年のヴィクトリアマイルまでは、ほぼ大崩れがなかった馬。ここまで24戦も走り続け、まもなく7歳。本当に頭が下がる思いだが、なんとかもう一花咲かせて欲しい。

3着 ホウオウアマゾン

半年の休み明けでプラス22kg。パドックではやや太く映ったものの、逃げ粘って3着に好走した。前走がマイナス10kgだったものの、成績欄をよく見ると、2走前に勝利したアーリントンCからは12kg増。成長していただけなのかもしれない。

こちらはまだ3歳馬。マイルでも1400mでも、引き続き活躍が期待できる。

レース総評

前半の600mが34秒1。11秒5のラップを挟んで、後半600mは35秒1と、内回りコースの短距離戦らしい前傾ラップだった。

過去5年のスワンSは、牝馬が18頭出走して3着1回のみと苦戦していたものの、阪神競馬場に開催が変わると、早速傾向も変わり、ディープインパクト産駒の牝馬がワンツーだった。また、結果論にはなるものの、阪神競馬場のGⅡ以上の重賞で勝利実績がある2頭のワンツーでもあった。

内回りの1400mというコースゆえ、正直なところ、本番に繋がる前哨戦とはあまり思えないが、果たしてどうなるだろうか。来年もスワンS、マイルチャンピオンシップともに、阪神競馬場で行われるため、今年のマイルチャンピオンシップに出走するスワンS組の結果には注目したい。

勝ったダノンファンタジーは、これが重賞6勝目。阪神競馬場の重賞は5勝目で、ゴールドシップの6勝に次ぐ2位の記録となる。間もなく6歳を迎えるが、ここまできたらゴールドシップに並んでほしいが、果たして次走はどのレースに出走するだろうか。

そして最後に、2番人気で4着に敗れたルークズネストについて。

相変わらずパドックでよく見せていたが、今回に関してはスタートがすべてだった。道中も他馬と接触し、3コーナーでは一度下げざるを得ない不利。幸騎手も、レース後「3コーナーでポジションを下げた分の差」と振り返っていた。次走、阪神Cに出走してきた際は、十分見直す余地がある。

写真:俺ん家゛

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